シズヲ

けいおん!のシズヲのレビュー・感想・評価

けいおん!(2009年製作のアニメ)
4.0
『らき☆すた』辺りが開拓した“日常系アニメ”というジャンルをある意味で究極的に完成させた作品。学生時代に視聴して衝撃を受けたのが懐かしいなあ。部活動を題材にしながら明確な指針を排除し、とにかく“目標なき日常の享受”に終始。何か大それた事件が起こる訳でもなければ、物語が向かうべき目的地が提示されることもない。適度な虚構性によって地盤を固めた上で、“女子高生たちのノンビリした日常”が生々しいリズム感と共に描かれていく。ドラマチックな描写もあるとはいえ、あくまで日常的関係性の延長線上にある出来事として提示される。最終回における文化祭へと向かう唯ちゃんの独白なんかは“精神的成長”の要素なんだけど、その根底にもあくまで“何気ない日常に対する肯定”がある。

監督を始めとする主要スタッフを女性陣で固めることで、基本的に男性向けのジャンルだった“美少女萌え”に一種の女性性を組み込んだことも興味深い。程々にあざとさを残しつつも露骨にセクシャルな描写は排除し、更に女子同士の掛け合いにおける独特のテンポを重視するなど、当時では斬新な要素がちらほら見受けられる。表情や仕草に含みを持たせて心情を物語るのも印象的(ここは2期以降のが強いかも)。キャラデザも原作より柔らかいタッチになっていて、言うなれば“万人受け手前の萌え絵”で描かれているのが印象的。京アニは本作以来この絵柄の路線を引き継いでいる印象。

話数が増える2期から本作の方向性は更に先鋭化し、まさに“女子高生の日常アニメ”そのものと化す。目標設定や競争意識を徹底排除し、何もせずに女子だけで平穏な日々を過ごすという内容はある意味で“男性的価値観からの開放”めいたものを感じてしまう。関係ないけど自分はムギちゃんが一番好き。
シズヲ

シズヲ