うっちー

愛と、利とのうっちーのレビュー・感想・評価

愛と、利と(2022年製作のドラマ)
4.1
 ちょっと遅れての鑑賞。まぁ、なんという苦しくも切ないストーリーなのか。こんなドラマだと思わなかった。意外に評価低い様ですが、この濃密な心情描写と予想の斜め上をいく展開。見始めてから心を支配されてしまいました。設定や主なキャラの世代はちがえど、この息をのむ展開は『わかっていても』に共通するものを感じました。でもこちらの方がメインキャラが抱える背景がシビアなので、切なさも数倍増しており、胸張り裂けて泣きそうになる場面も多々。

 とある都市銀行の支店内の同僚であるサンスとアン・スヨンのすれ違いだらけの恋愛模様を数年の経過とともに描くドラマ。サンスに積極的にアプローチする裕福な家の娘で同じく支店のメンバーになるヨギョンや銀行の守衛でスヨンに憧れるジョンヒョン(チョン・ガラム君❤️ こういう苦労する青年役多いね。ハマっていた)をメインに4角関係になってゆくのだけど、初めのうちのうれし恥ずかしな光景から、次第に格差、出世欲、金、それぞれの家族や友人関係の事情なども孕み、ドロドロかつ重い展開になってゆく。

 まずムン・ガヨン演じるスヨンのキャラが凄い😓 女神の様な容姿で窓口業務も抜群にでき、ふだんは優しく穏やかなのに、人との距離の取り方が特異で、業務以外で隙をみせることがない。この透徹した孤高の女子像が強烈で、彼女に少しでも近づきたいサンスは始終振り回される。でもユ・ヨンソクが演じるサンスは、突き放されても、逃げられても、暴力的に乱れたりすることなく、ひたむきに彼女を慕い続ける。もう、ヨンソク氏しかいないでしょう、というハマりぶりでうるうるしました。
 また、ヨンギョンは金持ちの嫌な女感をみせないキャラになっていて、誰とでも、スヨンとも仲良くしようという稀有な存在。サンスの本心に気づいたあたりから取り乱すけれど、基本的に常識のある朗らかな女性で(車押し付けるのだけは困った😓)、彼女に共感する人は多そう。また、なりゆきでソヨンが付き合い、一緒に住むことになるジョンヒョンも、最初ただの間男扱いかと思いきや、貧しい境遇ゆえのコンプレックスや自分でもスヨンを愛するのかわからなくなってしまうような苦しみを味わう終盤にかけて単なる脇役に成り下がらない存在感でとてもよかった。16話で、夢を叶えた姿とそれを見届けたスヨンとの場面では思わずウルッとさせられた。

 サンスとスヨン、本来2人の間にある壁は本来それほど高くなかったはずだ。サンスもスヨンも豊かな家庭ではなく、ともにいろんな面で苦労してきた若者だから。それなのに、それなのに、なぜそうなる? なずそんなに苦しむ? ちょっとした意地の張り合い、気の緩みからのなりゆきにまかせた関係、自己肯定感が乱高下したり、心の奥の部屋の鍵を頑丈にしすぎたり、、、そんな積み重ねが彼らを苦しめてゆくのだけど、その様をこんなにじっくり描くドラマがあるんだと本当に驚き、感心した。辛いしイライラするけど先が気になる…で走り切った16回。見事でした。
 この濃密さは、昔みた倉本聰とかのドラマに通じるものを感じて、それもちょっと新鮮かつ懐かしかった。あまりに苦しみに耐えすぎて、最後には割と晴れやかな顔で「もし、あの時」追想を語り合うふたりの場面も良かった。こんなのありかよ〜笑。
サブキャラでいいなと思ったのがサンスのお母さん。サバサバして賢く、思慮深く、カッコ良い。ヨンギョン母との友人関係も素敵でした。
 モヤモヤ、イライラしたのに満足な見応え。すごく好きなタイプのドラマでした。シティポップ的な音楽もとても良かった‼️
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