未島夏さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)

2.4

2016年邦画における良作の一本と謳われるが、個人的には不快感が前面に残る内容。

濱田岳とムロツヨシというコメディには御用達の役者を揃えながら、必要以上にシュールにする為サイコな後半への急転が弱い。
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マダム・フローレンス! 夢見るふたり(2016年製作の映画)

3.4

ある説明をピアノの伴奏に乗せつつ語りとして成立させるシーンや、人物の表情によるニュアンスの伝え方は実に丁寧。

しかし人物の心理は右往左往して感情移入の方向が定まらぬまま。

着地点は悪くないが、消化
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ミュージアム(2016年製作の映画)

3.5

台詞による状況説明が若干鼻につきながらも、刑事沢村をどっしりと腰を据えて映すカメラワークには小栗旬のスター映画としての風格がある。

妻夫木聡の鬼気(嬉々)とした演技は勿論だが、残虐性や本能的な衝動に
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.3

「空想の娯楽」を彩るアニメーション独自の演出が、戦争という「現実の爪痕」を克明に描く中へ完璧に作用していく。

人物とその日常にある愛らしさを追求して描くからこそ、それを壊す戦火の描写が残酷となり観客
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デスノート Light up the NEW world(2016年製作の映画)

3.5

前作の頭脳戦に刷り込まれた登場人物の尊い感情が、今作の心理パズルの核心へと行き着く。

これまで並走してきた二つの正義が遂に混じり合うその姿は続編として感慨。

エンドロール後のラストカットは、監督の
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何者(2016年製作の映画)

3.8

SNSは短文でいつでも自らの主張を自己完結出来てしまう。
直接の意思疎通も無く他者を一部の要素で判断し、自分こそ正しいと陶酔する。

そんな蔑みと承認欲求を覗き、そして覗かれた時の戦慄や、自分の愚かさ
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永い言い訳(2016年製作の映画)

4.3

自己愛と自己嫌悪の狭間で自己本位に他者と接する主人公。
その報いとして他者から愛されぬと気付いた時の、放り出された様な掴めない孤独。

愛を置き忘れた中で出会う「愛の結晶」と謳われる子供の童心に、主人
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淵に立つ(2016年製作の映画)

4.3

家族とは所詮、性的欲求から生まれた他人同士に過ぎず互いを知るなど不可能だと、偽りの日常を描く中へ叩きつける。

それは何食わぬ顔で恋をして人を愛し、日々を営む人々へ、自らの孤独を誤魔化す為だけではなく
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グッドモーニングショー(2016年製作の映画)

3.0

テレビの惰性に疑問を投げかけながら結局否定せず、消化し切らぬまま掴み所のない台詞で締め括ってしまう。

立て籠り現場に潜入するまでの行動に沿った動機の移行が感動を覚える程完璧だっただけに、提示したテー
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怒り(2016年製作の映画)

3.8

この「怒り」という感情の呼称が、人物それぞれの想いを全反射するプリズムが如く生々しく光る。

他者を信じ切れず疑った自分へ。
大切な人を守れなかった自分へ。
裏切り、失望、傍観、蔑みへ。
やり場を失い
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亜人 第3部「衝戟」(2016年製作の映画)

3.8

アニメーションによるアクション、その臨界点の一つと言える快作。
それを大きく演出する「音」の存在感は、映画であるべき姿として観客の五感を抉る。

シナリオは驚く程濃密で、情報過多スレスレ。
しかし、統
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映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.2

障がい者を肯定的な人物設計のみで描く隔たりを、集団に属する等身大の少女として同級生たちが内面的に接する事で取り払う。

将也と硝子の死へ向かう想いの共有が互いを繋ぎ落ち合う夜の橋でのシーンは勿論、それ
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レッドタートル ある島の物語(2016年製作の映画)

3.6

自然と人間の位置関係を気候や食物連鎖への徹底したフォーカスでありのままに提示する。
台詞が無いことは、自然に言葉など通じぬ事実により腑に落ちる。

極限状態の中、人間がもたらす想像力が生み出す生命への
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水の中の八月(1995年製作の映画)

3.8

終始漂う静寂の感覚。
稀に顔を覗かせる暴力性も、すぐに漂い消えていく。

世界の救出へ誘われる少女の運命には、主人公の抗いもどこか力無く、語られるまま自然と因果の手中へ溢れ落ちる。
それが故にラストシ
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きょうのできごと a day on the planet(2003年製作の映画)

4.7

それぞれが抱える蟠り。
ささやかな琴線で繋がり続ける人間関係。
日常にヒリヒリと疼く。
想い悩む人々の「真上」を通り過ぎて、今日がまたやって来る。

大好きな映画の一つ。

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(2014年製作の映画)

3.9

冒険活劇ながらも起伏以上に静けさへ重心を取り、家族を再び包んでいく優しく壮大なラストが心地の良い感動を残す。

動物とのコミュニケーションに対する信頼や、意外と反発心の強いシアーシャのキャラクターは満
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君の名は。(2016年製作の映画)

4.5

営みの雑踏と運命に消え行く記憶を、涙腺から伸び行く糸で手繰り寄せ掴もうと全力で駆ける姿が、心の奥底を潜在的に打つ。
身体の入れ替わりだけが理由ではない焼き付く様な記憶の断片が、忘却に伏す魂を突き動かし
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探偵物語(1983年製作の映画)

