真田ピロシキ

ゾンビランドサガの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ゾンビランドサガ(2018年製作のアニメ)
3.8
福岡県民だが佐賀生まれで人生の半分以上は佐賀で過ごしていて、今も週1で高齢の親を見に日帰りはしている。なので佐賀情報はそれなりに入ってきてて、ロマンシング佐賀と並んで耳にしてた佐賀県のオタク企画が本アニメ。こういうアニメは好みじゃなく、これと並んで語られる地方推進アニメの戦車のやつはキモすぎて1話でギブアップしたくらいで、そもそも私は佐賀自体に嫌な思い出しかないので良い印象を持てない。なので全く期待していなかったのだが、これは結構面白かった。

まず題材がゾンビというのが良い。美少女に戦車なんて組み合わされると萌え萌え美少女を餌にバカなオタクをミリタリーに引き込んで軍拡への抵抗をなくしてやるみたいな気色の悪い意図を感じてしまうが、ゾンビは元来風刺的な存在で佐賀の寂れっぷりをゾンビに重ね合わせるところに○○スゴい的なイキりはない。でも自分は佐賀嫌いだから気にしないが、佐賀愛のある佐賀県民は良いのか?disられるのには慣れてそうだが。まぁでも、佐賀のスポットがたくさんで佐賀城、嬉野温泉、鏡山、ガタリンピック。佐賀の誇る大企業久光製薬はサロンシップを露骨に宣伝(笑)そしてドラ鳥。…って、そこ初めて知ったぞ。アイキャッチでも佐賀のPRがふんだんに。ブラックモンブラン、ミルクック、さがほのか、さが錦、バルーンフェスタ、日本酒鍋島、魚ロッケ、ちょうど2018年に建設してたCygamesビル。他にも様々。やるからには全乗せでくらいの勢いを感じる佐賀推し。これは作り手側がネタにするだけでなく真剣にやろうとしてるのが伺い知れる。ただ地方をバカにして消費することしか考えてなかった『翔んで埼玉』のようなクソとは違うのだ。ラスト2話でさくらが言う「持ってない」は何もないと言われる佐賀にかけてるところもあるのだと思うが、卑屈な自虐で終わらせない前身を示す姿勢を見せんとしていて良い。それと最近、富良野を舞台にした邪神ちゃんがどうとかというアニメがあまりに酷い表現で市から梯子を下されていたが、本作は最初のうち扇情的に感じるローアングルがややあったが次第にそれも少なくなり上品な方。ゾンビなのに(笑)増長したキモオタではなくあくまで佐賀を主体にしててこういう点も良いご当地アニメと言える。ゆるキャンに近い。と言ってもあまり美少女アニメで町おこしするのはどうかと思うんですけどね。それとフランシュシュの本拠地が唐津でその周辺と佐賀市が描かれることが多くて、鳥栖方面には全然行かないのが気になる。サガン鳥栖結構強いのに。基山は『キングダム』の原泰久とナンバーガールの向井秀徳を輩出した佐賀のカルチャータウンだよ。鳥栖は福岡という認識を再現したんだろうか。松雪泰子も鳥栖だし。はなわの歌と違ってちゃんと公表してます。

もう一つ書かずにはいられないのはアイドルアニメでアイドルといえば推し。見つけたよ推しメン。ヤンキー女萌えなので元レディースのサキ。佐賀と言えばヤンキーですからね。美少女アニメが苦手なところに大人しく男に媚びたお人形さんのようなつまらない女が大半なのがあるのだが、サキ1人でぶっ飛ばす。サキ主役の回はマガジンヤンキー漫画風演出でぶっちぎるぜ。殺女と書いてコロ助と呼ぶ素敵すぎるネーミング。ヤンキー万歳。ただしフィクションの存在に限る。他にも昭和アイドルのジェネレーションギャップから現代アイドル文化への批評をしてたり、そんな真面目ではないだろうがトランスジェンダー的なリリィの存在など案外内容と言えるものが多い。知性がないが意思疎通は出来る普通のゾンビものなら鍵になるたえに本作で1番の大物声優三石琴乃を起用し、呻き声だけ発せさせる贅沢さも粋。それだけキャリアがあるからこそ呻き声で色んなことを表現できるという意図なのか。

ライブシーンは力が入っていて、2話のフリースタイルラップから引き込まれて最終話豪雪のアルピノで熱狂。音楽アニメとして力を入れてることが分かる。しかし雷が落ちたり雪で建物が壊れてもライブ続行する佐賀は修羅の国です。警官はすぐ発砲するし(コイツ、唐津にいたり鹿島にいたりどこで働いてるんだ?)、すぐ車に撥ねられる。最後のは交通事故率No.1なのでマジです。よかろうもん運転はやめような。そういう啓蒙もあるのかもしれない。ともかく意外と楽しかったので続きも見る。