瀬口航平

平家物語の瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

平家物語(2021年製作のアニメ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

評価があまりにも高かったので。

これは素晴らしかったです。
物語の構成や登場人物の魅力もありますが、800年という時を経ているからこそ、どこかこの時代に生きた人たちを冷静に客観視して、愛することができるのではないか。

好きなシーンはいっぱいですが、、びわが、祈ることが自分にできることだと悟ったシーンや、キヨツネの自死、徳子を救うシーン、などなどが印象深いです。
主に後半、心を動かされるシーンが多いです。
祈りについても深いと思いました。
祈ることしかできない、ではなく、祈ることができる、ということ。非常に深い思いを感じられました。びわだけではなく、徳子が出家してから祈っているという話も含めて。

たくさんの人たちが脚色を加えながら、平家の人たちの話を語り継いだというのも面白い。彼らは愚かだったかもしれないけど、それでも800年たくさんの、様々な時代の人たちに愛された。

物語っていうのは、愚かであればあるほど愛される、という構造があると思う。どこかの意識で、かわいいひとたちだと見れるというか。
そういう愚かな人たちにも、役割があるのだな、と思わされる。

後白河法皇と徳子、後白河法皇と重盛の関係があることで、単純な対立構造になっていないところが良い。
人間関係に深みが生まれている。
びわが、自分の父を殺した平家の人たちのことをこんなにも愛するところとかも、人間関係の深みを生んでいます。

オープニングが大好きです。
「何回だって言うよ、世界は美しい」

こんなにも戦乱の世にあってなお、彼らは四季の移ろいや花の美しさ、美しい笛の音、静寂というこの世の美しさを堪能していた。今のような電気とかある時代ではなかったからこそ、そういうものに対する畏敬の念や美に対する感受性があったんだと思うし、戦いという苦しみがあったからこそ、よりこの世の美しさに深く目を向けていたんだと思う。

彼らは決して権力とか名誉という、架空の幸せだけを求めて生きていたわけではなく、便利な世の中、平和な世の中の今の時代の人たちが忘れかけている、生きていくということの本当の美しさにもしっかりと感受性を広げて、日常生活から、この世界の美しさを感じられていたんだと思えた。

素晴らしい人たちが昔は居たんだな、とぼくは思えました。

素敵な話でした。

彼らの魂が、どうか安らかに過ごされていますことをお祈りします。
瀬口航平

瀬口航平