ほぼ終始、朧げな輪郭。眩い光に包まれたレトロなフィルムの世界から抜け出してきたよう。故に、時折克明となる表情が際立つ。
規律良く動く兵隊を見つめる後ろ姿。いや、その心情は窺い知れない、顔が見えないから>>続きを読む
1939年、およそ75年前の内戦における敗者を、カラーと鮮やかな美術、装飾と共に、奴隷制も美化して描く。
馬は使い捨てるもの、奴隷は陽気で従順、もしくは喚くか、間抜けでヒステリックなもの。これからさら>>続きを読む
一級品の時代劇。
時代の狭間で十字に交わる憎と情。
原作からのこの切り離しは見事。昇華された別個の作品。
有村架純も描画とは異なる魅力を発揮。薄い眉により醸し出される雰囲気がまた効果的。
過去への回帰>>続きを読む
原作に縛られない大胆な造り替え。これでいい、これがいい、漫画の映画化に良くある束縛から逃れて、新たな魂を吹き込んだと言っていい。
弥彦の弱々しさもリアル。きちんと説明されないチラつく過去がなんと唆るこ>>続きを読む
絵画の連続。
音の重なりと効果。
アングル、間。
次はどんな絵画を見せてくれるのか、その音色は、ねじれは。
ストーリーはシンプル。大きな出来事は起こらないまま。
それでも惹きつける構成と展開。
毎週楽しみにしていたドラえもんと未来の発明品。わくわくするアイディアに夢と希望、少しの欲をのせて。
でも実は、のび太あってこその世界ということに気付かされる。ダメでも気に障っても、これが彼、そして僕た>>続きを読む
沈黙の世界。ただ黙々と。
波とリールの音だけが響く。
それ以降に発せられる言葉の空虚さが異様に際立つ。
そうした言葉に踊らされ、また用いている我々こそがこの世界の当事者。
貧しい子ども時代から上がっていく様はエディットピアフを思い起こさせるが、研ぎ澄まされて余計なものが落ちていくよう。
バルザン役Benoît Poelvoordeが憎らしさと豪胆さをコミカルに醸し出す。
照れと冷笑の入り交じる対象、ラブドール。茶化すことなく、技術と知識と向上心を携えた愚直な「職人」により、真っ直ぐ繋がれる。その先にある、生身の人間の瑞々しさ。
蒼井優の美しさに溜息が出る。まさにミュ>>続きを読む
嫉妬。
くだらない人生とか、若気の至りとか、長続きしないとか思いつつ、間違いなく「今」を生きている彼女たち彼らに、何処となく羨ましさを感じてしまう。
弾け飛ぶ笑顔の奥に、その先にあるものを探る旅。
なんだよ、こんな世界。見下ろす団地群から逃れて、青い空の下へ、緑の山の麓へ。
百万円。結局この経済に絡め取られながら。
大切なことは、交わっているようですれ違う。食卓でも歩道橋でも。
こんなところに扉なんかあったっけ。それに気づくかも人それぞれ。そこから一歩先に出てみたら。きっと待っているのは、これまでとは違う、新しい光景。
ぐるぐる。
壁に囲まれたこの世界。なかなか出られない。
渦巻き迸る想い。
さあ、それでももう一度始めから。
One, two, you know what to do.
過去をのぞき見していると、当事者たちが語りかけてくる、何が起こっているかを説明して。
欺瞞で塗りたぐられた金融の闇。それを暴き出し抜こうとするものたちも結局そちら側。低所得者層の上で繰り広げられるマネ>>続きを読む
この惑星は今この瞬間も壊滅に向かっている、乱伐し排出し、誤魔化し目を背けながら。それを別の脅威に置き換えて、SF仕立てで風刺的に表現。なるほど、意識の高い俳優が揃うわけだ。
偽善な日和見に抗うJenn>>続きを読む
このパンデミックに主役一人、視点一つはあり得ない。それを豪華キャストを適所に配置し、あえて的を絞らないことで表現。経路となりうる“接触”に気を向ける間とショットも巧妙。突然の冒頭は、不気味さと怖さを効>>続きを読む
あの頃。、という題名自体に含まれる突き放し感。そういう頃もあった、一過性のもの、と生き続ける。一方で、冷めた視線を浴びながらも、そうあるべきなのか、それ自体が生きる全てではだめなのか、人生ってなんやね>>続きを読む
古いものを愛でて、新しいものを創り出していく街。ぽっと恋の花が咲き、微かな香りを残していく。僕はこの世界の傍観者であり、主役。彩り豊かな話が語られていく、スクリーンには出なくとも。
下北沢に繰り出した>>続きを読む
