ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

西暦2015年(2015年製作の映画)

3.6

老人が大量のフィルムに囲まれている画って良いな。互いが互いの歴史を語っているようで。
ドラムの練習をしている場所は録音スタジオだろうか。爺さんが補聴器を切るとドラムの音も消える。
ラストの字幕によると
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映像(2010年製作の映画)

3.7

本作の撮られた80年前の「スヴァネティの塩」を見た後に併映で観賞したので、カラーで映し出される現在のスヴァネティに不思議な気持ちになった。塔状の建築物は「スヴァネティの塩」に映っていたものと同一のもの>>続きを読む

スヴァネティの塩(1930年製作の映画)

4.0

素早いカットバックの繰り返しによる映像スタイルは、カラトーゾフが「怒りのキューバ」で見せた圧倒的オリジナリティというよりは、まだソヴィエト・モンタージュ派の一角といった印象。逆光によりシルエットと化し>>続きを読む

田園詩(1976年製作の映画)

3.4

初イオセリアーニだったが、味付け0素材の味一発勝負過ぎて正直退屈してしまった。まあカラーの作品も見てみよう。
本作は唯一の彩りが楽器の音色となるが、ドキュメンタリータッチの本作では、四重奏の若者たちを
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モスクワは涙を信じない(1979年製作の映画)

3.7

82年公開の映画だけど、シーンによってはフィルムが結構赤く褪色していた。カラーフィルムは劣化が早いんだなあ。まあ結局特に問題なく見られる水準だったけど、映画館はフィルムの状態も告知してくれたりすると嬉>>続きを読む

誓いの休暇(1959年製作の映画)

3.8

チュフライは「人生は素晴らしい」「君たちのことは忘れない」「女狙撃兵マリュートカ」と見てきたが、何故か順序が逆になって一番の代表作である本作を遂に見た。これまでは正直微妙な監督だと思っていたが、やはり>>続きを読む

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年製作の映画)

3.9

自分が未来に来たことについて、ジェニファーの飲み込みが良すぎて面白いけど、娯楽映画ならダラダラ説明しないのもありだよな。
未来のイメージを初めて大々的に見せる広場のシーンは、もっと長く隅々まで見たいと
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女狙撃兵マリュートカ(1956年製作の映画)

3.6

チュフライは、「人生は素晴らしい」「君たちのことは忘れない」はイマイチ乗れなかったのだが、それらと比べて砂漠や海辺を舞台とした映像に詩情があるのは良かった。まあやはり独自性みたいなものはない極々標準的>>続きを読む

炎628(1985年製作の映画)

4.3

地獄の戦争映画として悪名高い本作をようやく見れたが、やはり終映後は体がずっしりと重い疲労感に包まれた。
エレム・クリモフは「ロマノフ王朝の最期」がテンポが悪くてイマイチだったんだけど、本作もテンポとい
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ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険(1924年製作の映画)

3.7

完全サイレント上映
主人公が読む雑誌の「典型的なボリシェヴィキ」という記事の野蛮なロシア人の雑なイメージ。その雑誌を笑い、彼のステレオタイプにつけ込む悪党たちのストーリーなのだが、所構わず撃ちまくるカ
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バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年製作の映画)

4.9

コロナ騒動で楽しみにしていたライブが中止になって萎えていたが、テンションが完全にプラスになった久々の再見。テレビで見た時も傑作だとは思ったが、今回劇場で見返してみてここまでとは...と驚いた。午前10>>続きを読む

メッセンジャー・ボーイ(1986年製作の映画)

3.6

電子音楽に合わせたロボットダンスの描写は、ソ連にも当然訪れた80年代を思わせるが、背景に広大な自然が広がっており、パンツ一丁で踊る姿はチグハグさも感じさせる。時折電子音楽の劇伴が流れるが、その安っぽい>>続きを読む

ルカじいさんと苗木(1973年製作の映画)

3.7

駅の切符売り場でスピーカーに話しかける描写。道を横断するお婆さんを見つけると車を傘で静止しながら同伴する。ルカじいさんがどれだけの期間街に降りず文化に触れずにいたか、その行動様式のズレと人情を的確かつ>>続きを読む

チャパーエフ(1934年製作の映画)

3.4

特に前半は、この時代の作品にしては音楽の使用がかなり謙抑的なのだが、結局環境音も拾わないのに何故ストロングスタイルにしたんだろうか...。会話の音だけが響いているシーンが多くて、ラジオドラマか何かかと>>続きを読む

ピクニック(1936年製作の映画)

3.6

窓を開けると窓枠の額縁に収まった二人の女がブランコに乗っている。美しい出会いの瞬間。
ブランコにカメラを設置して人物と共に揺れる描写は、先行する「つばさ」「モルグ街の殺人」でも見られたが、シルヴィア・
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かくも長き不在(1960年製作の映画)

3.7

ホームレスが横切った時に何かに気づいた瞬間を始めとして、アリダ・ヴァリの瞳はやはり雄弁で、激しい感情の動きと情念を観客に感じ取らせる。彼女は同時にその瞳に大いなる謎も感じさせると思うのだが、「サスペリ>>続きを読む

山の焚火(1985年製作の映画)

4.0

斜面に所々集まって咲いている花にダンボールや袋を被せる少年に、ほとんど泥水を放出するホースで放水してふざける家族の姿。日常描写の積み重ねとロケーションの素晴らしさ。彼の「裸になっても恥ずかしくない」と>>続きを読む

巴里祭(1932年製作の映画)

3.8

所謂「フランス映画の良質の伝統」に属するような作品はあまり見ていなかったのだが、本作は中々の良作だった。
巴里祭の飾りの大写しから始まるファーストカット。ヌルッとしたワンカットの中で向かいの家の窓を映
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リラの門(1957年製作の映画)

