囚人13号さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

ダム・マネー ウォール街を狙え!(2023年製作の映画)

3.6

何の予備知識もなくふつうに楽しめるし、キャプラ映画みたいな小市民の団結には一つ普遍性がある。
巨大資本に民主主義が勝利を収めるという古典的な図式がネット社会へ置き換えられ、膨大な情報量もミーム動画風に
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人でなしの女(1924年製作の映画)

3.8

迷ったけど一応こっちも登録しておく。従来のレルビエや彼に近いスタイルのガンス/デリュックら印象派ともまた違って、世界の芸術流行が収斂したような画面は結局表現主義に見えるかも。自動車事故の加速モンタージ>>続きを読む

人でなしの女/イニューメン(1986年製作の映画)

3.8

134分全長版。前半が死ぬほど冗長なのでカット版のがおもろい説あるが、次第に美術設計とモンタージュが調和し、文字通り映画が視覚芸術へ溶暗していく。
やはりガンスの影響も大いに受けつつ表現主義というより
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チャーリーズ・エンジェル フルスロットル(2003年製作の映画)

1.5

ヌメついた動きがプレステ2みたいで気持ち悪い。CGとはいえ何でもない会話程度でもこの質感のシーンが幾つかあって、マジで二人くらいバーチャル説あるぞこれ。

少林サッカーみたいな徹底した脳筋映画を撮れる
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脅迫者(1951年製作の映画)

4.5

回想シーン中へ更に別の回想が入ってくる入れ込み構造も散らかりすぎず、断片的な証言が事件の本質を明かして最後は現在形でサスペンスが展開される模範。組織メンバーが潜んでた山小屋の湿気なんかはウォルシュっぽ>>続きを読む

罪と悪(2024年製作の映画)

3.5

とにかく全部見せようとする、描写しすぎる近代の邦画潮流がキツいしヤクザとかフラッシュバックとか要らん部分が多すぎるんだけど、プロットがかなり良いと思う。性被害と友情。

田舎道の素晴らしい質感は土地が
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サブマリン爆撃隊(1938年製作の映画)

3.7

フォードは軍隊を西部の土壌以外にも上空/海上とあらゆる場へ配置してきたが、こと海軍となると狭隘な空間に男どもの血潮が停滞して息苦しい。

副官くらいの初老男(J・ファレル・マクドナルド)が権力に見合っ
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国務省の密使(1952年製作の映画)

4.2

機密文書を守るスパイ物で、敵対関係がとっ散らかってるけどかなり面白い。
列車の扱いがターナーぽく、決定的瞬間が停電のうちに起こるため真実が闇へ宙吊りにされるサスペンスはラストでタイロン・パワーが停電
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アムステルダム・コネクション(1978年製作の映画)

2.0

ロッキーのテーマとストップモーションで終劇させるアジアの剽窃文化はカンフー映画にまで及んでいたという史実。リー亡き香港電影の切実な不安漏れまくりでキッツいぞ。
売春婦の駄乳<金的蹴られて悶絶するヤン・
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(1926年製作の映画)

3.7

高画質で観るとまた印象変わると思うけど、人々が行進していく足元を捉えたショットで泥濘に流れる川/水溜まりの異様な煌めきが忘れ難い。等方向へ行進する労働者連の団結の証「赤い旗」が手渡しで先頭へ回っていく>>続きを読む

映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~(2015年製作の映画)

4.8

多分唯一観てるショーン映画だけど、なかなか再見する機会がなくって。

当時小学生だったんで記憶が曖昧だが、親に隠れてめちゃくちゃ泣いたことだけは鮮明に覚えてる。牧場主を探して町にやって来るも柵の外界に
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サタンタンゴ(1994年製作の映画)

1.5

カットが割れないことを長回しと騙り、醜く肥大した尺と対峙し得たという達成感から「すごい映画だった」と錯覚する。
ただ長いだけ、長い≠叙事詩≠素晴らしいと欺瞞を見分けられるよう。反商業を謳った自慰行為を
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暗黒への転落(1949年製作の映画)

4.0

社会の頽廃を叫ぶボギーの目が潤んでて泣きそうになった。もはや疑いようのない反国家映画で、警察組織の欺瞞と誘導尋問を撃つべく国外追放覚悟で証言台に立つ男たちも法の前に力尽きる。
『追われる男』然り男二人
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崖の上のポニョ(2008年製作の映画)

4.0

ジブリは数年間隔を開けると全く違う映画になるので、こんなグロテスクだったのかと気持ちを新たにする。人間へ進化途中のポニョの半魚人的なビジュアルは(一番近いのがオオトリ様)大量生産型。
ある意味クライマ
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風立ちぬ(2013年製作の映画)

4.0

空への望郷というか、より具体的には「浮遊への欲望」とも言うべき最もジブリ的な主題が一つ神話性を失ったとしか思えない点で、かなり遺作めいてたかなと。
そこには飛行石やホウキで飛ぶことの出来ない人々の現実
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ウォーキング・ヒルズの黄金伝説(1949年製作の映画)

4.3

デスバレーで撮影されたクライマックスの大砂塵、視界が遮られる中での対決は「早撃ち」よりも敵との距離間隔を把握することで決着が付けられる50年代西部劇を予告している(本作は現代劇なんだけど)。
スコップ
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.6

アナ・トレント然りリュミエールのフリップブック然り、決定的なのは映画館をミツバチのささやきではなくニューシネマパラダイスへ、「発見」から「再見」の空間とする年月。スタイル崩してまで自語りに入ってきたエ>>続きを読む

インディアン渓谷(1946年製作の映画)

4.0

流行らそうとしすぎてる主題曲も良かった。今回も町を共同体として描くターナー、しかし一人の疎外者が話の通じない相手を怒らせたために『星を持つ男』みたく争わないという選択肢は消える。
群衆を順にフォーカス
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バッド・ティーチャー(2011年製作の映画)

