平山夢明原作を映像化した作品って、個人的には微妙な作品しか観た事がありませんでしたが、本作はＴＶドラマとは思えないクオリティの高さに唸ってしまう和ホラーです。
タイトルの実話怪談、平山夢明『超怖い話』をまんま映像化した１話完結の作品ではありません。
奇怪な話に「東京伝説」シリーズの”人間の狂気”や”業”を織り交ぜながら、不条理さより因果応報を基軸に、平山夢明集大成のような大変面白い連作作品なのです。

この作品の監督さんは余程平山氏のファンなんだと合点がいく作りなだけではなく、ＳＦ要素のエッセンスをまぶして独自の世界観を構築してるのも素晴らしいと思います。
勿論映像もちょっと安っぽいながらも雰囲気を壊さないＣＧを巧みに用いたり、終始不吉な予兆を感じさせ、観る者の不安を煽るモノクロ調のダークな画、原作本の特長であるグロテスクな画などもきちんと盛り込まれ手抜きはありません。
和ホラーＯＶ等でげんなりする演者の素人演技なんかは全く排除されてますし、逆に父親を演ずる菅田俊が徐々に狂気に冒され始める不気味な演技やリアルな絶叫で中耳炎になるんじゃないかと心配してしまう娘役の野村恵里の役柄がはまりきってます。

まぁ、原作本生粋のファンが観れば「これは超怖い話じゃない！」と突っ込み入れられるかもしれませんが、視点を変えれば原作をまんま踏襲した映像ではない分、意外性があって愉しめるんじゃないでしょうか。
今回初見時から久しぶりに再見しましたが、再見して本作のクオリティの高さを改めて実感しました。

最近では沖縄のTV局が製作の疫(えやみ)みたいな真摯かつ良質なホラーオムニバスドラマが出てきてるけど、本作はその走りなんじゃないかと。
平山夢明作品の実写化は「無垢の祈り」しか成功例がないと思ってたけど、やっと見れた本作もいい感じ(両作とも監督が同じなのは納得)。
モノクロがかった画質が低予算故なのか狙ってるのかは定かじゃないけど、明らかにそれがこの独特の雰囲気に一役買っている。
怪異も人怖も不気味さや不穏さを漂わせつつごった煮でぶつけてきて、終盤には菅田俊の凄まじい形相で最高到達点。
ちょっと惜しいのはいくつかの凶行をもうちょいえげつなく映してほしかった。やってる事は相当えげつないのに、TVドラマだからハッキリ映せないのは分かるんだけど勿体ない。

昔夜遅くにやっていたこのシリーズ。めっちゃ好きだったし怖かった。何よりストーリーに惹かれた。改めて見直したい。