KentFさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

KentF

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柔らかい肌(1963年製作の映画)

3.4

背徳感から増幅する不安と緊張。

Truffautの脚へのフェティシズムが生んだ彗星Françoise Dorléac。髪をまとめ上げ踊るうなじや横からの鼻筋もまた美しい。

男のエゴとエロに塗れた時
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監督・出演陣が語るアイリッシュマン(2019年製作の映画)

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格好良すぎる三俳優+巨匠。歳のとり方に想いを馳せて見惚れてしまう。本作の余韻が昇華される見事なディジェスティフ。
レトロな雰囲気に、最新技術の裏話が優雅に絡み合う。しかし根本はキャラクター。この四人を
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アイリッシュマン(2019年製作の映画)

3.6

無数の三角関係が織り成す時代。基本となるのは一対一のトーク(正面の絵と聞き手の後頭部)。俺と奴。奴と彼。この世は人と人。そこに、それを見つめるもう一点が加わり形成されるトライアングル。
そのバランスが
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シーズ・ガッタ・ハヴ・イット(1985年製作の映画)

3.8

Spike Leeの女性讃歌。身も心も支配されない自由への強い渇望。批判されても軽蔑されても、捉われない生き方への憧憬。

文学的で芸術性の強い初期の作品。一人ひとりを丁寧に描くことから一つの社会をあ
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サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~(2021年製作の映画)

3.0

Melissa McCarthyのSpy(2015)に連なる、あの主役になっちゃいましたシリーズ。
シリアスな役柄の多いOctavia Spencerを巻き込んで。
何も触らないで、バスは投げないで、
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.8

時空が激しく回転する奇才の真骨頂。究極の眩暈。
もう一度見返してその怪奇を明かそうとするのもいい。しかし映像美と独特な音響に包まれたこの眩暈をそのまま味わっていたい。

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)

3.8

理不尽に虐げられたこの地獄。何を信じ何を頼りに生きればいいのか。泥の中から希望のトリコロールを救い上げる。

僅か三分の一程度出演のAnne Hathaway。辛苦と嘆きを叫びながら、この強さと凛々し
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.1

半分窪んだ世界。汚れが流れ込み、注ぎ込む光がほのかな嫉妬と希望をもたらす世界。いっそのこと、冷たく閉ざされた暗闇の方が恵まれているのかもしれない。
勢いを頼りに飛び出すも、今度は希望が萎え、妬みが膨ら
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ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)

3.6

集中できないから音楽をかけながら仕事はしない、と話していた人を思い出した。それでも音楽は、この時の流れを、空気を、景色をがらりと変えてしまう。音が街に溶け込み、街が音に包まれる。人はよくそれに救われて>>続きを読む

最強のふたり(2011年製作の映画)

3.9

相棒にしては、見た目も性格も雰囲気も異なる。しかし主従関係でもない、妬みも遠慮もない。息の合った、というのもちがう。それでも活かし合い、周りを巻き込み、駆け抜けていく。
最高のはじまり!
ある時点から
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孤狼の血(2018年製作の映画)

3.4

苦手なヤクザもの、バイオレンスものとは少しちがう。押し付けがましい仁義や義理は傍において、呉の息遣いを描き出す。

阿部純子がいい。

ブタが労られる社会になれば。

寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.1

一本残され佇む。あの人のいない未来を生きる。復興した、立ち直った、いやそんな簡単じゃない。

左上がり、止まってみれば右下がり、沈んでいく。緻密に配置された構図が、言葉を補い引立てる。

あの人はもう
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時の面影(2021年製作の映画)

3.4

過去を掘り起こす。
死者を呼び起こす。
気の遠くなるような地道な作業を見下ろす空が美しい。その空が曇ればストーリーにも連動する。視覚で愉しむ。
地中への浪漫と宇宙へのロマン。向きは違えど同じベクトル。
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

3.2

成田凌の“きもちわるさ”がきらりと光る。森の中でのなんとも言えない微笑。冒頭でぐいっと惹き込まれる。

テレビドラマ仕立てのよくあるB級邦画から半歩はみ出た佳作。

オーシャンズ11(2001年製作の映画)

3.3

伏線。それに気づくことすら伏線なのかもしれない。

素直に、個性とチームワーク、どんでん返しを堪能する。

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

4.1

マリッジ。パートナーのことを知り、長所も短所も受け入れて、リスペクトして愛する。
続くかもしれない。でもこれは結末を迎えるやや短いストーリー。
周りに愛され理想的に見えた二人の、終わりに向けたストーリ
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BLEACH(2018年製作の映画)

2.8

映像と構成、漫画の実写化の中では、思い切って作り上げている方。もっと大胆に作り上げ直してもいい。原作ファンからの大ブーイングを覚悟して、シネフィルに大絶賛される、そんな賛否両論を作れるポテンシャルを垣>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

狐につままれたような、何が何だかわからない空間。誰を信じて良いのか、何が本当なのか。愛すべきホーム(フラット)に次々に入り込む他人と感情。
言い知れない不安と堪らない心細さ。孤独な感情の波が寄せては返
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ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)

