レインウォッチャー

スキップとローファーのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

スキップとローファー(2023年製作のアニメ)
4.0
江頭ぁぁぁ!!

この、いかにも朝ドラ風ゆるふわ学園コメディに見せかけた、ヤマアラシのジレンマだらけの痛みとイタみと残った甘さが古傷に刺さる日々において、どのキャラにどう感情移入するかは重要で、かつ人によって十色だろう。

わたしにとっては、江頭ミカ以外に考えられない。
主人公みつみを始め、ミカの周りにいるキャラは誰もが何かしら「持っている」人物だ。それは天然の純粋さだったり、圧倒的なルックスだったり、確固たる意志だったり…

一方、ミカは持っていない人(と、少なくとも彼女自身は自覚している)であり、だからこそ誰よりも「がんばっている」。
体型に気を配り、おしゃれを勉強し、バレーを練習して、一軍グループのキラキラした自分を保つ。間違いなく物語の中では主人公にはなれないタイプで、どちらかといえばヒール。事実、人を見る目に肥えた志摩くんからは早々に「肩の力抜きなよ」とか言われてしまう(てめぇは持ってやがるからな!)。

しかし、そんなミカのサバイバルをわたしは、そしてこの物語は決して笑わない。ミカの言ってること、全部わかるぞ。

これは何も、わたしがミカと同じような子だった、というわけではない。むしろ、わたしはミカみたいに頑張りきれなくて、斜に構える方に「逃げた」ヤツだった。でもだからこそ、今となればどれだけ彼女のような存在が偉くて輝いてるかがわかるつもりだ。

そんなわけなので、どうしても5話のバレー回が涙と鼻水のピークになる。以降はみつみ&志摩が中心になるため、ちょっと寂しい。

ミカとの関係に限らず、ベタな青春モノだったらあるあるの「謝りあって認めあって明日から友情」みたいな儀式を安易に挟んだりしないところがとても厳しく、同時に上品で、今作の何よりの魅力だと思う。
人の感情はギャルゲーのパラメータのように変わって固定されるものではなく、大きな流れの中でその都度ごとに違いつつ、緩やかに動いていくもの。それを良く理解して、ある程度ディフォルメされたキャラクターの中でもわきまえている美しさがある。信頼できる。

今期のラストでは、まだようやく一年生の半ばを過ぎたくらいだし、もっとミカや周囲のキャラにスポットがあたる機会が増えたら良いな。ていうか、ミカを誰か必ず救ってやってくれよ…頼むぞ…!