囚人13号さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

ウォレスとグルミット/チーズ・ホリデー(1989年製作の映画)

4.0

導火線、殴打のサスペンスとカット割りがモロに活劇。荒唐無稽としか思えない速度の宇宙旅行、作動/静止の対比も凄いし、またいつ止まってしまうかも分からないロボットを幸福なまま見送らせる優しさが最高。
ビデ
>>続きを読む

ダニエル・シュミットのKAZUO OHNO(1995年製作の映画)

-

退廃美の濃縮還元、鏡の幽玄性と官能的な能動スローモーション(言いたいだけ)。明日あたり行こうと思ってるオッティンガー特集の予告編とかなり似通ってて驚く。スタッフロールのShinji Aoyamaが感動>>続きを読む

ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.0

苛烈な主題へ同情的に点を入れる性分は持ち合わせていないし構造も傑出してるとは思えないが、外界にはひたすら閉ざされてきた歴史を進行形で暴く言葉の強度にやられる。

脱北成功者はようやくカメラと同じ主観的
>>続きを読む

フリービーとビーン/大乱戦(1974年製作の映画)

3.5

自動車は破壊されるために並び、人間は突き飛ばされるために歩いている鬼畜映画。 刑事ものの過激さを突き詰めた結果、警察手帳一つで器物損壊が帳消しになってしまう爽快さも映画だから許されるわけで。
バイクが
>>続きを読む

猫とカナリヤ(1927年製作の映画)

3.8

表現主義の黄昏。劇伴も表情もずっと過剰な屋敷ホラーで、殆ど室内劇だが巧みな美術設計と暗すぎる照明全てが心理演出へ還元される。メイクも絶妙にキモい。
背後の本棚が開き、何も気付いてない女性に向かって腕が
>>続きを読む

最後の酋長(1953年製作の映画)

3.7

モヒカン族との友情も虚しく、クソ司令官によって奇襲を命じられてしまうロック・ハドソン少尉。人種的な横の繋がりも軍隊という縦社会の前には崩れ落ち、ラストの出鱈目ワンミニッツレスキュー(?)も本質的な問題>>続きを読む

最後の人(1924年製作の映画)

4.5

権威社会の脆弱さが今にもぶっ倒れそうなヤニングスとして表象され、アイデンティティを剥奪された老人は制服に生気を吸い取られる。

字幕の不要性に加え噂(声)の伝達を表す口元/耳元への接写は、字幕の省略と
>>続きを読む

ジャンパー(2008年製作の映画)

2.5

羽毛ではなく瞬間移動、ちゃんと活劇やってるはずなのにマーベルのテンプレみたいな能力を使いこなしちゃう人間的な軽さがあんまり。カットも軽薄で「運動」に結実しないし、登場する土地が悉く恣意的で萎える。終盤>>続きを読む

偉大なるアンバーソン家の人々(1942年製作の映画)

4.5

遊戯の口実でしかなかった映画へ次第に傾倒していくウェルズに比例し、決して資本に結びつくことのない才能を持て余し始めるRKO。
再び金本主義/独裁者の没落という主題を取り上げつつ自分は裏方に回ってより演
>>続きを読む

市民ケーン(1941年製作の映画)

4.0

再見してないけど登録。これは絶対Blu-rayで観ないとだめで、500円DVDじゃ偽ニュースフィルムの完成度が分からない。

技法面の分析や裏話はバザンや「偽自伝」を読めばいいし、ディープフォーカスも
>>続きを読む

マジェスティック(1974年製作の映画)

4.0

スイカブチ切れおじさんというイメージしかなかったが再見してみてその思いを新たにしつつ、アルドリッチぽさも感じる。プライドとスイカに命を賭けた男の対決。個が複数と対決するうえでは距離をとるより、視界から>>続きを読む

ファニー・ページ(2022年製作の映画)

3.6

真っ当に生きることの儘ならなさについて手を替え品を替えやってるのがA24なんだろうが、セクシャルに次ぐパッケージとしてのティーンはある程度面白いし、今回はメッセージ性どころか何も残らない不毛が逆に良い>>続きを読む