3.8

ホワイトパワーとブラックパワー、二つの正義がぶつかり合う。単なるコメディでも、勧善懲悪でも、黒人万歳でもない。Spike Leだからこそ描ける、自己矛盾も同胞批判も包含した、かつユーモアを唄うように織>>続きを読む

イエスタデイ(2019年製作の映画)

3.4

12秒が変えた世界。ビートルズのいないたまらなく退屈なはずの世界は、奇妙なサクセスストーリーの始まり。イエスタデイを振り返りながら、歩んでいく。

Lily Jamesの奥手で冴えない感じが絶妙に良い
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.2

シックスティーズの熱気が蘇る。無機質なはずの法廷から、激動の時代を鮮やかに描き出す、競演と構成。
Eddie Redmayneの聡明で冷静なな瞳に宿す脆さ。Joseph Gordon-Levittの理
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かもめ食堂(2005年製作の映画)

3.8

世界はひとつ。
ひとりになりたいときに、ひとりになったときに観たい作品。

大事なモノはそれぞれ違うから、ひとりなのに孤独じゃない、みんなでいるのにちゃんとひとり。

いらっしゃい。
コーヒーとおにぎ
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アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

3.8

丁寧に描きながら、テンポ良く。
焦れて迫ってくる奴らとは違う。

出会うその時、世界が変わる。

Adèleの唇からは、溜め息と共に渇望が漏れ出す。Léaの眼差しからは強さと共に寂しさがほとばしる。

HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ(2017年製作の映画)

3.5

暑く熱い3か月。
なんて夏だ。

波乱のクライマックスを冒頭にもってきて、そこに至るまでを遡って描くスタイル。

T.Chalametの弱々しさと純情さ、それ故の危なっかしさが良い。

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

3.8

夢の世界は、タイムスリップ先の華の都。けれど90年経っても、実はそれほど変わってない。物語は昔のパリであり、それは今のパリでもある。そのことを冒頭で印象付けるよう。
魔法にかかったように始まり、ふわっ
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パリ、混沌と未来(2019年製作の映画)

3.8

この国は、そこに生きる国民は強くあらねば、と訴えかけてくる。ロジックを携えて、規律をもって、自立して。
しかしこの世は、そんなにシンプルではない。格好良くも正しくもない。正義と正論がぶつかり合う華の都
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ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

4.8

大海原に背を伸ばす新芽のように、光に満ち溢れた世界に歩み出すささやかな希望の物語。朽ちないノスタルジー。それは保守的な司祭も、浮浪者も同じ。皆がそれぞれの居場所に想いを抱く。
壮年期に観直したい。
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ターミネーター2(1991年製作の映画)

3.9

恐怖の上塗りではなく交流へ。
トーキーになったターミネーターが口にするのは最高にクールな言葉たち。単なる続編に陥らず、別次元の作品へ。かと言ってあのスリルは減退するどころかアップデートされているから恐
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はじまりのうた(2013年製作の映画)

3.6

“音楽の魔法。平凡な風景が意味のあるものに変わる。陳腐なつまらない風景が美しく光り輝く真珠になる。”

映画についても言い得て妙。

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)

4.1

ピアニストである必要はない。ポーランド人でありユダヤ人であるという二重苦の中で、淡い希望や多少の楽観が蹂躙され、「戦場」と呼ぶには余りに一方的な不条理の渦に飲み込まれていく。
R.Polanskiが描
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八月の狂詩曲(ラプソディー)(1991年製作の映画)

3.5

反戦への強烈な巨匠の想いが、子どもたちの瑞々しさを圧迫。棒読みで固い表情、ぎこちない仕草。
たしかに、なんだかおかしな夏。ハリウッド名優の登場を機に、解きほぐされて、駆け出していく。

片言の日米ハー
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朝が来る(2020年製作の映画)

4.0

家族、つくりたい。
この世界はこれほどまでに、ひかりにあふれている。目が眩み戸惑うほどに。陰りがでても、またきらめき射すときがくる。それを信じて薄暗い時間を過ごしていく。

光をあざやかに、優しく扱う
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アメリ(2001年製作の映画)

3.6

この世界は、多くのディテールでできている。
孤独の中で生きてきた女の子の身の周りの沢山の細やかな物語。

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

3.6

偏屈に実直につくりあげたこの部屋に、何処からともなく入ってきたあなた。彩られた平穏な世界。この安定を乱してもいい、あなたとならば。こんな日が来るとは思ってもみなかった。運命の人よ、額縁から私を連れ出し>>続きを読む

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)

4.2

ルーズベルトの顔が街にひしめくポスト大恐慌時代。二人は出会い、旅は道連れ、五人という絶妙なバランスは軽快に駆け上がる。その平衡が崩れるとき、1934年5月23日へのエンディングが始まる。
アンニュイな
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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017年製作の映画)

3.6

この国のある地方の町。そこまで届ける人がいて、そこから届けるべき事実がある。
お調子者のタクシードライバーが始めたお気楽道中。1980年、高まる学生運動もそっちのけ。王道の緩急が、物語を運んでいく。
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