3.7

貧しい暮らしを示す割れた柵など、セット・美術がディテールまで力が入っていた。地下にフォアグラを隠すためにカーペットを捲るとブワッと砂ぼこりが舞うのも何やら印象的。
フォアグラの缶詰めの行き着く先にヌッ
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地獄の黙示録 ファイナル・カット(2019年製作の映画)

4.0

何年か前にオリジナル版を見ていたが、IMAXでファイナル・カットが公開されたということで再見。
やはりロバート・デュヴァルが演じるキルゴアという人物だけが他の追随を許さず圧倒的に魅力的にデザインされて
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レイジング・ブル(1980年製作の映画)

3.9

やはり本作の売りはボクシングシーンの素晴らしさだろうな。スローにストップモーション、ローアングルや素早いカメラの動きを組み合わせた伸縮自在なフットワークのようなカット割り、カット同士が殴り合っているよ>>続きを読む

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

3.7

次第に危険な妄想を膨らませていく主人公、スターコメディアンへの執着、黒人ヒロインへの実らぬ想い、(おそらく)母親との二人暮らし、テレビを通じて犯罪を告白するシーンと、「ジョーカー」への影響は想像以上だ>>続きを読む

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)

4.4

冒頭に提示される囁き声の収録されたレコードのように、薄っぺらく広がりのない閉じた世界がぐるぐる周り続ける。レコードの中のサラサーテの声のように藤田敏八を閉じ込めようとする試みは果たして成功するのか。>>続きを読む

大脱走(1963年製作の映画)

3.6

ザ・映画音楽という感じの音楽と、登場人物の感情と同期したその使い方、定型的できっちりした役者の演技、人物の会話を映すことを主目的にした標準的なカット割りと古典的なスタイルで仕上げられており、公開年は1>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.7

ワンカット風作品の大先輩であるヒッチコック「ロープ」と同様に、画面を登場人物の背中や障害物が覆った瞬間に繋いでいるようだが、技術の進歩によって極々自然になっていた。開幕、延々塹壕を進んで行く様子を見て>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.4

明るい導入部から闇の中へ入り込んでいくのがホラー映画の定石であろうが、それに対して本作は薄暗い序盤を抜けると真っ白な悪夢に包み込まれていく。比較的長尺であるが故の若干のテンポの緩さはあったものの、跳ね>>続きを読む

帰れない二人(2018年製作の映画)

3.5

同日に「青の稲妻」を見たのだが、チャオ・タオが男の首元に顔を突っ込む動作や、クラブで不穏に落とされる拳銃、葬式の花輪などジャ・ジャンクーの好む細部が見て取れた。
草原のシーンにおける、ビンの「拳銃を持
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青の稲妻(2002年製作の映画)

3.7

貧しく薄汚い中国の下町の時空間を丸ごと切り取る長回しの中に、街角の雑踏のざわめきやスピーカーから流れる音声(オフの劇伴は一回も無かったと思う) に加えてムワッと漂ってきそうな臭いまで収められているよう>>続きを読む

殺人の追憶(2003年製作の映画)

3.8

草原からスタートする物語に、知的障害のある青年(どちらも顔の半分が変形する)の暴力的な取り調べと無理やりの現場同行、その青年が幼少期に被虐待歴があるという設定など「母なる証明」と同様。いつも通り飛び蹴>>続きを読む

七人の侍(1954年製作の映画)

3.9

オープニング、重厚な伴奏と力強いフォントのクレジットに期待感が高まる。クレジットの斜めの表示は旗を示していたことが後々明らかになる。
冒頭、輪になって嘆く村人たちが、おそらく一定間隔にグループ分けされ
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スノーピアサー(2013年製作の映画)

3.8

バイオリニストの命であろう手を踏み潰す描写が、兵士とそれを操る支配体制の残虐さを端的に示す。
ティルダ・スウィントンのスピーチは、初めから決まっている「持ち場」として労働者と資本家を分ける階級制度と、
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母なる証明(2009年製作の映画)

3.9

草原から始まるオープニングで、ダイナミックなカメラワークの長回しの中で一人の女が踊り出す、って老婆版サウンド・オブ・ミュージックかな(と思ってたらアカデミー候補者の最初の映画体験という動画でポン・ジュ>>続きを読む

ほえる犬は噛まない(2000年製作の映画)

4.1

軽いコメディ調でギョッとするような犬の虐待を見せるギャップと、切り干し大根婆さんや犬の左右に傾く主観ショットといった奇妙な捻りでアヴァンタイトルから惹きつける。
犬を閉じ込めたタンスを映し、観客が中を
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男たちの挽歌(1986年製作の映画)

3.6

序盤、軽いドタバタコメディ調の男たちのイチャイチャに80年代っぽいチープな音楽が鳴り響いて大丈夫かなと思ったが、アクションが始まったらまあ見応えは出てくる。主演のチョウ・ユンファとティ・ロンが劇団ひと>>続きを読む

肉屋(1969年製作の映画)

3.7

不気味な鍾乳洞のショットに、落ち着かない低音のフレーズが繰り返される音楽が重なるオープニングから不穏な雰囲気がある。
ポポール(ジャン・ヤンヌ)は、結婚式というめでたい場に相応しくない両親の結婚生活の
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ラストタンゴ・イン・パリ(1972年製作の映画)

3.6

入れ歯を入れる老婆の不気味な挿入、けたたましい笑い声を上げてヒロインの手を離さない大家、部屋に上がると佇んでいる、道ですれ違ったアメリカ人。不穏なスタートは中々魅力的。
ストラーロ・ベルトルッチコンビ
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