ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

現代人(1952年製作の映画)

3.9

テキパキとした人物の所作に口調、キビキビと小気味よく繋がれていくカット構成のリズムに乗っているだけで気持ちいい。会話劇でありながらほとんどのカットが細かいアクションで満ちており、普通の映画なら間に挟ま>>続きを読む

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

3.8

開幕、ファンファーレを聞きながら20世紀フォックスのロゴを見て、「新作でFOXの文字を見るのはこれが最後かな」などと思った。
本作の見応えを一段も二段も高めているのは、やはりクリスチャン・ベールの熱演
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ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

3.7

オープニングのフォックス・サーチライト・ピクチャーズのロゴを見て、最近話題の「フォックス」の名前が消えるというニュースを思い出した。
役者陣が皆魅力的な佳作。前評判で聞いていた大絶賛はちょっと分からな
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

3.7

序盤のシークエンス、リチャード・ジュエルのちょっとズレた親切心(スニッカーズ)と杓子定規な正義感を手際良く描き出していく。ジュエルを演じるポール・ウォルター・ハウザーの巨体がライブ会場の群衆の中を横切>>続きを読む

殺人者(1946年製作の映画)

3.9

オープニングショットの光と闇の戯れに期待が高まる。シオドマクは「幻の女」「裏切りの街角」と見てきたが、ノワール的な画面は本作が一番魅力的。
同僚が殺し屋の襲来を知らせようと走ってきて、バート・ランカス
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裏切りの街角(1949年製作の映画)

3.8

若かりしバート・ランカスターの色男っぷり。母親相手ですら、怒った女をクルッと振り向かせてキスをする挙動を見せる。
スリムを演じるダン・デュリエの余裕たっぷりで尊大な口調とニヒルな目つきも実に魅力的。
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郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年製作の映画)

3.9

冒頭、転がってきた口紅を拾い上げた主人公(ジョン・ガーフィールド)の視線の先に、強い照明で真っ白に照らされたラナ・ターナーが立っている。これぞファム・ファタールの登場。
強引なキスに対して口紅を塗り直
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ハイ・シエラ(1941年製作の映画)

4.1

知事によって主人公(ハンフリー・ボガート)の恩赦が決定され、彼が出所するまでの導入を一瞬で済ませるスピード感。台詞も使わずに画面内の文字情報でさっさと説明してしまうのが潔い。異様に話が早い男に促され、>>続きを読む

ガラスの鍵(1942年製作の映画)

3.6

トラッキングショットをテンポよく差し込みながらブライアン・ドンレヴィ演じる議員の人物紹介をし、ガラス窓から男を放り投げる。小気味良い導入。
ジョッキを割ってお手ごろな凶器を作る描写は「犯罪王ディリンジ
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薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.6

真っ黒な「修羅」に対して本作は真っ白な画面でスタート。極端。同じイメージを何度も繰り返す(特に死のイメージ)のは「修羅」と同様。
時折インタビューや撮影風景を挟む上、ピーターが主人公と自分の性格が似て
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修羅(1971年製作の映画)

3.7

冒頭、主人公(中村嘉葎雄)が振り向く動作の、エイゼンシュテインもびっくりのしつこい重複編集。笑っちゃったけど、これがこの作品のスタンスである停滞と繰り返しを端的に示している。
主人公を嘲笑っている面々
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.6

ファーストカット、韓国ではよく見られる住宅形態であるという「半地下」の窓から外を眺める視点。このショットと、パク夫妻宅で宴会をする主人公一家が大きなガラス窓から眺める端正な中庭の端的な対比が光っている>>続きを読む

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

3.7

冒頭、ナレーションによって夫婦の性格について言葉で延々説明しちゃうのはどうかなと思っていたが、離婚調停の場のメモ書きだったという一捻りがあった。
弁護士(ローラ・ダーン)との会話でのスカーレット・ヨハ
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クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)

3.7

チョコアイスをめぐる攻防におけるビリー(ジャスティン・ヘンリー)が可愛らしい。次第にイライラが募っていき、遂に子供に癇癪を起こしてしまって後から後悔するまでのダスティン・ホフマンの演技が実にリアル。>>続きを読む

卒業(1967年製作の映画)

4.0

初登場時から圧倒的なファム・ファタールっぷりを発揮するアン・バンクロフトの色気が凄い。鍵を水槽の中に放り投げる動作なんて魅力的。ダスティン・ホフマンが彼女の膝の間に収まった面白い構図は、彼の心が完全に>>続きを読む

都会の牙(1949年製作の映画)

3.5

冒頭、廊下を歩く男のフォロー撮影長回しに次いで、警察の殺人課を訪れた男が被害者は自分だと述べる。素敵な謎めいた導入はノワールの条件だな。
「裁かるるジャンヌ」の名撮影監督ルドルフ・マテが監督であり、「
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眠りの館(1948年製作の映画)

3.7

目覚めると何故かボストン行きの列車に乗せられていたというシチュエーションは謎めいた良い掴みなのだが、メロドラマが挟まったりして動き出すのがちょっと遅くて焦れる。
「ショックプルーフ」でも同じような演出
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生まれながらの悪女(1950年製作の映画)

3.5

「夜の人々」なんかもそうだったが、ニコラス・レイは型通りのカット割りと堅実極まりない映像演出という感じで、どこがそんなに評価されているのか良く分からない。シークエンス始めで街の全景や建物の外観を差し込>>続きを読む

遅すぎた涙(1949年製作の映画)

