くろいひとさんの映画レビュー・感想・評価 - 24ページ目

くろいひと

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ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)

3.6

2Dでの鑑賞だが、それでも映像とサウンドによる不思議な臨場感は格別。
ストーリー的にはあまりにシンプルだが、それでも見せる濃密な演出。

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

3.9

死んだ者と生きている者が、自然におなじ空間と時間によりそっている映画。
きわめて東洋的なそのありかたは、わたしたちもどことなく馴染みがあるもの。

暗闇で赤く光る目はご愛嬌。
ラストシーンに「あれっ」
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裏切りのサーカス(2011年製作の映画)

3.7

登場人物、プロット、演出がいずれもひじょうに複雑にからみあっているので、最初はなかなかそれらが把握できない。
すべてを見終わってつながったとき、ああっというカタルシスがあるのだが、やはり二度見なければ
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グランドフィナーレ(2015年製作の映画)

3.9


人生終わりのときを迎えた老人たちが、超高級老人ホームでおくる日々。

美しい映像のなかで、名優マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテルらの素晴らしい演技が堪能できる。
しかし、これは「よき最期のときを
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

4.0

頭から白いシーツをかぶっただけという、シンプルで古典的な姿をした地縛霊を主人公にしたものがたり。

わたしたちの記憶は過去→現在→未来という流れを持っているが、ゴーストには実体がないため、彼らにおいて
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アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)

3.6

なんどもリメイクされ、また類似作を生んだ『スター誕生』の現代版。

ものがたりとしても演出上の工夫としてもとくに新しさはないが、なんといってもこの作品の魅力は音楽のちからにある。
レディー・ガガの圧倒
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ハムレット(1990年製作の映画)

3.2

ゼフィレッリらしい、古典的でシンプルな作品。
逆にいえば、さしたる工夫もなく、シェイクスピアのセリフそのものに語らせるというスタイルのように思われた。

ラストのハムレットの死のシーンは、さすが舞台装
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2001年宇宙の旅 新世紀特別版(1968年製作の映画)

4.3

リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』の序奏とともに、観たことはなくてもその存在は知られている、映画の代名詞のような古典的名作。

争う猿たち、突如としてあらわれるモノリス、木星へ
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時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.2

いまなおその熱量を失わない、キューブリックの代表作。

つきぬけた暴力、あからさまな性的描写などは、まるでそれがコンテンポラリーダンスを見ているかのような錯覚をおこさせる。
徹底して内面の剥がれ落ちた
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博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

3.6

ブラックコメディという体裁で、どこにでも起きうる狂気をえがく。

米ソ冷戦という、いつ世界規模の核戦争が起きても不思議ではない時代背景があればこそ、こうしたカリカチュアが成立するわけだが、いまとなって
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ロリータ(1962年製作の映画)

3.5

『ロリータ』というタイトルのわりには、現代から見るとしごく普通の恋にやぶれた男のものがたり。

それでもなお作品として面白いのは、年齢の差という社会的な規範の壁がなければ彼女は愛してくれるはず、いつか
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.0

「そうであったかもしれないもうひとりのわたし」にひとが出会うものがたり。

それは亮平と麦のふたりはもちろんだが、「亮平を選んだ朝子」と「麦を選んだ朝子」との重なりあいをえがいたものとも言える。

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ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.3

濱口竜介監督の最長にして最高傑作。

職業俳優ではない出演者たちのつくりだす濃密で圧倒的なリアリティ。
この映画のテーマは「関係性」であり、序盤に出てくる「重心のワークショップ」はそれをわかりやすく明
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不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

3.9

水に流すという言葉があるように、わたしたちの文化のなかで流れる川はすべてを洗い流してくれるものだ。
しかし、その川の底にはたまり続けているものがあり、それはなにかの拍子に浮かび上がってくる不気味なもの
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親密さ(2012年製作の映画)

3.5

戦争にまきこまれたと現代日本いうパラレルワールドが舞台。
劇団の演出家と役者たちのドラマである第一部と、彼らが上演する演劇そのものである第二部との入れ子構造。

第一部ラストちかくの長回しでの主役ふた
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なみのこえ 新地町(2013年製作の映画)

3.0

東北ドキュメンタリー三部作のうちのひとつ。

『なみのおと』のラストシーンにあった枯れた松の木とおなじ場所の、しかしおなじではない風景からはじまる。

ふたりの価値観も年齢も違う漁師のやり取りは、被災
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なみのこえ 気仙沼(2013年製作の映画)

3.0

東北ドキュメンタリー三部作のひとつ。

「あのときの話はしたくない」という社長夫妻の会話が耳に残る。
「ハンドルを切ってあのとき右に曲がっていたら……」
みずからの過去の選択肢へ戻るそのリアリティある
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なみのおと(2011年製作の映画)

3.1

いくつものインタビューを構成したドキュメンタリー。
東日本大震災を生き残った人々のナマの声が語りだす「あの日」のリアリティ。

カメラの前で、役者ではない人々のなかにあるものを、どう自然に引き出すかと
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

