うっちー

財閥家の末息子〜Reborn Rich〜のうっちーのレビュー・感想・評価

財閥家の末息子〜Reborn Rich〜(2022年製作のドラマ)
4.9
遅ればせながら視聴。噂に違わぬ名作ドラマだった。出ている俳優のタイプはかなり違うけれど、去年観た2010年の『ジャイアント』との類似点を感じた。財閥、貧乏人、復讐、知力での成り上がり、韓国現代史、経済&産業の構造転換、そしていつの時代も変わらぬ家族ならではの情と葛藤など、さまざな要素が緻密に描かれていた。正直ソン・ジュンギは(可愛すぎて💦)あまり好きじゃないのだけど、全く気にならない面白さだった。

財閥グループ、ソニャンの高卒社員(でも幹部)のヒョヌが社内資料で発見した裏金の処理を命じられた先の海外で何者かに襲われ、死亡したかと思いきや、目覚めたらソニャンの一族のある一家の息子、ドジュンに生まれ変わっていた!というタイムリープもの。未来を知っており、なおかつ地力の高いドジュンは、持ち前の知恵と度胸で一族の長であるヤンチョル(イ・ソンミン)に取り入り、ヒョヌを裏切ったソニャンの乗っ取りを画策してゆく、という筋書き。財閥家ならではの金がらみの争いがこれでもかと応酬されるが、他作よりシリアスでスリリング。笑いの要素もほとんどないのが逆に清々しい。また、ヒョヌの戦略は暴力に訴えるものではなく、あくまでも金、株などであるため、全体的なトーンが知的なのも素晴らしい。

ヒョヌは極貧家庭の息子なので、庶民の苦しさが身に染みている。その中身のドジュンが投資家や経営者になってからの戦略に密かに貧者救済の目が潜むし、ヒョヌの実家を覗きに行ったりするシーンもあり、時にジーンとなる。ドジュンの最終目的は、ヒョヌの中身であるがゆえの復讐のように見えるが、個人的な遺恨というより、畏れを抱かざるを得ない先達である祖父ヤンチョル、そして彼らの世代や暴利を貪る財閥一家に挑戦し一矢報いることが大きなテーマになっているように思えた。なので、大事な部分では低劣なドロドロの争いよりも知力と胆力のバトルというか。また、争いや憎しみの感情だけでなく、とくにヤンチョルへの畏怖や尊敬も感じさせ、忌の際に駆けつけるドジュンの姿にはハッとさせられた。

金融や経営に明るくない自分的には、大企業の買収や経営権の移行の目まぐるしさに、特に終盤クラクラさせられたが、逆に勉強になった。

とにかく出演者全員がそれぞれ素晴らしいし、観終えてちょっと放心してしまった💦 しかしやはりイ・ソンミンの存在感デカい。迫力だけではない、繊細な表情の変化に目が離せなかった。もう一周したい。文句なしの名作だった。
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