イワシさんの映画レビュー・感想・評価 - 26ページ目

イワシ

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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

3.8

男と女の真実のみならず、男と男の真実、女と女の真実にすらも差異がありあり得たはずの連帯への希望がはじめから断絶されている。人々が(階級を超えて)一体化するのは暴力を高みから見下ろすその間だけ。暴力、欺>>続きを読む

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021年製作の映画)

3.8

カーテンリングに紛れた悪魔の指の静的な怖さから一転、ド派手な超常現象が起きまくる冒頭の悪魔祓いのつかみが満点。霊視に対抗してゾンビを登場させる中盤、浮遊するルアイリ・オコナーを照らす刑務所のサーチライ>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

2.7

砂漠を歩くときのように長く感じられたが、どの場面にも大金が注ぎ込まれてるとも感じたので観て損はしなかった。

これは映画本編じゃなくて原作の話なんだけど、『風の谷のナウシカ』や『スター・ウォーズ』の他
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クーリエ:最高機密の運び屋(2020年製作の映画)

3.8

円滑に語られる物語に身を浸すことそれ自体の喜びをひさびさに堪能。ショーン・ボビットによる撮影も随所で素晴らしい。メラーブ・ニニッゼから情報を渡されていたベネディクト・カンバーバッチが、逆に彼にとある事>>続きを読む

間違えられた男(1956年製作の映画)

4.0

ヘンリー・フォンダの顔に真犯人の顔がオーバーラップして重なるショット、ゴダール『さらば、愛の言葉よ』の3Dシーンを2Dで観たらこんな感じかなと思った。

ハリーの災難(1955年製作の映画)

3.5

秋映画。黄色い葉っぱが美しい。死体がさんざん弄ばれるが、ヒッチコックは生きた役者にも同じような扱いをしてたと思う。

未来世界(1976年製作の映画)

3.5

サプライズニンジャならぬサプライズサムライが出てくる。ピーター・フォンダとブライス・ダナーが自分たちのコピーと戦うクライマックスは『SBR』の並行世界の自分と戦うDioとホット・パンツみたい。

ユル
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嘆きの天使(1930年製作の映画)

3.7

徹底的に堕とされたエミール・ヤニングスが捨てたはずの教壇にしがみつきながら生き絶えるラストの救いの無さ。迷惑がる夜警が指を剥がそうとする様子が凄い残酷。『殴られる彼奴』ですらラストは多少の救いはあった>>続きを読む

ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年製作の映画)

4.0

照明の光を拒み蝋燭の灯を求めるローゼル・ツィヒの光と陰に対する映画スター的な感性を抹殺する真っ白な部屋。ナチ御用達の女優、強制収容所の生き残り。暗い歴史を葬るのは『ローラ』の理想主義者でなく弱者を貪る>>続きを読む

ローラ(1981年製作の映画)

3.7

地下室をなくし三階高くしろという台詞が示唆的。戦前を葬り戦後ドイツを新生させる目論見は当然の如く敗れ去る。建築がテーマでありながら基本的に室内のみで進行し、上階下階への移動は省略される。最後に現れる階>>続きを読む

アルプス(2011年製作の映画)

3.5

死者の生前を演じるグループ、それを受け入れる遺族、どちらもモラルが崩壊している。可笑しく、気味が悪く、切実。

梁山伯と祝英台(1963年製作の映画)

4.0

桃紅柳緑の景色の中を下山しながら眼に映るものを題に愛を唄うロー・ティと鈍感極まりボケまくるリン・ポーとの歌劇は西本正撮影の優雅さ豪華さとやり取りの微笑ましさが合さり観ていて幸福。別れの際の男女それぞれ>>続きを読む

刑事ニューマン・復讐のレクイエム(1974年製作の映画)

4.0

深夜のスーパーマーケットの銃撃戦が最高!スイカが飛び散り、コカ・コーラの瓶は泡を噴きながら割れる。銃声と沈黙が程良く配され、透明で優れたカメラワークが興奮を密かに煽る。疲れた足を孤独に慰めるジョージ・>>続きを読む

私の血に流れる血(2015年製作の映画)

4.1

垂直/落下/投棄の運動はリディア・リバーマンの身体を拘束/沈淪/幽閉へと導くが、同時に浮上/解放への可能性も示唆する。「浮き上がれば摂理に反する。お前以外の力が働いた証拠だ」という台詞があるが、ベロッ>>続きを読む

キャッシュトラック(2021年製作の映画)

3.5

輸送車内部に置かれたカメラがワンカットで撮り続ける冒頭は前作『ジェントルマン』でも見られた箱のモチーフの継続か。中盤の回想で箱の中身=真相/動機が開陳されるが、スコット・イーストウッドの内面の無さも提>>続きを読む

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

3.5

アバンタイトルやラミ・マレックとの対面時のセリフで暗示される鏡面/鏡像演出がラストで反復されるかと思ったらされなかったので肩透かしという感じ。JAMES BOND WILL RETURNは実際の映像で>>続きを読む

翼のない天使(1998年製作の映画)

3.2

疑問、予兆(The Signs)、回答という章立てがあまりにもシャマラン。庭に降る雪を捉えたショットや階段裏の物置から洩れ出ている黄色い光が良い。カトリックスクールのシスター、神父、教員、用務員の長期>>続きを読む

嵐が丘(1988年製作の映画)

3.8

吉田喜重による翻案は構成は原作に忠実。能や舞踏を取り入れつつ、山に出ればモンテ・ヘルマン西部劇のような抽象的な空間が広がり、場面によっては怪奇映画としか言いようがない画面が出現する。鏡の反射光の演出は>>続きを読む

ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~/嵐が丘(2011年製作の映画)

3.8

監督アンドレア・アーノルド。ヒースクリフを黒人俳優であるジェームズ・ハウソン/ソロモン・グレイヴが演じることによるざわめき。アーンショーの善行を支えていたキリスト教的価値観の暴力性が炙り出され(善は善>>続きを読む

嵐が丘(1986年製作の映画)

4.0

ジャック・リヴェットのそれは室内劇という印象が強い。階級の異なる家の視覚的差異が内壁の色彩として現れていて、荒々しい自然の表象はラストまで控えている。第二部への転換/飛躍の鮮やかさ。ファビエンヌ・バー>>続きを読む

嵐が丘(1953年製作の映画)

4.5

ワイラーと比して野蛮とそう罵られることをおそれず、複雑な人間関係のあいだを走る激しい感情と奔放な動線を描くルイス・ブニュエルの『嵐が丘』。幽霊がホルヘ・ミストラルとの切り返しも無しに殺人者へ転換する瞬>>続きを読む

嵐ケ丘/嵐が丘(1939年製作の映画)

3.0

幼少時代のエピソードでヒースクリフとキャサリンが馬に乗って競走するシーンがあり、そのレースの最中に石垣を飛び越えるのだが、スピルバーグは『戦火の馬』でこのシーンを馬と自動車のレースとして翻案しつつ引用>>続きを読む

地獄(1960年製作の映画)

3.5

道路、線路、吊橋、三途の川という横線的イメージのあいだに物理的/比喩的な落下が描かれる。小野彰子と沼田曜一の吊橋からの落下(岩に二回ぶつかって落ちる人形が凄い)と天地茂の地獄落ち。横線のイメージは地獄>>続きを読む

リアル・ハント(2008年製作の映画)

3.5

演出が飛び抜けて残酷というわけではないが、アンドレア・イェーツ事件を元にしてるだけあって物凄く陰惨。母親が娘の髪を掴みかけるシーンは平均的なカット割にも拘らず異常に緊迫したシーンになっている。そしてお>>続きを読む

トパーズ(1969年製作の映画)

3.5

サイレント時代に回帰したかのような長い長いサスペンス演出の終わりに思わぬ運動が画面に投入されるのが良い(拳銃を構えるソ連の刺客をリアウィンドウ越しに捉えた車内からのショット、ロスコー・リー・ブラウンが>>続きを読む

ドアマン(2020年製作の映画)

3.5

防弾仕様の車のドアを盾にした冒頭の銃撃戦から新鮮。改装中のアパート内の美術がかなり凝っていて、ビニールカーテンが揺らめく暗い部屋はトビー・フーパー『ツールボックス・マーダー』を思わせる。ルビー・ローズ>>続きを読む

ウィロー(1988年製作の映画)

3.0

『鷲の巣から救われて』のようなシーンがあった。

The Girl and Her Trust(1912年製作の映画)

4.0

再見。浮浪者が列車から飛び降りて物陰に隠れる際のアクションつなぎがあまりにも自然。トロッコと機関車のチェイスもヤバい。トム・クルーズが真似しそう。カウキャッチャーに腰掛けながらキスする男女とクライマッ>>続きを読む

不変の海(1910年製作の映画)

4.0

再見。海辺で過ぎ去る人間の一生。ほぼシャマラン『オールド』。

迷惑帽子/これらのいやな帽子(1909年製作の映画)

3.5

再見。どんどんサイズが大きくなっていく帽子がフレームインしてくるたびに笑えたが、あのデカすぎるクレーンには爆笑するしかない。

ホット・スポット(1991年製作の映画)

4.4

デニス・ホッパーの南部ノワールの凄い傑作。ジェニファー・コネリーもヴァージニア・マドセンも超魅力的に撮ってる。辺鄙な町に似つかわしくない美しい女が平然と存在するのが映画。ドン・ジョンソンがその二人の間>>続きを読む

カルロス(2010年製作の映画)

4.0

再見。PFLPから独立し独自の運動(テロ)を活性化させ、やがて失墜する第三部がいちばん面白い。銃は身体の一部と嘯き、鏡の前で睾丸を握るエドガー・ラミレス。「映画は女と銃だ」とグリフィスは言ったが、第三>>続きを読む

愛欲の罠(1973年製作の映画)

4.0

殺し屋のパロディ、銃撃戦のパロディ、映画のパロディ。小水一男と秋山ミチオ扮する殺し屋コンビのありうべからざる滑稽さが生み出す怖さ。荒戸源次郎は腹話術師を殺し、観客席のボスを撃つ。映画が観客を撃つことへ>>続きを読む

恋人たちの時刻(1987年製作の映画)

3.5

人物の動き、カメラワークと距離感、曇り気味の空と海のロケーション等が最高の冒頭だが、起きてることは強姦(未遂)なのでヒク。が、脚本荒井晴彦で納得。黒沢清が指摘した『JAWS/ジョーズ』冒頭の女優はいつ>>続きを読む

映画に愛をこめて アメリカの夜(1973年製作の映画)

4.1

再見。ジャン=ピエール・レオーがジャン=ピエール・オーモンに平手打ちを食らわせる冒頭の撮影が何度も撮り直しになり、それらがモンタージュされた結果ジャック・ベッケルの映画みたいになってて笑う。澤井信一郎>>続きを読む

たそがれ酒場(1955年製作の映画)

4.5

屋内セットの中でこれだけクレーンを自在に動かし高低差まで演出して、老いも若きも男も女も人生の断片が酒場の一夜にぽっと咲いて消えていく。津島恵子を照らすスポットライトが小杉勇や小野比呂志にも当たるのが素>>続きを読む