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PUI PUI モルカーのHALのレビュー・感想・評価

PUI PUI モルカー(2021年製作のアニメ)
5.0
もう愛しかない。モルモットへの愛、SFやゾンビ、はたまたミッションインポッシブルなどのジャンル映画への愛、そして何より元々の意味通り「生命を吹き込む」アニメーションへの愛。作り手が最大限の愛を惜しみなく捧げているからこそ、それを見る私たちも愛せるのだ。

自分が見始めたのは一話が終わってから。二話の予告で銃を突きつけられるモルカーをネタにしたなんでもアリな二次創作がツイッターに流れ始めたと思ったら、紹介ムービーで突然のサメ戦艦に追われるモルカー達という「公式が一番ヤバい」という空気を作ってからはもうブームだったと思う。様々な映画のパロディを取り入れていくストップモーションアニメというと、一昨年の『映画ひつじのショーン UFOフィーバー!』を思い出すが(これも傑作!)、ここまで話題になる日本のストップモーションというのはかなり異例なのではないだろうか。『リラックマとカオルさん』も良かったけど、そこまで知名度があるわけではないし。

冒頭の話に戻るが、自分が愛してやまないのは10話「ヒーローになりたい」アビーの回。自分がDCコミックファンなので予告から期待していたのだが、始まってみるとなんとアビーが痛車にされてしまう!この後の話の転がし方が見事で、最初は普通のアニメパートをそのまま入れてしまうのはどうなのかと思っていたのだが、それがその後の「魔法」のような展開の伏線というか、上手い感覚のズレみたいなものを作っていて、虚実の境を飛び越える演出には感動してしまった。一見社会/オタクのような断絶を描くかに見えて、それを見事に融合してしまう。それも終始アビーの視点で。この回のもう一つすごいところは、実は日本のアニメ/アメリカのコミックというような二項対立を構造として持ちながら、それがどちらの視点からも辿り着くことができる結末にしてあるところ。先日Netflixでも配信されたし、冗談抜きで世界でヒットしてNetflix資本で劇場版とかないですかね。本当にすごい作品だと思う。
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