mareさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

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天使の影(1976年製作の映画)

3.5

戯曲が根底にあるためセリフの一つ一つが抽象的でありながら、舞台のような佇まいで無感情に放たれるそれぞれの人生観は悲壮感漂う。モヤがかかったように転落し、本質や生き方すらも見失っていくような負の映画に思>>続きを読む

サイン(2002年製作の映画)

3.5

こういうほのかにダークな00年代ジャンル映画はたまに観ると面白いし、絶妙なバランスで満遍なくやってのけてる手広さが奇妙で好き。偶然を信じるか信じないか、神の啓示サイン、前触れとしてのサイン、家族が辿っ>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.0

瞬きする間もなく更新されていく卓越したアニメ表現とメトロ・ブーミンのトラックだけでかなりの満足度で、アトラクションと形容してもいいくらいの突き抜け方をしていた。ストーリーとして特に目新しい部分はないが>>続きを読む

ガンガ・ディン(1939年製作の映画)

3.5

80年以上も前のアドベンチャー映画だが、アクションシーンの派手さであったり年代ならではの駆け足気味のテンポ感で、古典ながらも爽快感があった。CGなどがない時代だから数えきれない軍の攻防戦が今どきなかな>>続きを読む

サン・ピエトロの戦い(1944年製作の映画)

3.5

戦闘の拠点にされるサン・ピエトロの苛烈な運命、戦争の風景だけでなく綿密に作戦を立ててどのように遂行していくかまで細かく描かれる。戦争ドキュメンタリーと言いつつも実際のシーンではない部分も混在してはいる>>続きを読む

パサジェルカ(1963年製作の映画)

3.5

船上で蘇るアウシュヴィッツの記憶と正体不明の神秘性を携えた美しくも残酷なモノクロームの時代。一種の執着ともとれる立場を超えた心理サスペンスであり、抑圧された状況下で見えない摩擦が物静かに語られていく。>>続きを読む

バッド・テイスト(1987年製作の映画)

4.0

ピーター・ジャクソンのデビュー作はひたすらに気色の悪いカルトSF。基本的に人間と宇宙人の戦いが延々と続くだけの驚くほどシンプルな内容ながらも、自主制作感溢れるチープなゴア描写の数々が実にバリエーション>>続きを読む

ドッグ・デイズ(2001年製作の映画)

3.5

ドキュメンタリーチックでバラバラな人物と時系列で進行する群像劇であり、各々が何かに対して強烈なストレスを抱え、猛暑の極限状況下で人々の滑稽さを炙り出した胸糞映画。ザイドルの捻くれた視点が常時観てるこち>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.5

記憶というのは漠然とした体験の積み重ねであるが、それは写実的なビデオダイアリーにしても同様なのではないのかと思う。その時に抱えてた感情というものは刹那的なものでハッキリとは思い出せないものの、見返した>>続きを読む

乙女の祈り(1994年製作の映画)

3.0

異常なまでの友情が異常なまでの狂気に駆り立て、判断能力を失った最悪の祈りに至るまでの過程をファンタジーチックに描く。こういう事件が実話をベースにしているのが恐ろしく、都合の良いことを目の前にすると盲目>>続きを読む

ラブド・ワンズ(2009年製作の映画)

2.5

パッとしないサイコJKによるイケメン監禁モノ映画。主人公イケメンなだけでなく、ビビるほど生命力がありすぎて笑ってしまう。常人なら失神してるであろうシーンの連続でギャグ。父親と娘が親子で拷問を与え続ける>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品を真正面から観たままを読解するのは無理な話で、答え探しはナンセンスな気がするので、一つだけ述べるとするなら宮崎駿の臨界点を予想もしない形で突破した作品。「風立ちぬ」以降、リアリティ路線で行くの>>続きを読む

アトランティック・シティ(1980年製作の映画)

3.0

カラフルなルイ・マルと言うべきか、クライムものでありながら彼の映画の中ではテンションの高い部類だと思う。結構成り行きとか人物の心情が散漫だったりするのは否めないが、ズルズルと観れてしまうあたりつまらな>>続きを読む

不貞の女(1968年製作の映画)

4.0

シャブロルらしい高潔なサスペンスで、エレーヌ・サイクル期の彼の映画はとにかく隙のない面白さがあって素晴らしい。世の中には知りたくても知らなくていいことがあるというのをまさしく体現した不可解な男女の断絶>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

3.5

密室空間における抑圧と破裂、傷を負った過去について抉り出しているようにも、弄んでいるようにも見えるカーリンの振る舞いは、孤独な女性を狂わすための偶像としてこの上ない仕事をこなす。定点カメラが置かれた室>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.0

幸せの形を実現したからといって真に恵まれた日々が過ごせるとは限らない。ネガティブな発言を断ち切るような精神性を主人公の女性の発言から感じられるが、不安が蓄積するのはどうしたって抗いようのない心理として>>続きを読む

シナのルーレット(1976年製作の映画)

4.0

複雑な状況を抱えた人々が屋敷の一室に集まり暴発寸前な心理戦が描かれる。ブルジョワに対して哀れな状況にリードする意地の悪さだったり、コンプレックスが復讐への引き金になったり、起きてはいけないことばかりが>>続きを読む

探偵スルース(1972年製作の映画)

3.5

だだっ広い屋敷で繰り広げられるワンシチュエーション密室劇で、終始2人の男しか登場しない最小限の持ち札で展開される心理戦ミステリーで、裏切りの連続が面白く見入ってしまった。脚本の勝利で計算されまくったタ>>続きを読む

タバコは咳の原因になる(2022年製作の映画)

