mareさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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マイセン幻影(1992年製作の映画)

3.0

マイセンコレクターの生き様、マニアたるもの愛してやまない嗜好品と生活に寄り添い、己を全うするまで同じ空気を共有する。ちなみにマイセンとは陶磁器のことである。収集癖がある人間に付き纏う命題に真摯に向き合>>続きを読む

グッドモーニング・バビロン!(1987年製作の映画)

4.0

なんともドラマティックな兄弟愛の映画ともいえるし、映画を語る映画でもあるし、やり切れない世相を反映する映画でもある。いずれも強靭なニュアンスを持っているため、タヴィアーニ兄弟の映画はどこを切り取っても>>続きを読む

ブラックボード 背負う人(2000年製作の映画)

3.0

とにかくみんなが生きていくことに必死だなというのが強烈に伝わってくる映画で、命懸けで生活に縋り付く難民たちと生活の糧を手に入れるために先生としての使命を何としても叶えようとする男のひりつくようなドラマ>>続きを読む

サイレンス(1998年製作の映画)

4.0

盲目の少年が主人公、最初は身の回りの音を全てシャットアウトするも最終的には音を支配し指揮する存在になるという一つの神の誕生を目の当たりにした感覚に陥った。耳しか頼りにならない少年の佇まいは、目よりも鋭>>続きを読む

海辺にて(1992年製作の映画)

4.5

アンビエント、ドローン、ニューエイジとこの手の音楽が好きな人からしたらたまらなく極上なイメージの洪水。海の映像に合わせて音も揺れ動くというそれだけの内容だが、感覚的にひたすら恍惚にさせられる体験でこの>>続きを読む

ミミ(1996年製作の映画)

3.0

ルシール・アザリロヴィックのデビュー作というだけあって、編集に着目すると夫ギャスパー・ノエの痕跡が確かに感じられる。50分ちょっとで描かれる少女の闇。母親が入院したためおばさんに引き取られるが、ミミは>>続きを読む

ショコラ(1988年製作の映画)

3.0

埋まることのない白人と黒人の溝を意識させられ、カメルーンで唯一の親密な関係であったはずだが、それぞれに痛み、孤独を背負っている。子どもと大人、共有している空間、景色は同じでもそれぞれの心象にはギャップ>>続きを読む

ツバル(1999年製作の映画)

4.0

主人公が外の世界を知らないというどこかで聞いたことのあるSF設定、突然出会ったヒロインとのラブストーリーを軸に進行し、セリフも文化的知識も必要としない感性のみに委ねられる宝物のような輝きを放つどこまで>>続きを読む

アナザー・デイ・イン・パラダイス(1998年製作の映画)

3.5

SEXとドラッグに溺れる少年少女という相変わらずのラリー・クラーク節は健在だが、本作にはドキュメント性はあまりなく、ストーリーラインがしっかりと敷かれている印象。どうしようもなく堕落していく、因果応報>>続きを読む

ペサックの薔薇の乙女79(1979年製作の映画)

3.0

11年前に捉えた光景をユスターシュは再現する。白黒からカラーになったこと以外は前作のドキュメンタリーとプロットや起承転結に至るまでほとんど一緒だが、反復や繰り返しを積み上げる彼の作家性と共鳴し、継続す>>続きを読む

ペサックの薔薇の乙女(1968年製作の映画)

3.0

ユスターシュは故郷ペサックに立ち帰り、その地に伝わる風習を混じり気のない視線で真摯に見つめている。毎年薔薇の乙女に相応しい一人を投票で決めるというもので、その年のアイコンになった者を称え、幸福を祈る。>>続きを読む

ラブ・セレナーデ(1996年製作の映画)

3.0

シャレオツなラブストーリーを期待していたが蓋を開けてみたらかなり変な映画だった。二人の姉妹の家の隣に名の知れたラジオDJが引っ越してきて基本的にその三人のみでストーリーが進行する。その男に妙に惹かれる>>続きを読む

