機動戦士Vガンダムの50の情報・感想・評価

エピソード50
憎しみが呼ぶ対決
拍手:20回
あらすじ
エンジェル・ハイロゥ破壊の指示を受けて、ウッソはシャクティとともにリングへと潜入。シャクティは戦いを止めるために、キールームで祈りを再開した。だがその頃、宇宙では、ジャンヌ・ダルク、シュラク隊、そしてリーンホースJr.が、次々と戦場へと沈んでいくのだった……。
コメント7件
夏藤涼太

夏藤涼太

いやーつらい。情緒的に熱くてかっこよく、思わず涙ぐんでしまうところもあるが…冷静に見ると救いがない。 リーンホースJrの特攻ばかりが語られがちだけど、その前にナイチンゲールの特攻が失敗していることは忘れてはなるまい。 こういうアニメで〝一番の胸熱場面〟として扱われがちな特攻が軽々と敵に潰される(しかも特攻クルーは全滅させられる)展開って、まず他では見られないのではないだろうか。 (まぁ最終話でまた別の活躍を見せることにはなるのだが) そしてリーンホースJrの特攻も、まぁジジイ達がかっこよく見えるのだが…よくよく考えるとコイツらは子供達を戦争に参加させ、ウッソたちを狂わせた張本人でもあるので、今さら「若いやつらは死ぬことはない」的な態度を取られても、うーんというところがある。 …でしかも、この〝若いやつらを生き残らせるための特攻〟…成功したように見えるものの、この直後に若い人達が死にまくっており、その後(次回)でももっと若い子供達が死にまくってることを考えると……うーん、救いがない。そうです。特攻に救いがないことは、日本人なら知ってるはずなのです……。 この辺の〝ヒロイズムの否定〟はやっぱり、学生運動世代だなぁと感じる。 だって、この富野由悠季・宮崎駿世代より少し上の西崎義展・松本零士が作った『宇宙戦艦ヤマト』は(このVガンダムと真逆で)完全に特攻のロマンや情緒――ヒロイズムを描くタイプだもの。 西崎義展も松本零士ももちろん反戦主義者ではあるが… 富野由悠季が特攻兵器を作っていた父親を死ぬまで肯定・理解・和解できなかったこと(だから富野ガンダムの主人公は基本的に父との葛藤を抱えている)や、宮崎駿も戦闘機を作っていた父親と終生和解できず(『ポニョ』の頃には多少は見直すことができるようになったらしいが)、憎悪の感情すらあったこと(それは『君たちはどう生きるか』を見たら一目瞭然である)を考えると、陸軍航空隊のパイロットだった父に憧れ、キャプテン・ハーロックや沖田十三のモデルにしたことを松本零士とは、やはり世代観的にはだいぶ隔たりがあると言えるだろう。 事実、富野由悠季自身、朝日新聞デジタル&Mでの「「アムロ父子の確執は創作ではなかった」 40周年『ガンダム』富野由悠季監督が語る戦争のリアル」で 「(ガンダムには戦記物の要素が色濃くあることを踏まえた上で)一方で、それだけでいいのかという思いもあった。『ヤマト』のように「滅びの美学」で終わらせるのはちょっと違うんじゃないか、と」 語っている。 宮崎駿も、某特攻感動映画にブチギレてたし、宇宙戦艦ヤマトは大嫌いだし… ちなみに「学生運動世代」と言っても、正確には富野由悠季・宮崎駿は60年安保の方で、富野由悠季は学生運動に直接参加はしていないものの…思想的には、この世代特有のものを背負っていることは間違いない。 なお70年安保の典型的な学生運動世代は富野由悠季より少し下の世代の安彦良和であり、この思想上の違いが結局別離を招くことになったという。 しかし、最終話目前にして盛りだくさんすぎるぜ…。 