レインウォッチャー

葬送のフリーレンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
3.5
フェルンのご機嫌をとるためおやつを買いに走りたいじんせいだった…

RPG的世界の《アフター魔王討伐》を考える作品。そこに、人間とは大きく異なる悠久の時間尺度で生きるエルフ=フリーレンという誇張されたキャラクターがかけ合わさって、ある種の思考実験的性質を帯びてくる。

要するに「めっちゃヒマ」ってことなんだけれど、この引き延ばされた時間を何に使うべきなのか。

寿命が長いゆえに、感情の起伏も薄~く伸ばされたようなフリーレンは、熟練最強のワンパン魔法使いとして老成していつつ子供みたいな部分もある。彼女の姿は、失われた30年がデフォルト設定の世に生まれ、出世欲や結婚願望に乏しいといわれる現代の、特に若い世代を中心とした日本人と容易に重ねることができるだろう。

若者に限らず現代はコンテンツ過多で、どのサービスもスキマ時間を奪い合っているような八方レッドオーシャン。そんな海面を、食い潰しながらなんとなくゆらゆらと生きる日々。
フリーレンにとってもわたしたちにとっても、個が充実しすぎると《生》が、そして《死》も希薄になる。他者との関わりがあるからこそ発生する、危機感(〆切)の欠如だ。

そこで今作が一貫して語るのは、人から人への《継承》である。
フリーレンの仲間だった勇者ヒンメルや師匠ハイターが残した足跡が、思わぬ芽となり、花をつけ、次の世代の行動や夢を決めていたりする。これらを目にしたフリーレンもまた、フェルンやシュタルクといった若者たちに自らの知識や技能を受け継ぎ、コーチングしていくようになるし、逆に彼らから学ぶこともある。

サブキャラに関してもこの《継承》の強調は徹底されていて、とにかく「もっと話そう」「体験をシェアしよう」って言っているような気がする。

正直なところ、中盤以降ハンター試験みたいなのが始まったと思ったらキャラもうじゃっと増え、能力バトルめいてきてからは食傷気味だったのだけれど、最終的には誰もにそこそこ愛着が持てるようになってて、なかなかの整理力を見た。

作画は毎回気合が入っていて、というか入り過ぎていて、《アフター鬼滅》の上がりきったハードルを感じる。果たして今作のような主題でここまで派手に動かす必要があったのか?というと、何ともいえないなとも思うのだけれど。

-----

でもなんだかんだ言ってみんなアウラが好きなんでしょう?あたいもだよ!