ニューヨークの市街地で、天空カジノのテロ摘発で発見されたものと同一の硬貨爆弾が爆発。 いつ、どこで、同様の事件が起きるかもしれない。 そんな悲惨なニュースを、病室の寝台から眺めることしかできない国木田に、条野は非情な取り引きを持ちかける。 その頃、敦は「天人五衰」から「白紙の本」の頁を奪い返す唯一の手掛かりであったシグマを失った絶望から立ち上がろうとするも、原因不明の昏睡に陥ってしまう。
頁は「天人五衰」のボス・神威が持ち歩いている。 乱歩の活躍によって救出された探偵社員たちに、福沢は命じた。 「この事件をぶち壊せ!」――。 乱歩は、指名手配中の身でありながら堂々と会見の場に姿をあらわし、真実を訴えて警察関係者の一部を動かすことに成功した。 一方、国連では、幾度となく世界の危機を救ってきた〝サムライ〟福地桜痴が、汎人類守機関「人類軍」の旗を揚げる演説を行い、万雷の拍手に包まれていた。
福地こそが「天人五衰」のボス・神威だった――! 強大な敵を前に、誰一人味方のいない〝孤独〟に震える敦のもとへ、芥川が駆けつける。 自分の代わりに「目」となって欲しいという太宰の命を受け、密かに敦を尾行していたのだ。 2人は福地を倒すため、異能力の混合技を放つための奇襲作戦を講じるのだが……。 やがて福地は、亜空間より神刀「雨御前」を取り出し、構えた。 「……戦場へようこそ」。
棺に眠る「天人五衰」最後の一人、ブラム。その牙に噛みつかれた者は、眷属として支配されてしまう。 福地は、自分を囮に敦を逃した芥川を吸血種とし、ポートマフィアを混乱に陥れる。 「武装探偵社が仕掛けたに違いない」と断言する鉄腸を横目に、立原は真犯人を捜査する許可を求めるが、福地が取り合うはずもない。 自ら捜査することを諦めた立原は「探偵社擁護派に渡して欲しい」と、天空カジノで入手した証拠の情報素子を福地に託すのだった。
部下を命令通りに動かせる精神支配の異能兵器「大指令(ワンオーダー)」。そんな大戦で生まれた忌まわしき遺物が、地球上の軍隊すべてを傘下に置く「人類軍」を指揮する福地のもとに届けられるという。世界征服に王手をかけた「天人五衰」の目論みを阻止すべく、探偵社社員たちは空港へ向かった。だが、その空港に、たまたま居合わせていた不運な少女・文。文は猟犬たちが探偵社の話をしているのを耳にし、彼らと縁のある存在であることを条野に感づかれてしまう。
空港に来る前から福地の正体に気づいていた条野も、立原に続き、その時空を超える恐ろしい異能力の前に倒れる。だが、条野は自分が敗れることも見越し、決戦の場に文を誘導していたのだった。そして、自分がいることに気づいた福地から逃れるべく、文が隠れた場所は……。探偵社は、空港で爆発を起こすことでテロリストが待ち受けていることをアピールし、欧州護衛官を帰還させることに成功した。しかし、フョードルの計略は乱歩の頭脳を上回るのだった。
ニコライが、シグマを連れてムルソーにあらわれた。 30分で死に至る毒を打ち、先に脱獄した方が解毒剤を得るという決闘を受け入れる太宰とフョードル。 ニコライは、地上の出口まで如何に世界最高峰の警備機構が待ち受けるかということを嬉々として説明し、用意した道具のうち1つを選んで持っていくように促す。 だが、そこで、太宰が指差したものは......。 その頃、ブラムが盗まれたことに気づいた福地は、空港中の吸血種に命じて犯人の捜索を行っていた。
福地より先にブラムを確保すべく空港を奔走していた敦は、燁子と遭遇。猟犬を味方にする僅かな可能性に賭け「乱歩に会わせろ」という燁子の要望に応じる。だが、燁子の言葉にはどこか違和感があった。鉄腸と交戦していた賢治は、通信機越しに聞こえた声から、探偵社の誰かが拷問を受けようとしていることを知り……。一方〝道具〟として選ばれたシグマは、まともに脱獄しようとせず「勝負のうちにフョードルを殺す」と豪語する太宰にあきれていた。
次々と人質になっていく、探偵社員たち。 だが、それによって福沢は、福地の目的が 「国家の消滅」にないことを確信するのだった。 若き日「共に剣を窮めよう」と誓った竹馬の友が、戦争によって道を違え、ついには互いの信念をもってぶつかり合う――。 やがて福地は、もはや正体を偽ることもなく、国連委員長に向け、5分以内に「大指令 (ワンオーダー)」の封印を解除しなければ吸血種による世界同時攻撃を開始すると通達する。
燁子から福地が懐く真の目的を聞き、打ちのめされる敦。 おぼつかない足取りで福沢のもとへ向かっていたとき、空にほど近い空港管制塔の屋根の上に文とブラムがいることに気づく。 だが、そこへ襲い掛かる、吸血種化した芥川――! 一方、フョードルのもとにも吸血種化した中也が付き従っていた。 一度は太宰が勝利を収めたかと思われたゲームは、中也によって逆転される。 迫りくる危機の中、太宰はシグマに後を託し……。
敦の声は芥川に届かず、羅生門がその手脚を引きちぎる。 ムルソーの太宰もまた、中也の銃に額を撃ち抜かれていた。 国連委員長との取引を反故にし「大指令(ワンオーダー)」で人類軍に侵攻を命じる福地。 核ミサイルが発射シーケンスへ移行し、無数の軍用ヘリが空を埋め尽くす。 不安げに空を見上げる人々。 「みんな死ぬ……なんで?」。福地の使役から解放すべく、ブラムに突き刺さった聖十字剣を必死に抜こうとしていた文は……。
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