くろいひとさんの映画レビュー・感想・評価 - 22ページ目

くろいひと

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マネーボール(2011年製作の映画)

3.7

現代野球ではもはや当たり前となった、セイバーメトリクスにもとづいた球団マネージメントをえがいた秀作。

アスレチックで実際に行われたものを映画化したものだが、野球に詳しくないひとでも楽しめるようにてい
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人生の特等席(2012年製作の映画)

3.9

クリント・イーストウッドの渋い名演技が堪能できる名作。
この親父にしてこの娘ありといったエイミー・アダムスの魅力も。

イーストウッド監督作品ではないが、ここには彼がしばしばテーマに据える「父親とはな
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トランス・ワールド(2011年製作の映画)

3.7

完全に前情報なしで観るべき映画。
オープニングでわずかに感じた違和感はそういうことだったのかと。
金庫の扉がキーか。

ありがちな設定だが、低予算ながらていねいに作られていて好感がもてる。
ラストの解
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フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

4.1

キューブリックらしい思弁的なたくらみは影を潜め、見えるがままに提示される価値観のはがれ落ちた画面と、それを助長するうらはらな音楽。

クライマックスでの、このうえなく壮絶な、このうえなく愚かな、このう
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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

4.0

作品全体の結構がわかってしまえば、そこで言わんとしていることはきわめて明快でシンプル。
ベッドに置かれたそれが象徴的に指し示すもの。

中盤の「儀式」にはキューブリックらしいクールな色彩感覚のもとジオ
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囚われの美女(1983年製作の映画)

2.9

ロブ=グリエの作品のなかでは、比較的ストーリー(そのようなものがあればの話だが)が追いやすい。
そのせいもあって、リアリティを欠いた映像や展開がどうも安直に見えてしまい残念なところも。

快楽の漸進的横滑り(1974年製作の映画)

4.2

赤いペンキ。滑る卵。海岸にうち捨てられたベッドの残骸。

イメージが複写と模倣を繰り返すなかで、それらの断片が紡がれるかのようにふるまい、倒錯的なエロティシズムをあらわしていく。

ロブ=グリエ独特の
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エデン、その後(1970年製作の映画)

4.3

カフェ「エデン」に集まる若者たちの見る、境目のぼかされた虚構と怠惰な現実。

彼らが麻薬によって見せられる幻想と、わたしたちがロブ=グリエによって見せられる現実感のない夢。
そこに見えている「点」と「
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嘘をつく男(1968年製作の映画)

3.5

所詮は映画とは嘘をつくものであるという、開き直ったロブ=グリエがみせる虚構の螺旋階段。

もの語る男は、もの騙る男でもある。

森を男が逃げるシーンだけが妙にリアル。

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)

3.7

特急にのって行ったり来たりする運び屋の「つくりもの」めいた行動の数々。
ジャン・ルイ・トランティニャンの飾り気のない見事な演技が、現実感を欠いたこの映画にいかにも似つかわしい。

メタレヴェルで絡んで
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不滅の女(1963年製作の映画)

3.6

現実とも妄想ともつかないイスタンブールでの男と女の邂逅。
ずらされた時間軸のなかで、重なりあわないふたりと、繰り返される風景。
そして円環。

監督デビュー作にして、攻めた実験作。

シャイニング(1980年製作の映画)

4.2

ジャック・ニコルソンのあまりに常軌を逸した振り切れた演技に圧倒される。
ダニーの迫真の演技も見事。

キューブリック流の幾何学的な美しい構図と色彩のなかで、閉じられたホテルという空間のなかをただよう時
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キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

4.0

派手さはないが、見るものをじわじわと震えあがらせる異色作。

ロバート・デ・ニーロ演じるパプキンのような人物が溢れかえっている現代においては、この映画の面白さは増すばかりだろう。

この結末をどのよう
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

4.0

スコセッシとデ・ニーロの名前を不滅のものとした傑作。

ハードなタッチでえがかれるなかにユーモラスな一瞬もあり、デ・ニーロの名優ぶりがいかんなく発揮されている。

結末から振り返って、作品全体の結構を
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オペラハット(1936年製作の映画)

3.8

監督キャプラの特質を最大限に盛り込んだ傑作。
前半は一級のラブコメディ、後半はヒューマニズムあふれる展開。
当時のアメリカの時代背景を反映しているが、いまでもそのテーマは古びない。

ゲイリー・クーパ
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ニューオーリンズ・トライアル(2003年製作の映画)

3.7

法廷サスペンスものだが、その裏側の駆け引きをえがいた名作。

ジーン・ハックマン、ジョン・キューザック、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズの4人がいずれもおとらず気の入った演技を見せる。

しだ
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シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

2.6

とつぜんあらわれて、なすすべもなくうろたえる人々を尻目に首都圏を蹂躙するゴジラ。

東日本大震災下の日本の状況をひじょうにうまく寓話化したところは評価に値するが、ややそれがあからさますぎる気はする。
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

