回想シーンでご飯3杯いける

火の鳥 エデンの宙の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

火の鳥 エデンの宙(2023年製作のアニメ)
2.7
手塚治虫のライフワークにして、生命をテーマにした大作「火の鳥」。時代設定毎に多くのパートに分かれた同作は、今で言うマルチバースに似た構成を持ち、同氏の漫画の中で僕が最も好きな作品なのだが、アニメ化された物となると、正直どれも悪い印象しか残っていない。という訳で「望郷編」のアニメ化となる今作も複雑な思いで一気見した。

環境破壊が進んだ地球を捨てて、たった2人で遠い星に移住した男女の物語。生き伸びる事を望む人間の本能と、孤独の苦痛を、千年単位のスケールで描く壮大な物語である。これまでのアニメ化作品と比べると、アレンジも功を奏して、良く出来た作品になっているとは思う。

ただ、こうして合計2時間の小奇麗にまとまった状態で見ると、連作形式で綴られた原作の世界観には遠く及ばない。そもそも「火の鳥」が描こうとしていたテーマが何であったのか、今作の中では殆ど語られないので、原作を知らない人が観て、どの程度の感想を持てるかと言われると、少し難しいように思うのだ。

しかも、11月には微妙に内容の違う劇場版が公開されるという。一見さんお断りのビジネスもあまり感心しない。原作の完成度が高いので、映像化となると、なかなか扱いが難しい作品だと思う。