2度の特攻だけでも十分なボリュームなのに、ここにカテジナ無双が加わるのだから。1時間スペシャルかと錯覚してしまう。どういうコンテ切ったらこんなアニメが作れるんだ…? とにかく、カテジナさんがバケモノすぎる。パイロットとしても、人間としてもバケモノ。 たった数分間の間に、単騎でシュラク隊3人を撃破って。しかもこれまで〝クロノクルを追いかけてた〟はずなのに、いつの間にか立場が逆転しており、〝愛するではなく愛される女〟になっているという… 「思う存分愛してあげる」の中身が、まさか最終話のアレだなんて…予想できた人はいまい。 「戦争の恐ろしさ(トラウマ)」を子供達に植え付けるのは、意味のあることだと思うが…「(現実の)女の恐ろしさ(トラウマ)」を植え付ける必要は…あったんでしょうか…? まぁでも、これを見てエヴァを制作する活路が開いた庵野秀明という人もいるので…アニメ界に果たした価値は非常に大きいモノであったか…。 なおZガンダムでもよく見られた、この〝裏切る女〟というテーマについては、富野由悠季自身は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』で「意識的に描いているわけではない」と言いつつも、「安彦良和と離別した影響が少なからずある」とも述べている。 女ではなく、まさかの男。なるほど、だから1stガンダムでは〝裏切る女〟がいなかったのか。 まぁ、安彦良和と(思想的に)別れたことについては(ファンも)ずっとひきずってるからね… もうひとつ注目したいのは、ついに明かされたカガチの目的。 帝国的な世界征服ではなく、(自分たちも含めた)人類絶滅計画だったという… これも宇宙世紀最終章ということを踏まえると自然なテーマ設定かもしれない。 ぶっちゃけ 「増えすぎた人類こそ真理を踏み越えたのだ。そういう人類は消えたほうがよい」 「一人の頭でっかちの老人のおかげで人類が全滅するなんて!僕たちが新しい方法を編み出して見せます!」 「その自惚れが人類を間違えさせたんだぞ!」 「僕たちが出来なければ次の世代がやってくれます!」 というウッソとカガチのやり取りは、まんま『逆襲のシャア』での、地球にアクシズを落とそうとしたシャアと、それを止めようとしたアムロのやり取りそのままで。 で、このシャアの言い分には、いつまで経っても戦争をやめない人類、腐敗をやめない組織に対する富野由悠季の絶望(ペシミズム)があり、またその一方アムロの言い分に、新しい世代(ニュータイプあるいは子供達)、人類への希望を捨てられない(捨ててはいけないと考える)富野由悠季の希望が投影されていることは、逆シャアの感想で書いた通りだが… このウッソとカガチのやり取りもそれと同様のものと見ていいだろう。 しかし、逆シャアの頃はまだアムロに正義があったというか。シャアのやり方はやはり〝性急〟すぎるし、〝悲観的〟すぎるだろうと多くの人が考えたはずだ。だからこそアムロや、アクシズを止めようとする他の兵士に感情移入し、感動できたわけで。 だけど…あれだけ逆シャアでアムロが希望を信じて戦ったのに、結局、テロリズムに頼らなければならないほど連邦の腐敗は止まらないし、その後アースノイドや各コロニーの自治権が実質的に認められてここで戦争が終わってもいいはずなのに、今度はコロニー同士で戦争始めるし… ここまでの宇宙世紀を追っている視聴者としては…もう、マジで人類滅んだ方がいいんじゃないかという気になってくるんだよな… そりゃあ絶望もするし、悲観的にもなるよ… …そして、その意志を継いだ庵野秀明は、シャアやカガチのような敵側ではなく、主人公シンジに人類補完計画を発動させ、「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」になっちゃうし、『進撃の巨人』も同様に、地球クリーン作戦――地ならしを主人公がやってしまう。 