4.2

無理矢理な設定や展開が随所にあるが、やはり深い感動をもたらす名作。
やりのこした「夢」があったり、もういちど会いたい「彼」がいるすべてのひとためのファンタジー。

バート・ランカスターの圧倒的な存在感
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太陽(2005年製作の映画)

3.8

これは日本人では撮れなかっただろう。

どこまでも静謐な、残酷な時間。

どんな色に染められた眼鏡もはずして(そんなことは実際にはできないにしても)見た、リアルな昭和天皇のすがたをイッセー尾形が好演し
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イメージの本(2018年製作の映画)

4.1

古今東西の映画、映像の引用による圧倒的なパッチワークによる壮絶な視覚的・聴覚的洪水。
その結果、厳密にはこの映画には出演者というものはない。
あえて言えば、それはナレーションを担当するゴダール自身だ。
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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

4.2

ゴダールが3D映画を!という話題性におとることないその驚き。

焦点のあわない、3Dにならない映像に酔わされたその先にある衝撃。
右の目と左の目に違うものを見せることで、見るものの脳内で異なる映像を重
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カルメンという名の女(1983年製作の映画)

4.3

ゴダール作品のなかでは(比較的)わかりやすいプロットをもった傑作。
誰もが知っている『カルメン』のものがたりをゴダール流に換骨奪胎したものが、美しい映像表現のなかでシンプルに示される。

ときおりはさ
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

4.3

ジャン・ポール・ベルモンドとアンナ・カリーナの逃避行。
退屈な世界から逃げだしたそのさきにあるのは、デッドラインへむけてのあと戻りできないチキンレースである。

フランス的な色彩感覚のなかで美しく紡が
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アルファヴィル(1965年製作の映画)

2.9

近未来都市アルファヴィルを舞台にしたディストピア映画。

人口知能アルファ60の支配下にある管理社会において、人々は「愛」を取り戻せるのか。

設定やゴダールらしい展開には面白さを感じるが、やや不発な
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軽蔑(1963年製作の映画)

3.5

男と女のあいだの、失われていく取り返しのつかない時間。
そこをかわりに埋めていく苛立ちと焦燥。

ゴダールの作品のなかではもっともわかりやすい「普通」の映画の体を見せている。

海と別荘へつづく脆くも
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女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

3.8

ゴダールがしばしば行うように、いくつかの明確な(しかし明瞭ではない)章にわかれている。
そこでわたしたちが見る(わたしたちを見る)アンナ・カリーナの魅力ある顔。
彼女の素晴らしさがもっとも発揮された一
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.9

即興演出、手持ちカメラによる撮影、ジャンプカットなどの実験的な編集など、そのキャリアの初期においてゴダールらしさ」が十全に発揮された傑作。

浮遊する男が「息が切れ」るまで。

スクリーンのなかからわ
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ポセイドン・アドベンチャー(1972年製作の映画)

3.5

パニックものの古典。

典型的なストーリー展開にもかかわらず、そのいずれも息もつかせぬ緊張感と人間のドラマで埋めつくされており、いまなお心揺さぶられる。

ジーン・ハックマンの充実した壮年期の熱い演技
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ウエスト・サイド物語(1961年製作の映画)

3.5

傑作ブロードウェイミュージカルの映画版。

もはや古典中の古典として映画史上に輝く本作だが、いまだにバーンスタインの音楽はその素晴らしさを失っておらず、その魅力があるかぎり不滅の傑作であり続けるだろう
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アマデウス(1984年製作の映画)

3.2

モーツァルトの音楽に埋めつくされた本作は、やや古典的な型を感じさせる演技に興ざめするところもなくはないが、それでもF・マーリー・エイブラハム演じるサリエリの圧倒的な演技力に引き込まれてしまう。

サー
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未知との遭遇 ファイナル・カット版(2002年製作の映画)

3.5


既視感のある展開とアイディアは、それだけ本作がその後にあまた続く同種の作品の原型であるという証拠。
古さは感じさせるが、それでもいまだに楽しめる王道中の王道で、陳腐になりかねないストーリーを最後まで
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ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

3.9

まさに映画を観ることの素晴らしさを十全に教えてくれる傑作。

回想という名前で回されるフィルムは、色あせたぶんだけ素敵な想い出になる。

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)

4.0

わたしたちの生きている世界見るをメタ的な視線。
わたしたちはフィクションのなかにしか生きられない。

ジム・キャリーのはまり具合。

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

3.8


世に名高いスリラーにして、精神分析的な領域の多面性をみごとに映画化した傑作。

登場時間のわりに圧倒的な存在感をしめすアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター。
驚異的なその存在は、スターリ
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ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

4.0

タイムスリップものの、お洒落なおとなのファンタジー。
古き良き時代を舞台にあらわれる、誰もが知っているアーティストたち。

わたしたちにとって帰りたくなる懐かしい故郷は、みずから作り上げた記憶のなかに
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エイリアン(1979年製作の映画)

3.5

飽きるほど繰り返されてきた性的象徴と欲望の関係をみるタイプの分析のみならず、さまざまな批評眼をくすぐる意欲作。

科学者とも思えない登場人物の軽率な判断、ステレオタイプの労働者階級との垣根、無根拠な自
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