むーんさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.7

ダイアローグを軸に織りなされる作劇の手法は濱口竜介監督作品へと確かに受け継がれている。やはり人はどうしても一筋縄ではいかなくて、それゆえのすれ違いも衝突もある。決して劇的なできごとが起こるわけでもなく>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.9

1秒でも早く劇場を出たくなるぐらい怖かった。幼少期にホラー系の絵本で味わったような、原始的な感情に訴えかけてくる生々しさがある。何よりも、スクラップアンドビルドで次々と提示される昏い幻想の奔流は、創造>>続きを読む

あしたの少女(2022年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

コールセンターに勤務する少女が自死に至るまでの過程が描かれる前半と、それを捜査する刑事の視点から資本主義社会の歪みが浮き彫りにされる後半とに分かれる。この構成において一貫されているものは、責任の所在と>>続きを読む

キングダム II 第3章/第4章(1997年製作の映画)

4.2

ひたすらカオスで面白い。ただもはや何を面白がっているのか分からなくなってくる。

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

クローネンバーグ監督の作品は初鑑賞だったけど、大好物の映画だった。臓器解剖のアート性を官能的に表現した映像美と、現実に接続しそうで接続しない固有の世界観にグッと惹き込まれる。ストーリー的には、起きてい>>続きを読む

キングダム(1994年製作の映画)

4.0

まだ観れてないけど、『ツイン・ピークス』ってこんな感じのドラマなのかなーと思った。とにかくキャラのクセが強いし、展開もアクロバティックで、流石に体力的に厳しいところもありつつも大体は楽しめた。続きも気>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ラスト、人間として歩み出すバービーを描く一連のシークエンスは美しかった。また、全編を覆うパステルかつポップな映像の処理も愉しかったし、芯を貫く力強いフェミニズムの文脈にも共感は示せる。
ただ、コメディ
>>続きを読む

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

すでに多くの指摘がある通り、今回の敵役はいわゆる『弱者男性』であり『無敵の人』でもある。そんな彼を捕まえてしんちゃんは『仲間』だと己の立場を表明し、彼を迫害した社会に立ち向かう構図が印象的な場面として>>続きを読む

イノセンツ(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

団地を舞台に異能力×無垢な暴力性という大友克洋のイマジネーションを見事に映像に仕立てている。一瞬で全てが決壊してしまいそうな不穏な緊張感が絶え間なく持続していて、心地良いストレスが味わえる一作だった。>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

題材は好みなのに撮り方が肌に合わない映画だった。少年同士の淡い関係性、否応なく変化してしまった環境によって隔たれてしまった絆と顛末、といった要素は多くの人が指摘する通り『怪物』とも共通するが、本作にお>>続きを読む

ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

4.0

ラース・フォン・トリアー作品で最も後味のいい一作だと思う。わりと他の映画でもブラックな方面で片鱗を見せていたジョークのセンスがコメディ映画という型の中で遺憾無く発揮されている。最近までは画作りが巧い監>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

今年刊行された村上春樹の新刊でも同じことを感じたが、ファンタジー作家が老いとともにイマジネーションや描くべきモチーフを失い、最後に表現されるものが己自身しかなくなった結果として生み出された作品に対して>>続きを読む

ニンフォマニアック Vol.2(2013年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

かなり好みの一作。序盤は自分語りお姉さんと学問引用おじさんのちょっとズレた会話聞いてるだけで楽しいし、vol.2に入ってからはテーマ性がセクシャリティとフェミニズムの課題へとグッと焦点が絞られて--い>>続きを読む

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ヨーロッパ三部作ではいちばん好み。後の作品に見られるような挑発的なブラックユーモアの感覚が備わっていて、ラストで映画の世界に呑まれた女性が発狂しているところは一歩引いてみるとかなり滑稽というか。あと何>>続きを読む

エレメント・オブ・クライム(1984年製作の映画)

3.2

ラースフォントリアー初の長編映画。連続殺人犯を追う刑事が犯人の足取りを辿り心理に同調するうちに同一化していく、といった具合の筋書きで、ストーリー構造自体は単線的かつ冗長だが、画調の独特な色味の出し方に>>続きを読む

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

4.2

傑作。すごく高度にテクニカルな脚本で、ミニシアター系の作品でこのインパクトはカメ止めを彷彿とさせる。ショート動画、ファスト映画が隆盛を極めた現代において二分間のループという設定は非常にキャッチーで、ル>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.1

特段大きなドラマがあるわけではないが、人と人との繋がりを丁寧に描いていて良かった。僕個人は人見知りなので相席や旅先での人間関係という状況設定に親近感を抱くのはいささか難しいところがあるけれど、それでも>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

美しい映画だった。一つの事件を複数の視点から俯瞰する、いわゆる羅生門スタイルの構造は珍しいものではなく、湊かなえ作品に多用される手法でもある。ただ、そこから照射される真実が悪意のイメージを剥奪していき>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

