垂直落下式サミング

バキの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

バキ(2018年製作のアニメ)
4.5
シンクロニシティ!バキで覚えた英単語ッ!
刃牙シリーズがイチバンの盛り上がりをみせたのは、グラップラー刃牙時代の最強トーナメント篇だと思う。確かに、トーナメント編の完成度は随一だ。
スポーツファイトなフェアゲームの世界をやりきった後、一世一代の大風呂敷を畳んだ板垣漫画は、ここから格闘と勝負の美学を深く突き詰めていくこととなる。原作のセカンドシーズン『バキ』は重要な転換点。
序盤のワクワクの半端なさ!バキなのに外国の刑務所?なんで?からはじまって、トーナメントであれだけ強かったガーレンや猪狩が瞬殺されるっていう怖さ!ルールに守られたフェアスポーツの外側の住人たちが、地下闘技場戦士たちに宣戦布告ッッ!
VS死刑囚は、トーナメントっていう格闘漫画のフォーマットを捨て去って、理不尽なストリートファイトの世界に突入ッ!地下闘技場にあった最低限のルールすらも通用しない場所で、男たちによる殺意の向けあい、不意打ち、出し抜き、なんでもありの命のやり取りがおこなわれるのだッ!
そして、各々が扱う妙技の面白さ。手のひらに真空を作るとか、指先の握力がヤバイとか、本部は公園で武器使うと強いとか、そこからアメリカNo.1の筋肉自慢が出てきたり、ついに中国4000年の絶技シャオリー(消力)がお目見えッ!最後には伝説的スポーツマンの2世がッ!流れるようなインフレーション!
敗北を知りたいと、日本にやってくる五人の最強な死刑囚たち。スペック、ドリアン、ドイルの三人は、キャラクターに対する決着の付け方がそれぞれ違っていて、本当に素晴らしかったと思う。
「強さとは?」「勝利とは?」「敗北とは?」少年漫画から哲学がはじまる。トーナメントのような決められたルートがないから、誰がどうやって倒すのか、最後まで読めないッ!
先の三人の戦いとその末路が素晴らしすぎたゆえに、残った二人のやられ役っぷりが惨めでかわいそう。勇次郎は事故みたいなもんなので柳はまあいいとして、シコルスキー君はもっと大切に扱ってほしかった。コイツを倒すのは、ガーレンか猪狩でなければならなかった。
板垣センセイは小池一夫門下生だけど、ストーリーを考えるの途中で疲れるとぶん投げちゃうフシがある。バキってこうなんだよな…。魅力的なキャラが起ちまくってるのに、最後は持て余し続けて尻切れトンボで終わるみたいな…。失速させないために、各章の最後らへんで次回の大きな引きが露骨に仕込まれるのも、連載漫画のリアルタイム性を強く感じる仕掛け。
今週はなんとかなった!あとは頼むぞ、来週の俺ッ!とにかく打ち切られないため走り続けるのだッ!まだまだァ…!立ち上がるぜェ…!若き日の板垣センセイのヤル気がつたわるッ!
格闘の描写は漫画を越えてないから、原作ものアニメーションとしては一段落ちる評価。ぶち抜き4ページかけて、烈海王の拳がドリアンの顔面にめり込んでいくみたいな、衝撃的なエクストリーム表現をしっかりとアニメ化してほしかったなー。