ドッグヴィル(2003年製作の映画)

3.5

「バカには見えない家」みたいな観客を舐め腐ったアイデアは面白いんだけど流石に長すぎるよな…。改めてトリアーは傑作を撮るのに再見したくならない稀有な作家と確信。

逃亡者を匿う親切な町という包茎を割礼し
>>続きを読む

サンタマリア特命隊(1972年製作の映画)

3.5

尺以外はそこまで悪くないかと。神父コスのミッチャムが狂ったようにマシンガンぶっ放し、聖書に銃を忍ばせ十字架ナイフを投げるというだけで白飯三杯いけますが、何となくタランティーノが好きそうだなとも。

>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.0

やーキモキモキモ気持ち悪い。『骨』との落差も効いてて、意図的に不細工に造られたであろう粘土・落書きがずっと不穏。

全てワンカットに見えるのはファンタスマゴリア的な強度含めクレイアニメの特権で、誰の主
>>続きを読む

(2021年製作の映画)

4.5

冒頭の床破壊から1901年クオリティじゃなかったが、ストップモーションのグロテスクを草創期の稚拙さと結びつけたアイデア勝利。全てが的確この上ない。
ノイズ音と寸断を繰り返す音響が一番リアルだったが、ク
>>続きを読む

壁の中に誰かがいる(1991年製作の映画)

4.0

お屋敷スリラー。ショッカーの他はエルム街とスクリームしか観れてないが、やはりクレイヴンはずっと空間超越と物理的距離の拮抗をやりつつ、隙間にSFをぶち込んでくる人なのでは。

扉から通気口へ、密室にも必
>>続きを読む

都会の女(1930年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

『サンライズ』の姉妹編、奇跡の再演という奇跡。電報を読んでからのズームアウト、『サンライズ』田舎道のワンカット、『最後の人』に見られる耳元への接写など技法面の革新性は計り知れないが、それ以上に重要なの>>続きを読む

スターマン/愛・宇宙はるかに(1984年製作の映画)

5.0

漂白を終えたスターチャイルドの如く、外宇宙からやって来た姿の模倣犯によって進行形たる映画は写真/ホームビデオといった過去のみを映す装置群に勝利する。鹿の蘇生とラストの切り返しはSF映画の到達点だし、土>>続きを読む

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)

3.5

幻の犬に幻のノミを飛ばされ、目眩で床が反り上がり巨大昆虫が襲って来るも全てが自己完結してる精神崩壊。洗脳系スリラーかと思いきや根底にあるのは搾取社会への警鐘でした。

とにかく幻覚も絶叫も「映画」の五
>>続きを読む

ニンフォマニアック Vol.1 ディレクターズカット完全版(2013年製作の映画)

3.7

まさかの回想形式で始まる色情狂一代記、語り手と聞き手の似非アンジャッシュ。

ファム・ファタールなんだが、親の遺体を前に無意識に性的興奮を覚えてしまうこの世でまだ名前の付いてない現象や、カメラ位置で
>>続きを読む

荒野の女たち(1965年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

蓮實重彦と三宅唱の共同作をネット記事で知り、東京を羨んでいたら知り合いに貸していた本作が2・3年振りに手元へ帰還。
その間フォード論が刊行され、特集が組まれて自分も一度だけ『香も高きケンタッキー』『肉
>>続きを読む

希望/テルエルの山々(1939年製作の映画)

4.0

バザンが『市民ケーン』と並置し絶賛していたアンドレ・マルロー唯一の映画監督作。
『鉄路の闘い』より全然面白く、何なら内戦を片側の視点から捉えた映画では最高峰とさえ。恐らく映画監督ではないからこそ感覚的
>>続きを読む

12人の怒れる男 評決の行方(1997年製作の映画)

