回想シーンでご飯3杯いける

機動戦士Vガンダムの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

機動戦士Vガンダム(1993年製作のアニメ)
3.8
【TV/OVA版ガンダムを製作年順にレビュー中】

「逆襲のシャア」から約60年、「ガンダムF91」から30年後の世界を舞台にしたのが、この「Vガンダム」。とは言っても、それまでのシリーズとはほぼ繋がりもなく、TVシリーズとしては、ファーストガンダム以降、完全に独立した物語として作られた初めての作品とも言える。

ファーストから「逆シャア」までに要した年数が14年。結果的にガンダム・ファンの年齢層は、当時高くなっていたと思うのだが、この「Vガンダム」では主人公の設定を13歳に下げ、さらにモビルスーツのデザインもシンプルなものにするなど、若い世代のファンを新たに獲得しようとする狙いを強く感じさせる内容になっている。いわば"等身大のガンダム"とでも呼べば良いのだろうが、そこはやはり富野由悠季。等身大といえば聞こえは良いものの、そこを一歩も二歩も踏み越えてしまい、全体的にかなりグロテスクな描写が多くなっているのも特徴。

コックピット内で灼熱とともに蒸発する女性パイロットの肉体、ギロチンでの処刑シーン、母親の生首を抱えるウッソ少年など、子供に見せてよいのか微妙な(笑)描写が何度も出てくる。それらの点について、富野氏は「アニメから現実感が無くなって来ていることに対する危機感の表れ」と解説していた。人間が生きていく上で、痛みや死は切っても切り離せないものだという事なのだろう。

これは今だから言えることなのだが「Vガンダム」の翌年には、あの「新世紀エヴァンゲリオン」の放送が始まる。生と死を真っ向から描き、グロテスクな表現で話題になった「エヴァ」のテイストを、富野氏は既にその前年から取り入れていたと言えるし、後に「エヴァ」の作者、庵野秀明も「Vガンダム」からの影響を公言している。

回りくどくなってしまったけど、僕はこの「Vガンダム」が大好きだ。オーケストラ中心の音楽も良いし、最終回のラストも泣ける。オデロ・ヘンリークは、ガンダムシリーズ屈指の名脇役だと思う。