Nella

Pachinko パチンコのNellaのネタバレレビュー・内容・結末

Pachinko パチンコ(2022年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

このドラマが素晴らしいことは、わざわざ私ごときが言うまでもないので、全然関係ない自分の話をします。
私は「ミッドサマー」の感想でも書いたけど東京生まれ東京育ちで所謂、同和地区に近い場所に住んでいた。小学5年の時、14歳の韓国人の男子がクラスに転校してきた。彼は物静かでシュッとしていて大人っぽく、何より女子にも優しかったので、はちゃめちゃにモテた。(向こうからしてみれば10歳なんて子供同然で、優しくするのは当然だったろう。しかし男女分け隔てなく優しい同学年の男子は、他には皆無だった)
ある夜、スーパーにお使いを頼まれて公園を通りかかると不良達の集会があり、彼が仕切っていた。私は「あの子ヤンキーなのか」と思った。彼は韓国語を話していた。クラスで静かなのはきっと言葉のせいもあったのだろうけど、あんなに大人しくて優しい子なのに、どうしてヤンキーの頭なんか張らねばならなかったのだろう。

そして30過ぎて結婚話が持ち上がった時、私の父は自営業を潰してしまって、父の下で働いていた弟は、繋ぎでパチンコ屋でバイトしていたのだが、結婚しようと思っていた人の母親から「パチンコ屋というのは朝鮮人が働いている所。そんな所に勤めている親類がいる人はちょっと…」と言われたのである。

「はあ??」としか言えなかった。朝鮮人が働いているから、何??

じゃあ同級生に朝鮮人がいるなんて、もっと駄目じゃん。
なんかよく分からなかったので、結婚相手にとりなしてもらった。いま考えると息子が何の相談もなく勝手に結婚相手を決めてきたのが気に入らず、とにかく私の何もかも気に入らなかったのだろう。
私の勤務先は渋谷の外資系の店舗で、外国人観光客から「ここは当然、英語通じるよね?」という勢いで話しかけられた。なので仕方なく英語を勉強した。退職後、神奈川県Y市A区の店舗でバイトしていたのだが、そこは外国人のお客は一年に一人しか来なかった。その一人のお客様が帰った後、同じテナントの男性社員が「日本に来たんだから日本語喋れっつんだよな!」と言い出して、私は本当に本当にビックリした。神奈川県Y市なんて全国的に見たらお洒落な都会って感じだけど、そんなもんなんですよ。イジメにも遭ったし、普通に閉鎖的な田舎だった。まあ私は運良く育った環境に恵まれたのかもしれない。

義理の母とは都合3回くらいしか会うことはなく、去年亡くなった。どうして日本にいる朝鮮の人がパチンコ屋を経営しなくちゃならないのか。それを知ることなく亡くなって、とてもとても気の毒に思う。

追記・原作を読みたくて文庫買ったけど「自分のルーツについて考えたことのある人、ない人、日々生きづらさを感じている人、いろいろな人に響く、普遍的な“救いの物語”」って帯のコピー、やばくないですか?自己啓発本かよ。腰が引けすぎで小学生の感想みたい。これぞヘルジャパンのザ・わきまえた作家な訳よ。
今年は、関東大震災から100年という事で朝鮮人虐殺を描いた漫画も発表されている。私は子供の頃に父からその話を聞き、本なども紹介してもらったので、そんなものはなかった!と怒り出す人は、一体何言ってんの頭大丈夫?と思っていた。現に虐殺の生き残りの証言は、こうして子孫に継承され、アメリカに渡って小説になり、ドラマになった。もうしらばっくれられないと思う。

GQに内田樹氏の感想があったので引用します。
-------
しかし、そうやって時間が経つにつれて、隣国の人たちは自国史についての知識を深め、日本人は自国史の暗部について何も知らないという非対称はますます亢進する。過去について知らない人間、知ろうとしない人間には未来を創り上げることはできない。当たり前のことである。
今も日本では、自国史については「きれいごと」だけを並べて、日本人はこれまで隠すようなことは何ひとつ犯したことがないという幼稚な「歴史修正主義」がはびこっている。そういうシンプルな物語を服用していると「気分がいい」という人がいることはしかたがない。けれども、日本人がそんな人間ばかりになった時に、国際社会は日本人に「未来を託す」ことをしなくなるだろう。
Nella

Nella