1.5

キャメロンがいい感じに熟してる。熟キャメ。婚期逃し女教師のまつざか先生みたいな熟ディアス最悪すぎて笑う。低俗な学園モノなのに監督より年上の三十路が色々無理してて何か興奮した(多分褒めてない)。
男性便
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かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.7

途中からだったけど録画してたんで冒頭からそこまで見て補完。劇伴の過剰さ以外は原作が好きなのでわりと擁護派です。
まんまとジャン・コクトーやん!とか言って恥ずかしくなったが、何となく居心地悪いのは鏡の幽
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十字架の男(1943年製作の映画)

4.3

こちらは凄い傑作で、反戦映画っぽい構成だった。戦場神父(兼医師)という神様みたいな主人公とある兵士の信仰心の復活。詩的な言い回しで罵倒する女は流石に笑ったけど…。

ロッセリーニにおける教会や群衆は寧
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ギリシャからの帰還(1941年製作の映画)

3.5

筋トレしながら見たので前半あんま記憶なし。空軍映画なのに称揚要素は控えめ、空中戦のモンタージュなんかは明らかにアメリカを模倣してる慎ましさが好感触。
ただ帰還した主人公が迎えられるラストカットの仰角然
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ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.5

音、光が立ち上がってくる至高。最強のミュージカル映画でもあると思う。即興的に音楽と共鳴し、ジーン・ケリーみたくフロアスタンドと戯れるデヴィッド・バーン!カメラによって座席が神の視点となり、すべての光源>>続きを読む

気高き荒野(1938年製作の映画)

4.5

超傑作。成人後も少年時代と大して何も変わっていない安堵感を見せつつ医療への傾倒が父(神父)との親子関係を引き裂く。
田舎道と馬の叙情性も流石クラレンス・ブラウンであるが、『町の人気者』然り悪党の出てこ
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ネクロマンティック1[完全版](1987年製作の映画)

3.7

メイクとか気になってスローで見てたら3ヶ月かかりましたねぇ(怠惰なだけ)。うさちゃん解体はメンツェルのナチュラル狂気が鮮烈すぎてトラウマが蘇ったが、最後にアーティスティックに回収されてて痺れる。

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ドラゴンへの道(1972年製作の映画)

3.9

こういうのがいい。やはり何でもない話だが、格闘にイタリア風土を定着させてしまう出鱈目なロケ感性はその後のジャッキー映画にまで影響してるはず。
格闘に組み込まれたある種ミュージカル的なモーションが、独立
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ドラゴン怒りの鉄拳(1972年製作の映画)

3.3

中国をほぼ植民地化してる日本人への復讐。大人数に囲まれた横構図は東映の殺陣を模倣してるとしか思えないんだけど、ヌンチャクぶん回し/対日本刀/截拳道の弟子でもあるロバート・ベイカー(サスペンダー巨人)と>>続きを読む

ドラゴン危機一発(1971年製作の映画)

3.0

麻薬組織に単独立ち向かい、ナイフグサグサするリーさん初主演作。指に巻いてる包帯カッコよすぎて(握力強すぎてコップを割った破片が刺さったらしい)厨二のとき真似した。
まー監督含め停滞期なのでチープ&つま
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燃えよドラゴン(1973年製作の映画)

2.0

やっぱブルース・リーもハリウッドに潰された犠牲者の一人じゃないか。数的不利とスペクタクルを履き違えたまま未だ欺瞞の歴史は続く

星のない男(1955年製作の映画)

3.7

こっちはわりかし良さげ。とはいえヒロイン含め人物像がブレブレなんで牧場娘も俺は大嫌いだし、話に説得力がねぇ…。
珍しくカーク・ダグラスだけが良くて、肉体労働と資本主義の溝がここにも影響を及ぼしていたと
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ビリー・ザ・キッド(1930年製作の映画)

2.5

軽々しい方の外れヴィダー。距離感バグった篭城戦を延々と見せるなと思ったらビアリー保安官の焼く肉の匂いにつられ、簡単に捕獲されちゃう腹ぺこキッド。でもラストだけめっちゃ良かったはず。あそこだけ再見候補。

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.7

世間ほど熱狂できたかは別として、歩いてた人間が構図の真ん中で立ち止まる若干の嘘くささから喜劇に傾くのはカウリスマキ的かなと。

食卓とラストの切り返しなんて立ち位置(目線)が変わってるだけで殆どカタロ
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暗黒街の女(1958年製作の映画)

3.9

50年代特有のテンションもギャングに掻き消され、ダンスシーンだけがミュージカル的な縦横の動線設計と多幸感で逆に浮いてる。沸点がバカになってるリー・J・コッブがデ・ニーロみたいな野蛮さで最高

薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.7

コマ落としやらメタやら一通りやりたいことやってる感じが良い。飢餓海峡みたいなコントラスト反転やフラッシュカット反復は定石だけど、本作は一貫性を持ってるので逆にそれだけで面白くなるだろうと。

アンダル
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人生の幻影(1984年製作の映画)

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シュミットによるサークへのインタビュー。曰くハッピーエンドとは悲劇の曲解であり、閉じられ完結した円環の中で死からひたすら逃げ続け「There's Always Tomorrow」(「明日は必ず来る」は>>続きを読む

北野武 神出鬼没(1999年製作の映画)

4.0

まだ顔面麻痺の痕生々しい武と毛量の多かった蓮實重彦の空中戦。暴力の原体験や自殺願望といった本質へ切り込みつつ、自らを臆病者と自嘲気味に語る武も言葉とは裏腹に北野映画の男と同じ目をしてるじゃないか。タケ>>続きを読む