一作目よりは格段に楽しめた。アニメーションのキレが抜群に良いし、やはり映像作品としてのレベルの高さには目を見張るものがある。そして、マルチバースを利用した世界観の風呂敷の広げ方や、規定された運命への抵>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.9

怪作。栄光から没落、再興という軸となるストーリーラインや、炎上騒ぎなど解りやすい部分は解りやすい一方で、場面の切り方や全体の構成が独特で、全体を俯瞰してみるとむしろ理解を拒まれている感覚があり、『セッ>>続きを読む

最後まで行く(2023年製作の映画)

3.9

リメイク元は未見。ブラックジョーク的な剽軽なノリとスピーディに展開されるサスペンスが持ち味で、ラストは正直しつこさは感じたものの、基本的には楽しく観れた。この監督らしい分かりやすさがあって良かったと思>>続きを読む

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

4.3

『スタンド・バイ・ミー』とか『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』的な一夏の冒険と友情の物語とかって散々使い古された題材ではあるんだけれど、こんなんなんぼあっても良いですからね!!! 最高に美>>続きを読む

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

史実や実在の人物を題材にした作品の在り方として、それが現代にも通底するテーマ性を孕むものであるか、あるいは伝記として事件や人物像を伝承するものであるか、という二種類があるとすれば、本作は完全に後者。そ>>続きを読む

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.8

ゲームでプレイしたアクションの快楽をどこまで映像に落とし込めるか、というところを本作の勝利条件として設定すると、及第点以上の出来ではある。DKやマリカなどさまざまなシリーズのアクションを取り入れた試み>>続きを読む

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)(2023年製作の映画)

4.5

ご長寿のキャラクターコンテンツとして、考えうる限り最高に近い魅せ方をした映画だと思う。今年こそ念願の興行収入100億を突破したいという本気がひしひしと感じられた傑作。『ゼロの執行人』『緋色の弾丸』が全>>続きを読む

ヴィレッジ(2023年製作の映画)

4.0

すごく直線的で誤読の余地がないストーリーラインの映画。ムラ社会の陰湿かつ閉塞的な人間関係とか、隠蔽体質とか、予告からイメージされる内容を概ね裏切らないつくりで、僕は好みの題材だったこともあって楽しめた>>続きを読む

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

終末論や同性愛、閉鎖された環境という題材が好みだし、観ていて退屈する時間はなかったので、わりと好みの映画ではある。預言を信じるかどうかを問われる感じは『ベネデッタ』とかとも近い感覚。主張を信じ込ませる>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

イランで発生した娼婦連続殺人事件を題材にした一作。宗教都市において“浄化”という歪んだ思想のもとに殺人を繰り返すシリアルキラーとそれを英雄視する民衆たちが、社会に蔓延する差別意識を照射する。杜撰な反抗>>続きを読む

世界の終わりから(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

純粋にセカイ系がそこまで好きではないというのはあるが、それを差し引いても90年代ぐらいの荒いSFマンガを読んでいる感覚で、面白さが掴めなかった。映像面の特殊効果は独特な味わいこそあるものの、モチーフと>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

死の間際に何を見出すか、という視点で、『本心を詩に綴ること』だったり『娘との絆を取り戻すこと』だったりといった人生のテーマみたいなものを同性愛と宗教信仰も絡めて描いた一作として受け取った。『誰も人を救>>続きを読む

生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.3

リメイク元のほうは未鑑賞なので、あくまでこの作品単体での評価ということになるけれど、シンプルに好きな映画だった。最近、労働を続けていくことによって日常から失われていく豊かで美しいものといかに向き合って>>続きを読む

ロストケア(2023年製作の映画)

4.0

超高齢社会を迎え、いわゆる2025年問題が差し迫る現代に語られるべくして語られたテーマ。人としての尊厳、介護の過酷さと介護士の不足、生活保護受給にあたっての水際作戦、安楽死、死刑制度--といった問題を>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.8

台詞回しから画の撮り方、アクションに至るまで全てがワザとらしく、懐古趣味的なロマンの熱量で成立させている映画なので、昭和ライダーに思い入れがあるかどうかで評価が変わってくると思う。文化の保全・継承に強>>続きを読む

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

及第点ではある。ただ、個人的にまずいと思った点はいくつかあった。
まず、パラダピアが理想郷と銘打たれている割に(後にそうではないと発覚するにしても)、のび太達に対して『理想』を提示できていない点。のび
>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.6

設定に目新しさはないが、今の時代に撮られるべくして撮られた映画だと思う。人物を追う眼差しは丁寧かつ誠実でありながら、群像劇のかたちを選択したことによって、物語の構成としてはいささか視点が散漫になった感>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

正直スピルバーグの作品は好みではないのだけれど、自伝なら観られるかもしれないと思い足を運んだ。なんというか、あまり映画愛みたいなものを感じられる作りにはなっていなくて、エピソードとして、カメラを持つ少>>続きを読む