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フランクリンのBlueのレビュー・感想・評価

フランクリン(2024年製作のドラマ)
3.8
このドラマを面白く見るのに歴史の事を書きたいと思います。

オススメか?と言われたらちょっとわからないw。ただフランクリンなくしてアメリカは語れませんし、この後のフランス革命という歴史的な大転換にもアメリカとフランクリンは主要クラスの存在でもあります。
個人的には見て良かったし、世界中の歴史好きな人がTOP5にあげるであろうフランス革命前夜の出来事ですから、歴史に興味ある人は必見です。

まずアメリカの植民地支配でスペインやポルトガルが南アメリカに侵略して金、銀など強奪してました。
そこで遅れてはならないとイギリス、フランス、オランダなどが北米を侵略していきます。しかし北米には金や銀がなく、それぞれ国同士でいがみ合いながら工業/事業や農業をする事になっていきます。
莫大な投資の他にアジアの侵略もしていて財政もかなりひっ迫してましたから、イギリスはアメリカに侵略/入植した人々から税金を取ろうとする→→→重税すぎて払いたくない→→→イギリスが脅しをかける→→→イギリスが攻めてくるぞとビビりまくり、市民が銃をとって臨戦体制になる→→→ここでアメリカが少し一つにまとまる→→→ヨーロッパで産業革命で事実上の一強状態で最強と謳われた海軍の前にズタボロにされて陸地に逃走→→→何度も遠征したくないからイギリス軍は陸に侵入していくが、アメリカの武装した平民がいるところを偶然通ってボロボロになって敗走→→→イングランド国王が軍隊もロクにいない国にやられて恥かいたとブチ切れてアメリカぶっ潰すと宣戦布告→→→ええ?俺たちも?とフランス、オランダ他の侵略/入植した人々も一致団結して戦うハメになる。

ここでベンジャミンフランクリンの登場となります。戦うといっても金がない。そこでフランスに多額の金、物資、兵隊の援助をもとめた、という事になります。
最大の謎は、なぜアメリカの要求にフランスは応えたのか?という事です。

上記に示した通り、様々な国の人々が入り交じって一つにすらまとまっていなく、最強国家イギリスの重税の要求に応えた方が良い、と賛成派、反対派が実は同じくらいだったと言われたりしてます。この状況下で脅されてイギリス軍が我々を滅ぼしにくるぞ、と市民に伝播して冷静な判断ができないくらい国家としての形がなかった状態でした。
さらにフランスもイギリスの産業革命で安く工業製品をはじめ流入してきて、国内産業は大打撃を受けていました。はっきり言うならば財政難でよその国にお金を貸す余裕は全くなかった状態であったという事です。

例えるならば最強のボクサーにプロボクサーのライセンスをようやく取得したばかりの人間に投資をして勝たせる事ができるか?という認識に近いと思います。、、、ちがうかなw。

そしてヨーロッパの王族、貴族、聖職者を中心にアメリカは無法国家の野蛮な人間達だと思う一方で、王が全てを統治する時代にあって王がいないというのはどういう事なのか?と、とても興味がありました。

この頃のヨーロッパの多くは王族、貴族、聖職者は税金は一切払わず、土地も聖職者の物でした。
一般市民の収入の8割以上は税金で取られ、空気にも死んでからも税金を取られる状態で公地公民といえばいいか、一般市民は王様の所有物といって過言ではなかったので、王様がいなくて国が統治できる事態が理解できなかったりしました。

アメリカの政治家や商売人はとにかく金と人が欲しいためにアメリカには身分制度などなく、差別もない、チャンスしかない。能力ある人間は誰でも富が得られるような国でこのアメリカに投資して欲しい、ノアの方舟に乗ってぜひ新天地/天国のようなアメリカに来て欲しいと、嘘八百並べる訳ですね。

こんな状況下の中で印刷業で財をなし、雷を凧に落として事実上の電池/蓄電池の原型となるライデン瓶に電気を貯める実験を推奨し、フランスのダリバールが初めてその実験に成功して功績をあげ、フランスではフランクリンは偉大なるスターのような存在だった、という事です。

ここまでの歴史を知った上で見ると興味深く見れるのではないかな、と思います。
Appleのドラマはルックスや背景がオシャレである事が大きなポイントですが、貴族の服装は今見ても古臭くなく洗練されていたし、見飽きないところがありました。

正直、マイケルダグラスがフランクリンを演じるのはちょっとイメージと違うのではないかなと思っていましたが、さすが数多くの女性と浮き名を流しただけあって、そういう事か、と思いました。
彼もプロデュースにまわっているみたいですが、アメリカの愛国心の強さがドラマ自体に出ていたけど、今の時代と照らし合わせて時代の価値観とそぐわないところも正直感じました。
当時フランクリンが政治家だった時代にネイティブアメリカンの人々の土地の権利を保護すると言いながらも実際には大量虐殺をしていたので、その点は指摘すべきだったと思います。
この電気文明にしたって民主主義にしても聖人や清廉潔白な人間が作った訳ではありません。
この後起きた凶作続きで食べ物がない事が発端で起きたフランス革命で、民主主義の基礎となる憲法を制定した有力者の一人、ロヴェスピエールは、憲法に反対する人物、王族、貴族を片っ端から処刑していき、最低でも2万人以上は殺されています。
理想は高いが、実現のために多くの人を処刑した、そのような土台の上に民主主義政治は成り立っているという見方もできる。

ちなみに混乱状態のフランスに危機感を感じてイギリス、オランダ、イタリア、オーストラリアという周辺国はフランスを叩き潰そうとします。
各国の王族達は自分達も処刑されてはたまったものではないし、この混乱が自国に波及しては困ると思ったからです。
この時にはロヴェスピエールも処刑されて、政治、治安、軍隊と全てがボロボロになっていた状態で、押したら倒れる状態の危機を救ったのがナポレオンです。
身分制度を撤廃した事によって、その才能を発揮する事ができるようになったナポレオンは、連戦連勝とはいかなかったものの周辺国はズタボロにしながら、遠征先でも手紙で治安、政治、恐怖政治によって破壊された都市部の再建と復興、そして公共事業も全て一手で請け負ってフランスを再興します。

そしてナポレオンもまた権力を一人で掌握して没落していく事になって、国民主権の時代が第一次世界、第二次世界大戦後に訪れてくる流れがあります。

長々と関係ない話を書きましたがw、この大きな歴史の大転換にフランクリンは主要クラスの人物である事は間違いありませんし、アメリカは彼の活躍なくしては語れません。そしてアメリカという国の精神性も独立共に生まれているとも言える。
歴史史実に基づいて制作されたのは間違いなく、ラストはやはり歴史の大きな1ページを触れられてとても嬉しかった。ぜひ見てもらいたい一作です。
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