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イカゲームのhiyoのネタバレレビュー・内容・結末

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

安全圏から殺し合いをエンタメとして見てしまうのは、古来から続く人間の文化の一つだと思うと、なんとも言えない気持ちになります。

貧困や格差、虐待など社会問題の地獄への風刺があって面白かったですが、参加者を「死んでいい命」どころか、作中指摘されてるように、まさに競馬の馬として見ている自分自身を自覚して、苦かったです。それって露悪的に描かれてたVIPたちと同じ視線なわけで。

もちろん、エンタメだけで終わるシナリオではないのはわかるので、手段としての「殺し合いゲーム」なのもわかるのですけれど。

賞金獲得のためにはたった一人の生き残りになる必要がある以上、人数を絞るためにビー玉遊びの展開もわかっていても悲しかった。
でもその悲しみも、結局用意されたシナリオを楽しんでいるからこそ生まれた感情なんだと思い知るので…泣いてしまったけど、泣いてしまうことが傲慢だとも思いました。


それでも、ジヨンの受けてきた性暴力の痛みがさらりと、でも確実に、差し込まれているのはよかった。子どもに対する性的虐待は許されないという、社会的なメッセージになっている。
それから、日本では外国人技能実習生へのあからさまな人権侵害があっても、彼らをメインに入れるドラマは生まれなそうですが(知ってる限りではMIU404で1話ありましたが、メインキャストではなかったですし)、アリがいたことで貧困の問題が国内だけでなく、グローバルな問題であること、搾取される側が搾取している側にもなり得るという構造の重層性が見えてよかったです。

そういうさまざまな社会的なメッセージを、より多くの人に可視化するためには、やっぱり殺し合いみたいなセンセーショナルな方法が、注目度集める最適解なのかな…
多くの人に、まずは問題が存在することを知ってもらう、可視化することが、社会を変えていく一歩だとは思うし、イカゲームの制作意図の一つはその辺にあると受けとりました。


エンタメとして楽しんだところの一つは、それまで絶対王者のように泰然と構えてたフロントマンが、VIPやオーナーの存在がわかったとたん、胃が痛い中間管理職になっていたところです。
兄弟だったことはなんとなく察しても、まさかイ・ビョンホンとは思わなかったので、びっくりしました。
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