3.6

夜道で対向車から大金の入ったバッグを投げ込まれるという謎めいた掴みはノワールの開幕として素晴らしいものだが、結局何のためにそんなことがされたのかは良く分からなかった。
前半から思いっきり悪女で、悪びれ
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拳銃貸します(1942年製作の映画)

3.8

無駄に込み入った設定、そんな流れになる?という展開で、とにかくクールなシーンがたくさんあればいいという「三つ数えろ」的なスタンスのノワール。突如対日プロパガンダ要素も入ってきて大忙し。「シェーン」のア>>続きを読む

静かについて来い(1949年製作の映画)

3.8

小品の良作。フライシャーのもう一つの「絞殺魔」。60分故あっさり感はあり、同様に短尺の「その女を殺せ」の濃密さはは無いが、気軽に見れて十分楽しい。
のっぺらぼうの怪談「それはこんな顔ですか?」を思わせ
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西鶴一代女(1952年製作の映画)

3.8

初見時は近い時期に見た「雨月物語」(個人的オールタイムベスト)によって霞んでしまい、割と長くてつまらないなと思った記憶があるが、やはりと言うべきか見直してみれば十分良作。同じようなエピソードの繰り返し>>続きを読む

お遊さま(1951年製作の映画)

3.8

冒頭、木漏れ日の差し込む森林における、少し白昼夢のような邂逅は主人公(堀雄二)が田中絹代に一瞬で惹かれたことに説得力を与えている。
端正なタテの構図が丁寧に積み重ねられ、境界を超えていく長回しで魅惑す
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街の灯(1931年製作の映画)

3.7

チャップリンとヒロイン(ヴァージニア・チェリル)が出会う、何でもない物語の導入のシーンの撮影に一年以上かかっているというのは狂気としか思えない。
他所のパーティにチャップリンと自殺志願者の富豪おじさん
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チャップリンの黄金狂時代(1925年製作の映画)

3.7

久々に再見。
風圧で小屋から吹っ飛ばされていくシーンなんて凄い運動神経だな。どうやって撮ってるんだろう。猟銃の取り合いに対して、銃口に合わせて動き回るチャップリンの身のこなしもお見事。
革靴もシチュエ
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キッド(1921年製作の映画)

3.7

とにかくジャッキー・クーガン演じる「キッド」が可愛い。窓に石を投げつけようと悪い顔をする表情や、「あ!」とばかりに指を指して警官を騙す挙動など実に愛らしい。年長の少年と喧嘩する際、チャップリンに摘み上>>続きを読む

影なき殺人(1947年製作の映画)

3.6

エリア・カザンといえば「欲望という名の電車」の監督なので、メソッド演技法の脂っこい演出が見られるのかと思ったが、演技はスタンダードな感じだった。
全体的に淡々としており、主人公(ダナ・アンドリュース)
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私の名前はジュリア・ロス(1945年製作の映画)

3.6

街の人々と接触はできるが、誰もが自分を狂人だと思っているために脱出できない緩やかな軟禁というのは中々怖いシチュエーション。通常我々が自らの認識を幻想と区別するためには、外界の反応が認識と合致しているこ>>続きを読む

幻の女(1944年製作の映画)

3.6

序盤はテンポ、テンション、演出が全体的に単調で画も味気ないのでちょっと退屈。家に帰ったら妻が死んでたという場面がこんなにあっさり演出され、主人公のリアクションも薄いのは奇妙な印象すらある。
ヒロインの
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邪魔者は殺せ(1947年製作の映画)

3.6

ボールがバウンドを繰り返して防空壕に辿り着き、防空壕が幻想の監獄に変わるシーンが良い。
「第三の男」の二年前の作品だが、キャロル・リードはこの時からダッチアングルをちょこちょこ使ってたんだな。
夜の街
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暴力行為(1949年製作の映画)

3.9

ノワールの影と共にロバート・ライアンが登場する導入部、パレードに阻まれるライアンを捉えるショットが店の中からの長回しであったことが分かるシーン、湖の魅力的なロケーションでの待ち伏せと初っ端から手抜きの>>続きを読む

ヒッチ・ハイカー(1953年製作の映画)

4.1

一言だけ犯人の親のネグレクトを窺わせるセリフはあるが、基本的には登場人物の背景など一切知らせず、人間性を全く感じさせない鬼のような犯罪者との逃走劇のみで構成された凄みのあるカルト作品。
車に乗せてしま
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不審者(1951年製作の映画)

4.1

女が叫び、カーテンを素早く閉めてクレジットに入るアヴァンタイトルがお洒落。
スーザン(イブリン・キース)の夫のラジオの使い方が実に上手い。不倫現場に流れる「スーザン、すぐ帰るよ」が悲しすぎる。この台詞
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二重結婚者(1953年製作の映画)

3.6

回想形式の語りの手際はいいが、映像演出は至って普通で題材もメロドラマだと個人的にはあまり好みではないかな。
監督のアイダ・ルピノ自らファム・ファタールになるのは凄い自信。
ジョーン・フォンテインの方が
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死の接吻(1947年製作の映画)

3.7

前半は単調なテンションの会話を単調な切り返しで見せるシーンが多くて(強盗シーン除く)割と退屈なのだが、牢屋の中のリチャード・ウィドマークだけは異様な暗い輝きを放っている。何だその笑い方。サミュエル・フ>>続きを読む

真昼の暴動(1947年製作の映画)

3.9

一見物腰柔らかに見えるマンジー(ヒューム・クローニン)が食堂に現れた瞬間に、囚人たちが一斉に静まり返り挙動がストップする壮観な光景から、彼が囚人に齎してきた恐怖が垣間見える。
作業場の粛清シーンが白眉
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