シズヲ

少女☆歌劇 レヴュースタァライトのシズヲのレビュー・感想・評価

4.0
歌劇×バトル×美少女。題材的に『少女革命ウテナ』っぽいが別に前衛的でもなければ革新的でもなく、最終回の観念性を除けば大分ポップ。それでも少女達が舞台上で歌いながら剣を交えて戦うレヴューのシーンはかなりのインパクトがある。剣戟も含めて作画は安定しているし、どの曲も良質だけど、個人的には『恋の魔球』が一番好き。情念たっぷりのフレーズを軽快なスウィングに乗せるのが堪らん。

作品としてはちゃんと面白いけど、よくよく考えたら大筋という点では殆ど解決していない。そもそも物語の発端となったキリンや地下舞台の真相は一切語られないし、舞台少女を戦わせる理由も謎のまま終わっている。最終回でキリンが言及した核心も殆どメタ的な観念に過ぎない。時間ループや東京タワーなど諸々の要素も殆ど理屈不明で描写される。未把握の総集編映画で明かされた部分もあるかもしれないけど、少なくとも一区切りついたはずのTV版では消化されることなく結末まで駆け抜けている。

それでもこのアニメが良質なのは、そういった大筋の設定を丸ごと割り切って“舞台少女のエピソード”を描くことに終始しているからだと思う。レヴューを通じて描かれる登場人物達のドラマこそが話の肝であり、本筋の物語はそれらを最大限に引き出すための土台に過ぎないんだよな。あくまで華恋とひかりの関係性を中心とした舞台少女のドラマこそがメイン。大場ななの重要な秘密すらキャラクターの掘り下げとして消化したのは思い切りが良すぎる。そういった構成のおかげで登場人物達はいずれも魅力的だし、彼女達の心情にもきっちり引き込まれる。

“頂点の座を懸けた少女達の闘争”という下手すれば露悪的に進められそうな内容だけど、そういう方向性に舵を切らずあくまで爽やかに描いているのも好感。嫉妬を題材にしたまひるちゃんのエピソードはある意味象徴的。舞台上で争いを繰り広げていても日常では和気藹々としているあの距離感にも安心してしまう。

ハワード・ホークスは作品製作について「物語というものは個々のエピソードほど重要ではない」「登場人物ひとりひとりの魅力を捉えて、そこから面白さを引き出すことを考えてほしい」と言及していたけど、本作の構成的な魅力もある意味でそれに近い部分があるかもしれない(ちょっと強引か)。
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