レインウォッチャー

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2期のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.0
なにも今回に限ったことではないのだけれど、『ラブライブ』シリーズのアニメを作っている方々は人間の気持ちがギャルゲー(それも昔の)みたいなシステムで動くものと信じているとしか思えない。
そこになんかエモい「風」の台詞を被せておけば、イイ話に見えるだろう、という…このような手法を「子供だまし」と呼びます。

加えて、特に今回は事情が特殊。
ランジュ・栞子・ミアという追加キャラを迎える顛末において、ゲーム側のシナリオ(スクスタ。※1)で起きた炎上を踏まえたうえで、ファンに対し腫れ物に触るかのごとく気を遣って作られていることはわかる。誰ひとり悪者にできないし、三人が合流するというゴールは決まっている制限のもとで。
この点に関しては、シンプルにお察し申し上げます…。

その結果、毒にも薬にもならないプレーンの寒天みたいなシナリオができあがった。とにかく念仏のように「同好会って最高!」「スクールアイドルって最高!」を繰り返して、「ほーらもう怖くない。怖くないよ〜」とオタクたちを檻に再び誘導するのである。
もはやそこには個性を尊重するニジガクのポリシーだったはずのものは跡形もなく、新基軸のP的存在だった侑ちゃんの存在はお話運びのお荷物にしかなっていない…と思う。
各話の中で最もノイズが少なく単純に楽しかったのは幕間的な(=内容があまりない)9話の合宿会だった、というのはなんという皮肉だろう。

しかし忘れてはいけない、このような事態を招いたのはファン(オタク)たちそのものだということを。
『ラブライブ』シリーズはキャストとの結びつきも非常に強いため、アニメの各話放送前には生配信をやったり、終わればイイ感じのツイートをする。
当然ファン側もそれを否定する術などなくて、なんとなく「キャストは頑張ってる」「あのライブのシーンが再現されてた」みたいなエモ燃料を外から引っ張ってきて褒め称える構造ができている。

キャラが多く(12人)、かつ誰にも平等に見せ場を与えないといけないという暗黙の設計も重荷になっている。でも『ウマ娘』のように似たような状況でも色々な断捨離や英断のもと良いストーリーを作り上げている作品もあるわけで…。

キャラが可愛くてキャストが好きならそれだけですべてはご褒美、アニメなんて楽曲のMV代わり、という世界と割り切るのであればそれでも構わないだろう。
じゃあいっそ変に背伸びしてイイ話風にするのではなく、内容をカラッポにしてしまった方が健全で、みんな幸せなんじゃあないだろうかしら…。

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しかしやっぱり相変わらず楽曲は良い。キャラも可愛い。
チーム内ユニットをアニメの中ではっきり描くのも、これまでのシリーズになかった試みだった。

シティポップが薫るQU4RTZの『ENJOY IT!』、すまし顔で転調を繰り返していく栞子の『EMOTION』(tofubeatsの作曲!)…

それだけに、「かわいさあまって憎さ100倍」みたいな気持ちになってしまうのだよなあ。

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※1:非常にややこしいのですが、ラブライブシリーズは雑誌・ゲーム・アニメとそれぞれ別バースともいえるストーリーが存在するのです。