3.5

タバコ戦隊が地球を滅ぼそうとする敵に立ち向かおうとするヒーローショーかと思いきや、実は話の大半は彼らの合宿中の持ち寄った怖い話再現VTRでほぼ尺を持ってくという人を食った構成。タバコ啓発ムービーかと思>>続きを読む

ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

4.0

ドライヤーの最後の作品は視線の交わらない徹頭徹尾ミニマルに貫かれた会話劇。神秘的なテーマを多く取り扱う作風から非常に現代的なテーマへと舵を切った。不定形な輪郭が満たされるゴールまでの道のりが愛なのか、>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

4.0

普遍的な家庭ドラマに宗教を用いながらもごく自然に二つの愛の誕生を描き、出産と結婚という愛が結実する瞬間を壮大にドラマティックに描き切った文字通り"奇跡"を捉えた映画。無宗教である自分も実在しない神とい>>続きを読む

怒りの日(1943年製作の映画)

4.0

この不穏な静謐、画面に配置されたものの一つ一つが整然としていて、光と影のコントラストがひたすらに美しい。一切の劇伴がなく会話や最小限の物音のみで積み上げられていく恐怖のサイン、一見すると平穏な家庭を蝕>>続きを読む

少年、機関車に乗る(1991年製作の映画)

3.5

タイトルが全てを物語っているが、中央アジアの広大な景色の中を流れるように機関車が進み、さまざまな人々との出会い、交流が描かれるほのぼのとしたロードムービー。観光映画として眺めているだけでも上質な喜びが>>続きを読む

ウルガ(1991年製作の映画)

3.5

内モンゴル人とロシア人、大自然と都市部の差異、淡々と生活を描きながらも静かに異文化とのコミュニケーションを見つめている。ストーリーとしてかなりシンプルなものだが、前編後編のコントラストがかなり効いた作>>続きを読む

ふたり自身(1972年製作の映画)

3.5

冒頭でいきなり結婚、幸せ絶頂なはずのハネムーン映画かと思いきや旅行先で若い娘に一目惚れして早々に離婚を決意するというなかなか救いようのない映画。ハネムーン中に他の女に会いに行くために見苦しい言い訳をし>>続きを読む

拾った女(1953年製作の映画)

4.0

サミュエル・フラーなりの創意工夫が凝らされたフィルムノワールの快作。この年代のミニマルでタイトな活劇にハズレなし。80分という限られた尺で最大限に動き回る状況、人の動き、非常事態に芽生えるあってはなら>>続きを読む

コシュ・バ・コシュ/恋はロープウェイに乗って(1994年製作の映画)

3.5

かなり希少性の高いロープウェイが主人公と言ってもいい映画で、それを用いた人物のやり取りやこれまでに見たことのない人との関わり方や独自の風景がいちいち新鮮にスクリーンに広がる。ロープウェイ以外にもさまざ>>続きを読む

とても素敵なこと-初恋のフェアリーテール-(1996年製作の映画)

3.0

集合住宅でそれぞれに問題を抱えた子供たちと親たちの縮図、現代的なテーマで学校の外で若者たちの葛藤を映す。人々が窮屈な狭い箱に閉じ込められているようで皆が解放、脱出を求めている。世間知らずで分からないこ>>続きを読む

ルナ・パパ(1999年製作の映画)

4.5

衝撃にして笑撃、クストリッツァ作品とも比肩する無尽蔵なエネルギー、収拾がつかない騒々しさ、混沌としていながら愉快さも持ち合わせた有り得ないバランス感覚のロードムービーで誰にも真似できないオリジナリティ>>続きを読む

真実の囁き(1996年製作の映画)

2.5

インディーズ映画なのでちょっと期待していたが、複雑に絡み合いすんなりとは分からせてくれない編集とイマイチ起伏のない展開が終始続くのでダラけてしまった。国と家族の歴史、とある白骨死体から始まるミステリー>>続きを読む

フープ・ドリームス(1994年製作の映画)

3.5

NBAというたった一つの夢に向かって突っ走る少年2人、望みを託すのはバスケで活躍する未来の自分、ただ純粋に夢を追っていられることがいかに恵まれたことかを思い知る4年間のドキュメンタリー。生活は困窮して>>続きを読む

砂時計(1973年製作の映画)

5.0

初めて見る感覚に襲われる映画というのは非常に限られるが、その中でも間違いなく最上位に位置する異次元体験。空間と時代がシームレスに画面内で横断する驚異的な映像表現、もはやアトラクションとも形容できる冒険>>続きを読む

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

4.5

前半と後半であまりに違うドラマに変貌するので非常に驚いたし、先読みを全くさせないどこかのタイミングでスリルに繋がりそうな話運びがべらぼうに面白い。アルトマンは普通の映画に見せかけて急転直下でホラーを挿>>続きを読む

ナイン・マンス(1976年製作の映画)

3.5

アダプションが二者の思いやりの物語ならば、こちらは二者による蓄積が膨張寸前にまでに至る理解の困難さを描いた作品。愛することと受け入れ合うことの共存はまるで上手くいかなく、何となく日々が過ぎていってキス>>続きを読む

アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

3.5

母と娘、その関係性と二者を同時に映しながらそれぞれに立ちはだかる困難に、支え合いながら立ち向かっていく。高齢出産且つ養子として妻帯者との子を授かりたい女性、寄宿学校を衝動的に抜け出し彼氏と早く結婚がし>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.5

表面的にしか見えていない世界で常に私たちは生きていて、真実などと言って容易く善悪を区別し、損得か感情かで判断を下して、無害な存在でいようと潔白に思われるために波風も立てずそんな風にして生きているはずな>>続きを読む