現代のジェンダー的主張が色濃く織り交ぜられた時代劇風。現代英国の源流を成す史実とクイーン、体現すべく旬の女優二人。
歴史の教訓も、現代への示唆も、アート的表現も、どれも目指したくなる意気込みは分かる。
男みたいにならないと。
美しい英語を話せないと。
魔法なしで虐めて鍛えられる、努力版シンデレラ。
資本主義と能力主義礼賛の1960年代前半という時代の産物。
その佇まいで作品になるAudrey He>>続きを読む
狂気か正気か。信じる意味。
壁に掛けられた先代が見護るデンマークの農家。もしくは見張られているのか。掛時計が刻む流れに身を任せ、そして抗う。
限られたセットの細部に込められた意図。至極の演劇。
奇抜な設定にも関わらず、リトル・ミス・サンシャインを彷彿とさせる少女の瞳の輝きが、家族の成長物語に仕上げている。
“サンタを信じるすべての人に”と銘打たれているが、ビリーバーでないからこそ成り立つフ>>続きを読む
痛烈。当たり前と思ってしまっていたこの世界を、“疑問に思ったことすらなかった”事実を突きつけられ、激しく揺さぶられる。
日本では無理。性別の境界がぼやけつつあるフランスだからこそ、可能な交換。
“>>続きを読む
論文執筆に窮する哲学専攻の女子大学院生と、向かいに住むセレブの妻子持ち。これが軸。
その傍で、同棲人や指導教官の描写がやけに細かく、どう交差していくのかと、惹き込むストーリーの妙。
門脇麦のレトロな魅>>続きを読む
海原に漕ぎ出し、大地に一歩を踏み出す、とあるピルグリムたちの
再生の物語。
閉じ込められたダウン症少年、兄を失ったフィッシャーマン、戸惑う看護師、落ちぶれたプロレスラー。独りと独りが繋がり合っていく。
飛び跳ねるメキシカンビーンズのよう。行き交う時間軸、連続するタイムスリップとフラッシュバック。Orson Wellesに振り回されながらも貫いた脚本家の人生の一側面を、Orson Wellesの手法を>>続きを読む
主役二人の好演もさることながら、何よりの魅力は溢れ出るこの“時代”。
古き良き足場に異風の足音が響く時代。痛みを抱えて上を向く。
たけしの歌謡が1970年代に誘い、門脇麦と鈴木保奈美が哀愁漂うリアルを>>続きを読む
この世は音楽であふれている!私たちの想いを運んでくれる音楽。特に意味はなくても聞いて元気になる音楽。想いは溢れ書き下ろし、書き殴る。その内面に目を向ける彼と、目もくれない彼。みっともないが、様になるぶ>>続きを読む
教師から生徒へ、親から子へ、富む者から貧する者へ。「Pay forward 」はそのありきたりな流れを変える。
冒頭の二つの“疾走”に惹き込まれていく。物語を通じてた貫くのは、創作への情熱と、出版産業振興への想い。大衆的な地に足のついた設定と、それを支える松岡茉優が、「半沢化」を食い止める。
この作品が与えてくれるのは、濃厚な考える時間。世界の一側面を切り取った静かな時間。『工場の出口』の鼓動を受継ぐ、これこそ映画の原点。所謂ドキュメンタリーと呼ぶのも違う。
漆黒の囲われた世界を経て、外>>続きを読む
Undateable(非モテ)なフランシスが駆ける。転び、ぶつかり、怪訝な顔をされながら。立ち止まり、傍にそれて俯きながら、空を見上げながら。モノトーンだからこそ、彼女のカラフルな魅力が弾ける。
「マ>>続きを読む
罹患していない人々の狂乱。管理人夫婦の空気のみが穏やか。感染するのはウイルスだけじゃない。
あの“開戦宣言”から一年以内に笑いと皮肉、人間性に溢れた作品に仕上げたDany Boonは真の喜劇映画人。>>続きを読む
水面に映るは揺らぐ五本の光。追えど探せど掴みきれない。寄せ集められた五人の前科者。
気品すら漂う一服と煌く炎、転がる刺殺体、圧倒的な悪。不揃いを絶妙のバランスで配置した冒頭の身のこなしから心を鷲掴みに>>続きを読む
良質な小説を堪能しているような登場人物と展開、そして空気感。練り上げられたストーリーに合致した秀逸な映像技巧の成せる業。
生気の薄れていく白い肌と対照的に、溢れる愛と想いが輝かしい。象徴するかのような>>続きを読む
歌も良い、身のこなしも美しく、映像美に長け、冒頭からの流れるような構成も心地よい、まさにミュージカル。
語るように歌い、歌うように語る。
各キャラクターも良く立ち、特にAndrew Garfieldに>>続きを読む