希望を信じていた(信じなくてはならなかった)70~90年代前から、95年を経て、日本は本当に絶望の時代になったんだなぁと… ただまぁ、人類補完計画にしろ地ならしにしろ、一応は失敗しているのがまだ救いか。 (以下、最終話込みで軽ネタバレ) …で、実際。 ウッソやシャクティらが人類――次の世代を信じてザンスカール帝国を倒した宇宙世紀はその後どうなったのかと言うと。 一応サンライズ公式の漫画『クロスボーン・ガンダム DUST』によると、連邦と無関係のリガ・ミリティアが当時の最大国家であったザンスカール帝国を倒した(本当は連邦の力なくして打倒はできなかったのだが、そこは喧伝されなかったらしい)ことで、連邦の影響力はさらに低下。 いよいよコロニー戦国時代は苛烈になり、各コロニーが戦い合う時代になったという。 しかし環境の悪化とコロニーの維持も不可能なほどどのコロニーも資金繰りに困った結果、科学文明的にはVガンダムの頃がピークで、その後は既存のテクノロジーやMSを修繕し使い倒す斜陽の時代になっている。 だからジオンとの戦争やザンスカール戦争のような大規模戦はなくなり、紛争が各地で延々と続く泥沼の様相となっているらしい。兵器レベルの衰退もあり、多くの人が一気に死ぬような戦争はなくなったことはいいことかもしれないが…(現代地球の紛争地域が平和とは言えないように)人類が平和を手にしたとはとうてい言えない未来である。 ただ、この『クロスボーン・ガンダム DUST』は富野由悠季は噛んでいないので、もしかしたら富野由悠季の脳内正史では、Vガンダムの後には平和が訪れた…という解釈もできなくもない。 だが、現在では(ミーム的な意味での)黒歴史扱いされがちながらも一応は富野由悠季監修の『G-SAVIOUR』(発表は2000年、舞台は宇宙世紀223年)では、やはりコロニー同士の度重なる紛争を経た末の未来(地球連邦の解体)が描かれている。 しかも、長谷川裕一が『クロスボーン・ガンダム DUST』を描く際に唯一サンライズ側から受けた条件は「Vガンダムに登場した技術を上回るものを出してはいけない」だったことを考えると…富野由悠季の脳内的には、やっぱりVガンダム後にもコロニー同士の戦争が終わらなかったことは確定っぽいんだよなぁ。 うーーん、宇宙世紀…救いがない!! なお、Gレコで語られていた宇宙世紀末期の食糧危機については、Vガンよりはるか未来の話なので、別に思うところは特にはない。それだけ先なら破滅もするでしょうよ。 またGレコでの食糧危機危機描写を持って、『G-SAVIOUR』の食糧危機解決事件と矛盾しているのでG-SAVIOURはなかったことになっている…という論もたまに見るけれど、宇宙世紀末期ってGレコに従えばUC1000年頃の話なので、UC200年代のG-SAVIOURのテクノロジーが食糧危機を解決したとしても、その先800年もあればどうとでも破滅すると思う。
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シャスイ