ジャグラー/ニューヨーク25時(1980年製作の映画)

4.0

元警官の男が誘拐された娘を助けに行くだけのストーリーだが、序盤からいきなりカーチェイスでぶっ放し、その後も基本場所が変わっていくたびに暴力でその場を乗り切っていく動きの連鎖がたまらなく気持ちいい快作。>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

2.5

あらゆるメタが反映されまくった豪華すぎるごった煮映画なので今作も例に漏れず情報量に呑み込まれるわけだが、今作に関しては完全に白旗を上げる。ワンシチュエーション且つ劇中劇を強調する多層的なつくりが恐らく>>続きを読む

コカイン・ベア(2023年製作の映画)

3.5

90分台の尺でこういう頭の使わないB級映画はやはり痛快。実話に基づくとのことで多少なりとも誇張表現をしているのかと邪推してしまうが、基本コメディでグロさもしっかりありつつ、さまざまな人物の視点からクマ>>続きを読む

ネイキッド(1993年製作の映画)

3.0

欲望のままにというのもあると思うが、それ以上に行き当たりばったりの人々との出会いや意味もなく積み立てられる会話に虚しさが込められていたりして自暴自棄な印象が大きい。健全さであったり目標というものが欠如>>続きを読む

アリックスの写真(1980年製作の映画)

3.5

アリックスの写真を次々にめくり、作品ごとの思惑、バックボーンについて語り、考察を重ねていく。写真という一枚のイメージに封じ込められたストーリー、反映された作者の心理描写、鑑賞する各々が思いに耽ること、>>続きを読む

不愉快な話(1977年製作の映画)

4.0

タイトル通り品がなく不愉快な話がフィクションとドキュメンタリーと、全く同じ体で二度味わうことになる挑発的な作風。かつてのぞきに取り憑かれた男が自身の性の哲学をそれっぽく語る卑猥極まりない内容で、周囲の>>続きを読む

ナンバー・ゼロ(1971年製作の映画)

2.5

ドキュメンタリーにおける演出をゼロにし、ただ一人の人物が喋る様をワンシチュエーションのみで見せる徹頭徹尾ミニマルな記録。語り手がユスターシュの祖母でその人生を言葉のみで綴っていくので想像力が試され、極>>続きを読む

(1970年製作の映画)

4.0

一頭の豚が小屋から放たれ、解体、食用に加工されていく様を見せるドキュメンタリーで、その道のプロの仕事が実にリズミカルな行程を踏んでいく様を観ているだけで興味深く面白い。優れたチームワークと無駄のない一>>続きを読む

山猫(1963年製作の映画)

4.0

貴族が描く貴族の物語。誰にも真似できない豪華絢爛の極みに君臨する映画であることは間違いない。全貌を把握しきれない屋敷の華々しい空間に見入ってしまい、3時間の悠久な時を丹念に味わいながら、没入から抜け出>>続きを読む

小さな火の歴史/くすぶりの年代の記録(1975年製作の映画)

2.5

アルジェリア独立戦争が起こるまでの話だが、それまで人々は恵まれない環境下で干魃に苦しんだり、友人を失ったりと冒頭からなかなかキツいことの連続。植民地からの視点で描かれるわけだから痛みを訴えてくる作風に>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

4.0

幼少期に両親の別離を目の当たりにし、子自身も囚われの身にある己との決別に向かっていく。当たり前が突然目の前から消えることが子どもにとっての何よりの恐怖であり、ぐちゃぐちゃに整理できなくなった心象が反抗>>続きを読む

ストライキ(1925年製作の映画)

4.0

描いてる内容こそ圧倒的な絶望でしかないが、凄まじい速度でモンタージュが展開され、アクション映画と形容しても良さそうな怒りの解放の映画だと思う。サイレント映画の時代に風穴を開けた革新性はこの映像表現を見>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