2.9

コメディタッチの部分もあるが、全体的にはさらりとした一時間に満たない小品。

河井青葉の魅力がよく引き出されている。
初期の濱口作品の常連である岡部尚の不思議な存在感。

THE DEPTHS(2010年製作の映画)

3.5

カメラマンと、彼に見出された男娼のものがたり。

カメラに「写す」ということがなにを意味するか。「写される」ということがなにを意味するか。
それは「欲望」と「所有」の問題とつながるとともに、
とうぜん
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PASSION(2008年製作の映画)

3.8

芸大大学院修了作品の本作には、すでにのちの濱口監督の特徴のおおくが出揃っている。
きわめてバランスよくまとめられた名作。
一室で行われる「本音を言い当てあうゲーム」は、演技論そのものに置き換えることも
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何食わぬ顔(2003年製作の映画)

2.8

映画内映画であるショートヴァージョンと、その映画をつくる若者たちをえがいたメタ構造のロングヴァージョンとが存在する。

外枠も内枠も、ともにもどかしいばかりの濃密な空気に満ちているのが素晴らしく、濱口
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万引き家族(2018年製作の映画)

4.2

社会問題にダイレクトに切り込んだ傑作。

しかしそのテーマは貧困や格差という問題ではない。
「家族をつくるのは血のつながりなのか」という、少子化・人口減社会をむかえたわたしちが逃れることのできない、是
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そして父になる(2013年製作の映画)

3.4

「家族」をつくるのは血のつながりなのか、それとも……

これからの社会のなかで誰もが考えなければならない問題を、シンプルな構造のなかに落とし込んだ秀作。

アカルイミライ(2002年製作の映画)

3.2

内面がはがれおちたかのように浮遊する若者。
水槽のなかを漂うクラゲがそうであるように、目に見えない毒を内側に秘めている。

静かだが、熱い映画。

CURE キュア(1997年製作の映画)

3.3

誰にでもあるもの。
誰にでもおきうること。

いっけんリアリティのない設定がこのうえなくリアリティをもって見るものに迫ってくるのは、それがわたしたちにとって身近であるからだ。

わたしたちのなかにある
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HANA-BI(1997年製作の映画)

4.0

北野武監督の最高傑作。

暴力と無垢な美のはざまでゆらめく北野ワールドが、きわめて高い完成度でまとめられている。

本作以降、これを超える映画を北野武は撮っていない。

黒い雨(1989年製作の映画)

4.0

広島への原爆投下と、その後遺症に苦しむ人々を硬質なタッチでえがく。

体当たりの演技を見せる田中好子も素晴らしいが、叔母役の市原悦子のそうぜつな名演が記憶に残る。

あえて白黒フィルムで撮られた本作は
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(1990年製作の映画)

3.1

賛否ある映画。

黒澤明の「実験」の数々をここに見る。
そこには黒澤らしいこだわりや美学があるのは確かだが、1990年という時代を考えても、「夢」をテーマの映画としてはこれらの「実験」には新しさもなけ
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影武者(1980年製作の映画)

4.1

戦国時代から絶えることのなかった信玄の影武者伝説を題材にした、スケールのおおきなエンターテインメント。

黒澤独特のデフォルメされた衣装や照明に彩られた映像は、いまだに古さを感じさせない。
あたえられ
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用心棒(1961年製作の映画)

4.3

徹底して細部までこだわった技法によってつくりあげられた、娯楽時代劇映画の最高峰。

三船敏郎、仲代達矢をはじめとして、脇役にいたるまでそれぞれの俳優の個性があますところなく発揮された、完成度の高い傑作
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羅生門(1950年製作の映画)

4.3

芥川龍之介の『羅生門』の世界に、おなじく芥川の『藪の中』のエピソードをはめ込んだ傑作。

内的多元焦点化されたそのテクストの面白さ(それは芥川の手腕でもある)もさることながら、重なりあういくつもの世界
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サクリファイス(1986年製作の映画)

4.8

難解といわれるタルコフスキーのなかでも、かなり明快な構成をもっている。

主人公アレクサンドルは舞台俳優。
神が創りたもうたこの世界のなかで、あたえられた役割を「演じる」わたしたちそのものである。
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ノスタルジア(1983年製作の映画)

4.8

タルコフスキーの残した映画のなかでもひときわ美しく、音楽と言ってもよい幻想的な時間が流れていく傑作。

小説家のアンドレイは「みずから世界を創るもの」としての神の側にいる。
それにたいしてキリスト教的
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ストーカー(1979年製作の映画)

4.4

科学者と小説家を案内して「ゾーン」にはいっていくストーカー。
その行程は、まるでひとがみずからの無意識の深部へむかって降りていくかのようだ。

「歴史」とは「記憶」であり、それはつかのま流れることをや
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惑星ソラリス(1972年製作の映画)

4.2

ここにあるのは「父親的な存在」と「母親的な存在」の対比をめぐるスケールのおおきな寓話である。

父的なものとは、みずからを罰する存在であり、それは神につうじる。
母的なものとは、みずからの欲望するもの
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