3.6

直美の行動理由を初め、ストーリーライン自体も非常に衝動的な映画。

その無茶苦茶で身軽な衝動的エネルギーを探偵の秀一が持つ孤独感が全て許容していくのが何とも心地良く、しかしラストは切なく。

犬神家の一族(1976年製作の映画)

3.7

食い気味の編集テンポに目まぐるしいカメラワークが、儚くも執念深き人間模様を抉り出す。

金田一の飾らぬ振る舞いに緩やかな気持ちになるが、最後は腕利きの探偵としての存在感を持って堂々括って見せる。

雲のむこう、約束の場所(2004年製作の映画)

3.7

約束の場所へと滑空するヴェラシーラに乗せた浩紀と拓也の想いとは対照的に、忘却により不時着する佐由理の想い。
溢れ落ちるその一瞬、寂寞とした想いが込み上げる。

互いの夢の交錯や忘却への到達には、カタル
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ほしのこえ(2002年製作の映画)

3.5

広がる二人の「距離」を段階的に、年号や日付の提示を持って刻々と辛辣な程に描いていく。

だからこそ、二人のモノローグが重なる瞬間に胸を打たずには居られない。
あまりに哀しいカタルシス。

彼女と彼女の猫 -Their standing points-(1999年製作の映画)

3.3

繊細な心理、情景の描写に溶け込むデフォルメされた猫という緩急が良い。

「吾輩は猫である」の視点的エッセンスを受け継ぎ、「だれかのまなざし」やリメイク作である「彼女と彼女の猫 -Everything
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シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

4.3

圧巻なる娯楽映画。
ただし、娯楽要素の弊害になり得る「犠牲」を厭わず剥き出し、「虚構」であるゴジラに立場を同じとせず日本という「現実」を極限まで対峙させる未曾有の娯楽映画。
正しくコピー通り、「現実-
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トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015年製作の映画)

3.7

「面白い」という白旗をハリウッドに無意識ながらも振らせた脚本家の戦記。
普遍とした家族、友人への愛情と、物書きとしての狂気が交錯する中で次々と名作が生み出されていく。

名作執筆の具体的な過程はやはり
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ギブリーズ episode2(2002年製作の映画)

3.4

やはり激辛カレーの印象が強い。
僕らが空を飛ぶには戦闘機よりも激辛カレーだとジブリは仰っている。ギブリだけど。

改めて見返すと初恋のノスタルジーに不意をつかれるが、各エピソードごとにやや前衛的。

アマデウス ディレクターズ・カット(2002年製作の映画)

4.1

「才能」が生み出す不条理を憎悪する心理への見晴らしの良さにまず唸る。

その憎悪がモーツァルトへの観察を深め、結果その才能を誰よりも理解してしまうサリエリの皮肉な苦悩は、ラストの二人の対峙、会話から成
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時をかける少女(1983年製作の映画)

3.7

記憶が持つ拭えぬ引力を見せつけながらのこのラストは感慨深い。

別れ際の「忘れない」は、怖い程力強くその瞬間を噛みしめ、明日を夢見ている。
この忘却への執念が、記憶に残らずとも心に潜在している様子が何
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セトウツミ(2016年製作の映画)

3.7

実に他愛ない下らなさが、会話の距離感を身近に感じさせ笑える。

コント的尺寸で落とし所を的確に捉え、緩やかな流れに堂々と身を任せつつも物語の主張の輪郭を示し出す。

内海の回想による独白と台詞が、映画
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隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)

3.8

人間臭いコミカルさに満ちた百姓二人の危うい軽快さに笑い見ていたが、この二人いつまで経っても成長しない。

憎めない二人を醜さの象徴の一つとして見せながら終わるかと思ったラスト、してやられた。

三船敏
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帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)

3.9

映画としてのジャーナリズムに沸き立つ凄まじい映画だった。

コメディながらもドキュメンタリータッチとして描いているが、内包する実情はドキュメントそのもの。
「ヒトラーのソックリさん」というフィクション
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TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ(2015年製作の映画)

3.8

「地獄」に対する因果と価値観を、ぶっ飛んだコメディのタッチを邪魔せずさり気なく提示するラストがとても気持ち良い。

ドラマの成立に対する気遣いがやや大袈裟だが大いに笑えて終始満足。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年製作の映画)

4.2

ラブコメディという前提を失わずも逆手に取るような、静観かつ異様な印象的カットの連続。
それらがエッシャーへの意識やカメラワーク自体の大胆な起伏によって鮮烈に複雑な意味を孕みながら雪崩れ込む。

監督の
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ローマの休日(1953年製作の映画)

3.9

一人の王女が一人の人間として開放され等身大の素顔を見せる姿は、昨今の作品にも見られるヒロイン像に大きく重なる。

ラストシーン、アンの王女としての帰還と記者団の中ジョーと見つめ合う瞬間の対比は勿論、去
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ガンジス河でバタフライ(2007年製作の映画)

3.6

インド爆発。ハチャメチャ痛快ロードムービー。
言いたいだけやりたいだけ感満載のセリフやギャグを間髪入れず放ち続けるインド人たちに流されるまま、考える暇を一切与えない怒涛の展開にてること視聴者が揉みくち
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スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)

4.0

紙一重の日々を互いに生きる仲間との死体探しの旅は、疲労、鬱屈、葛藤、共感、興奮、恐怖、歓喜と繰り返す中で、膨発しそうな想いを友へと打ち明ける一瞬の一つ一つになっていく。

旅の終わりまでの出来事は、彼
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