4.0

ある日突然妻が失踪するというシンプルな入りだが、フィンチャーがそれだけのストーリーで終わらすはずもなく非常に見応えのあるサスペンス。総じてフィンチャーの映画は終わり方が好みで、一筋縄ではいかず恐ろしさ>>続きを読む

ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

3.5

世にも珍しいトリアーの完全コメディ映画。デンマーク人に対してあまりに辛辣で笑ってしまう。会社のボスの代行を頼まれた役者の男というへんてこりんな設定で、途中で映画を一旦放棄したかのように挿入されるメタ的>>続きを読む

青い青い海(1935年製作の映画)

4.0

白黒でもこんなに煌びやかだから、カラーで観たら美しすぎて気絶しそうな青い青い海。二色表現に限られている分、光の粒、乱反射が際立ちより克明に忘れがたい光景となる。そして男女三人によるシンプルかつジェラシ>>続きを読む

国境の町(1933年製作の映画)

3.5

敵対国というだけで運命が左右され、逃げ出すこともままならない劣悪な環境で出会ってしまった男女。親を選べないのと同じように故郷も選べない私たちは時に不当な差別を受ける。この光景はつい最近だと日本でのロシ>>続きを読む

ストレンジ・デイズ/1999年12月31日(1995年製作の映画)

3.5

2000年を目前に控えた近未来サスペンスで攻殻機動隊っぽさがある。都市全体を包み込む世紀末感と、その影で暗躍するバーチャルに隠蔽された殺人事件の華麗なる追走劇。五感を閉じ込めたディスクなるアイテムがS>>続きを読む

ロアン・リンユィ/阮玲玉(1991年製作の映画)

2.0

ロアン・リンユイの人生、演じるマギー・チャン、関係者へのインタビューの三つの視点が交差するつくりはうまく調理すれば面白い試みになりそうだが、いかんせん長い。あとはそこまで彼女の人生というものに興味を持>>続きを読む

怒りのキューバ(1964年製作の映画)

4.5

怒りというものを最も写実的に記録した超絶怒涛のカメラワークから放たれる四通りの壮絶な戦い。撮影方法もそうだが、ブレーキが壊れそうな怒りのエネルギーをどうやってコントロールしているのか全くわからない。否>>続きを読む

SAND LAND(2023年製作の映画)

4.0

荒野を戦車が走るシーンだけで映像的には満足だし、ハッキリとした正義と悪の少年っぽいストーリーがストレートで気持ちいい。埋もれるキャラクターが一人もいなくてデザインが立っているのは鳥山明の才能であるのは>>続きを読む

スーツ(2003年製作の映画)

3.0

3バカトリオが延々とアホなことをやって高級スーツを何としてでも手に入れようとする。スーツを纏うことがカッコいい男の象徴だと信じて疑わない彼らの破天荒で無茶なライトに歪んだ青春映画。要するにおバカ映画で>>続きを読む

ゴングなき戦い(1972年製作の映画)

4.0

ボクシングの勝敗と人生そのものの勝敗の浮かび上がってくる対比が哀愁を纏ったアメリカンニューシネマと完璧にマッチする。総じてブルージーな雰囲気が全体を占めており、男の弱さに誠実に向き合って、思うように運>>続きを読む

ミニー&モスコウィッツ(1971年製作の映画)

4.5

こんな人間日常的にいる訳がないのだが、人間の面白さというものをギリギリまで引き出し、信じてみたくさせる力がカサヴェテス映画にはある。その中でも特筆してこの作品のパワーは異常であり、シーモアのメチャクチ>>続きを読む

愛の奇跡/ア・チャイルド・イズ・ウェイティング(1963年製作の映画)

4.0

大半の者が社会という籠の中で閉じ込められ、規範に則り"普通に過ごしていく"術をボーダーラインとして生きていく中、そんな枠組みこそが、生まれついた人間の在り方を縛っている。これは非常にカサヴェテスのイン>>続きを読む