3.5

再見。ポリコレに傾きかけてるリメイクは役割も色々異なり、最後に涙を流すジャック・レモンなど大分優しくなってる印象。

オリジナル版は英語勉強のため毎日観てた時期があるのでほぼ全カット頭に入ってるが、今
>>続きを読む

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)

4.0

これコメディなのかと思いつつ、やはり自立した人物の精神的な孤独ともどかしさを描くライカート。
色の不一致性が顕著、鳩も安堵感メタファーらしい白ではなく汚い大量生産型で、創作物が二次元のラフスケッチから
>>続きを読む

ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

3.5

PERFECT DAYSから話題になってもよさそうな平山映画。

確かにゴダールすぎるが、テクストと行為の不一致みたいな事を延々と引き伸ばしてるのは低予算で安易な"物語"を撮るということをしなかった英
>>続きを読む

ザ・ヒューマンズ(2021年製作の映画)

3.5

緊張と轟音は緩和を一切生むことなく、体型からして怠惰な家庭の崩壊が父親/小汚いアパートと共鳴しているミニマルな『キングダム』。

まぁポリコレと不穏な空間設計を煮詰めてメッセージ性を掻き消し、その余白
>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.3

30年ほど時代に逆行した過剰な劇伴とスローモーションのスペクタクル、大資本にものを言わせてそれなりに仕上げてしまう映画界のナポレオン。

画面の奥行きが無限に拡張していくエキストラシーンはホークス『ピ
>>続きを読む

ラスト・ラン/殺しの一匹狼(1971年製作の映画)

4.8

パトカーでもタクシーでもない"自動車"は悪党の特権的な車両であり、若い男女の逃避行に掻き消される老人の復帰戦は涙も誘わないほど荒廃している。俯瞰ワンカットが贅沢なカーチェイスも、作風から逸脱したスペク>>続きを読む

お早よう(1959年製作の映画)

4.5

新年!おめでとう!ございます!

初見時は同情すべきというか社会的に辟易した人間を申し訳程度に配置した、何か浅薄な映画と決めつけていた事をこの場で撤回します。マジおもろいっす。
子供たちが挨拶という社
>>続きを読む

ザ・デッド/「ダブリン市民」より(1987年製作の映画)

4.0

無抑揚な語り口では隠蔽しきれない死の香り漂う遺作。恒例のホームパーティに招待された人々が楽しむふりをするだけの室内劇なのに、一度たりとも視線が合わない恐怖というか、互いの存在を認識していないような狂気>>続きを読む

ロイドのスピーディー(1928年製作の映画)

4.0

事態は常に最悪の方向へ転がっていく。大恐慌前夜の資料価値もありつつテーマパークという舞台は、チャップリンやキートンも撮ってるアクションの宝庫なので即物センス王が外すはずもなく。サイレント喜劇の天敵であ>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.1

更新/省略されていく日常の反芻、木漏れ日映画。

ヴェンダースはある時期まで時系列順に追ってたが、今作を観て直感したのは在りし日のロビー・ミューラーを想起させること。
禅やら小津的(平山という名前)と
>>続きを読む

男達の別れ98.12.28@赤坂BLITZ(2005年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

昭和末から20世紀平成を駆け抜けた佐藤さんフィッシュマンズには遂に出会うことなく、生ライブはおろか彼の夭折にすら間に合わなかった21世紀に生を受けた者として何か語る権利も性分も持ち合わせていないし、地>>続きを読む

有頂天時代(1936年製作の映画)

4.5

いかにもアメリカ好みなストーリーで、超人的スキルを隠してロジャースのダンスレッスンを受けるアステア、そして実力発揮した瞬間ロジャースのメスが…惚れ顔のアップで恋が始まるぜと高らかに宣言するキャメラ。 >>続きを読む

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)

5.0

年一で再見してます。ハリウッドミュージカルで最強なのはこれか『踊る大紐育』。
序盤のお祭り装置からずっと最高で、役柄とは裏腹に戦前から移りゆくエンタテインメントの潮流を耐えてきた男の色気というか、アス
>>続きを読む