レインウォッチャー

波よ聞いてくれのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

波よ聞いてくれ(2020年製作のアニメ)
4.0
かつて、ミュージシャン・詩人のトム・ウェイツは「俺の得意楽器はボキャブラリーさ」と嘯いたという。

深夜のラジオパーソナリティもまた、語彙を手なずける詩人である。観客のいないブルースマンであり、独り相撲のフリースタイルラッパー。
この作品は北海道のある地方ラジオ局を舞台にした、ダメ人間コメディ / お仕事系ドラマ / ラブストーリー…なんかの要素が合わさっているアニメではあるのだけれど、度々くすくす笑ってしまうのは常に厳選されたワードと声によってだった。

これだけ動画メディアが一般化してもなお、ラジオやpodcastのような音声コンテンツがなくならないのはなぜだろう。わたしたちは言葉を発明してしまったがゆえに言葉に縛られ言葉を消費して生きている動物で、混じりっけない上質な天然モノを本能的に求めているのかもしれない。
そんな生態への憐憫とリスペクトに満ちた、素敵な作品だった。

原作漫画は続刊中だし(『無限の住人』の沙村広明さんがこんな作品を描いていたとは知らなかった)、二期があったら嬉しいなと思う。
実在の企業・製品名や人名などの固有名詞がばんばん会話の中に出てくるのだけれど、そのへん調整が大変だったりするのだろうか。