シャスイ

味方と勘違いして撃墜されるなんて、間抜けな退場だ。ウッソは敵同士の相打ちには注意を払っていたし、カリンガは味方機であっても疑い敵視した。
えりみ

えりみ

最終回直前回 なんかヤバそうな女の人が高笑いして終わったんですけど😨 ほんまに次が最終回?
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PANDADA

PANDADA

このコメントはネタバレを含みます

「ウッソ、手を貸すよ!お前を守ってあげられるシュラク隊は、アタシ一人になってしまったよ!!」(コニー・フランシス) ついに始まる最終決戦。 まずはシャクティをまたエンジェル・ハイロゥに戻して、今流されているサイコ・ウェーブを変えることから始まります。 ハンゲルグとしては、このように作戦を複雑化させているシャクティが鬱陶しいのでしょう。 でも、その考えはシャクティに読まれています。 決戦が開始した直後、カテジナの放ったビームキャノンが拡散して連邦艦隊に降り注ぎます。これで、旗艦ジャンヌ・ダルクが被弾。ムバラクは特攻を決意します。 軍人であるムバラクは潔く特攻を選択しますが、政治屋であるハンゲルグはそうではありません。終戦後にリガ・ミリティアをどのようにするのかを指揮しないとならない彼はさっさと退避します。これが非常に卑怯に観えるんですよね。ムバラクも「噂通りのハスっこい男だ」と評していますが、多分、どうでも良いのでしょう。それよりも現状の指揮を優先してますね。直後にクロノクルがブリッジを破壊。 ウッソはまたエンジェル・ハイロゥにとりついて無事シャクティを送り届けます。 シャクティが改めて流し始めた波動は今までの「戦いをやめなさい」という単純なものとは違います。暖かさを感じさせるもののようです。 サイコミュ兵器に乗っているカテジナは余計にそれに強く感応してしまうんでしょう。やや錯乱状態となり、エンジェル・ハイロゥ自体に攻撃を開始。 これを寝返りと勘違いしたフラニーが文字通りカテジナに叩き落とされて戦死。 フラニーの敵討ちに飛び出したミリエラもあえなく討たれます。 カテジナまさに獅子奮迅の戦いぶりです。 リガ・ミリティア旗艦リーンホースJr.を狙いにきたクロノクルの砲撃が炸裂し、リーンホースJr.のエンジンが損傷。 ここからがシリーズ屈指の名場面ですよね。 今まで「置き物の狸」と評されていた影武者のジン・ジャハナムが特攻を決意。 勇気を振り絞ったんですね、顔が汗でいっぱいになっています。 「若いものが生き残れば、この名前が私のものとして語り継がれる」と言って、自分自身を鼓舞しています。 ゴメス艦長やカミオンの老人達もそれに応じます。 カミオンの老人達はたぶん罪滅ぼしの気持ちがあったんでしょうね。何よりもまず若いクルーを一生懸命退艦させています。 若い者達を巻き込んで、最前線に駆り立ててきたことを「長生きしすぎたバチが当たった」と言ってるんだと思います。 登場時には頼りなかったゴメス艦長も貫禄いっぱいに最期の指揮を執ります。 モトラッド艦隊のMSの総攻撃を受けますが、直進を続け、旗艦アドラステアと相打ちで爆発し、周囲の艦も誘爆に巻き込みました。これでモトラッド艦隊自体が消滅。 計算の狂ったズガンが怒り狂ってました。 一騎討ちを始めるウッソとクロノクルの元にコニーが到着し加勢する時のセリフが上ですね。 なんとも悲痛なセリフです。 彼女のこのセリフから分かる通り、シュラク隊の面々はプロとして他の部隊を守るということに誇りを持っていたんですね。 あれだけ人数がいて、華やかだったシュラク隊もついにコニー1人だけになってしまいました。 そんな最初期から戦い抜いてきたコニーもここでカテジナに討たれます。 カテジナはウッソとクロノクルの戦いを自分を巡る戦いだと思い切るようにしたみたいです。 ウッソとの戦いで「クロノクル、来い!」と念じた彼女はクロノクルに自分のヒーローであって欲しかったのかな。 彼女にとっては元々の家族は汚い大人であったし、少年達を戦争に巻き込むカミオンの老人達はズルい大人達でした。クロノクルだけがまともな大人に見えたのは確かでしょうね。それに、クロノクルはVガンダムきっての常識人ですしね。シャクティは「優しさに包まれた深い悪意」と表現していましたが。 クロノクルにとってはウッソというかガンダムは自分の行く先々に現れて邪魔をする厄介者に見えて仕方ない。だからなんとしても「白いヤツ」だけは自分で堕としたい。 そんなクロノクルとウッソの対決に、カテジナが入る隙は実はないんですよね。 それを知ってるからこそ、ああいう受け止め方をしたのかな。 次回が最終回です。
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えりこ

えりこ

このコメントはネタバレを含みます

特攻するリーンホース 全滅するシュラク隊 祈り続けるシャクティ 戦うウッソとクロノクル そして狂っていくカテジナ…
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TEN

TEN

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50話にしてようやく気づいた。Vガンダムが描きたかったのはラピュタだったのか、
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おはうち

おはうち

カテジナが抱える内面のドロドロや欲望をここまで書き起こして堂々と台詞にして突き抜けると、むしろ嫌いになれないな。よくここまで吹っ切れた女性を描けたよ凄い。マスクキャラのライバルポジのクロノクルはとことんつまらないがカテジナの存在で輝く訳ですね。
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