真田ピロシキ

京城クリーチャーの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

京城クリーチャー(2023年製作のドラマ)
3.3
その付け合わせは正しかったのか。日帝へのレジスタンスに731部隊によって生まれたクリーチャーホラーを加えて、エンタメ性のある歴史ドラマを作ろうという目論見は分かる。なのだがハッキリ言ってクリーチャーがかなりありがち。君さあ、本当はアメリカのラクーンシティってとこから来てない?東京大空襲後で配色濃厚な日本軍が起死回生として望みをかけてるそうだが、お約束通り制御はできておらず、できたところで米軍に勝てるとも思えない。燃やされておしまいでしょう。

困ったことにレジスタンスドラマとしてはなかなか面白い。日帝支配下で特権階級の朝鮮人として上手く立ち回っていたつもりのチャン社長が徐々に秘めていた民族独立の炎を上げてヒーローとなる姿は胸が熱い。良いのは9話で仲間の裏切りを聞かされて「だがそんな事態に追い込ませたのはあなたたちだ」と日本人富豪女性の前田さんに啖呵を切るところで、本来とても弱い人たちが抵抗せざるを得なかった切実さと日帝の悪辣さが強く印象付けられる。これは今パレスチナで長年に渡るイスラエルの侵略からハマスが台頭したことも想起させられ、どっちもどっちは欺瞞でしかないことを露わにされる。もっともこのドラマのこういうのが気に食わない人ってイスラエルを支持してるんだろうけど。

その真剣さを退屈なクリーチャー部分が水を差しててハッキリ言って眠い。と言うか時々寝てた。何が問題なのか考えたらこのクリーチャーに比喩されているものが見えてこないからだった。人体実験の被害者で人間性を失っているがそれ以上を自分には見出せない。似ていると感じたので『仮面ライダーBLACKSUN』があり、あれも相当歪な内容だったが、怪人はあからさまに差別される在日朝鮮人などのマイノリティを表していてそれがドラマ部分にしっかり結びついていた。これのは少し前に見た映画『オオカミ狩り』のバケモノと一緒でB級ホラー映画のスパイスとしての設定くらいにしか感じられない。しかもクリフハンガーで続くと来たもんだ。戦争終わったのに。あ、生き返るの?アメコミみたいだな…アホが"反日"ドラマと言って喚いていたが、本作の微妙なスコアはそれとは関係なく妥当な評価と感じる。