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SHOGUN 将軍のBlueのレビュー・感想・評価

SHOGUN 将軍(2024年製作のドラマ)
5.0
ストーリーに関してはネタバレありの感想を、第10話で書きました。藤の名前の由来がわかるとより味わい深く見れると思います。

昨年よく海外ドラマでピークTVという言葉を目にしましたが、おそらく海外ドラマ/ TV showが制作される量が最大になったという事かなと思います。
その中でもエミー賞を受賞あるいはノミネートされてヒットを飛ばして話題になったドラマを挙げると、ゲームオブスローンズ、マンダロリアン、ブレイキングバッド、サクセッション、バリーなどが挙げられます。
これらのドラマは日本映画/黒澤明の影響がかなり強く受けた作品だったりする。

日本映画は戦争に負けて、国のために死ぬ事が美徳とされていたのに、終わってみるとあの精神性はなんだったのか、国とは組織とは人とはなにか?という問いかけをもとに戦争経験者や戦争従事者が映画を作ります。
当時アメリカでは黒人にも人権を、という公民権運動が盛んに行われつつある状況で、そこに生きると七人の侍という作品はアメリカでも衝撃を与え、映画制作を志していたスピルバーグ、ジョージルーカス、コッポラ、スパイクリーなどに多大な影響を与えます。
今の時代もまたブラックライヴスマターという運動が行われていましたし、スポンサーがいなくともドラマ制作ができる動画ストリーミングを主とした会社は人権意識にも敏感で、かつリアルな物語を作って視聴者にアピールする。
ここに国とは、組織とは、人とはなにか?というリアルな問いかけをした作品を作った日本映画に注目します。

黒澤明の生きるでは、志村喬演じる渡辺課長が癌で絶望にくれているが、自分にもやる事があると気づき、階段を降りて行く時にバースデーソングがかかります。

人生の階段を降りて行く最中に初めて人生の意義に気づいた瞬間です。ブレイキングバッドの1話目では、末期の癌を言い渡された主人公が、自分のバースデーパーティをやってる最中にあるニュースを見て、自分のやるべき事に気づき、決意をします。

ゲームオブスローンズでは国、地域で争いがあるが、北から謎の軍団が来るという事で一致団結して戦うというストーリーです。
これは七人の侍で侍/政治家と村人/国民は仲は悪いが一致団結して盗賊と戦うというストーリーとGOTは一致するし、農民の子でサムライになれない三船敏郎と王と正妻の子として生まれなかった落とし子のジョンスノウと重なるし、強い侍を仲間に入れて戦術を立てる志村喬の役をGOTではダヴォスがやります。ちなみにダヴォス役をしたリーアムカニンガムはNetflixの三体でも、頭脳明晰な人物を組織に引き入れて戦術をたてる役をしています。

他にもサクセッションは悪い奴ほどよく眠るからインスパイアされてるだろうし、バリーは用心棒、そして将軍と同じく看板ドラマのマンダロリアンも用心棒と子連れ狼から影響を受けてる事がわかります。
つまりピーク TVを、空前のヒットを飛ばしたドラマの下支えしていたのは日本の映画、負の遺産によって、そこから答えを導き出した者たちの映画であったという事が強く指摘できると思います。

残念ながらそれを評論できる人は日本ではいませんが。点と点を深掘りできても線で結ぶ事ができる評論家がいない事が、この国の悲劇といえる。

でもアメリカではこの影響力のある日本を舞台にしたら、ヒットすればエミー賞でノミネート、受賞も夢ではないし、それは自社のブランド力の向上とアジアにおいてより視聴者を獲得できるという算段がしっかり立っていたからこそ、ここまで、巨大な予算を投じて日本の歴史を元にしたドラマ制作ができたのだと思います。

大陸の歴史は宗教による対立、ゲルマン人の大移動、イスラム教の勃興、そしてモンゴル民族の勃興と常に血で血を洗う侵略の歴史でもあったけど、日本は侵略される事は元寇と黒船以外なく、ほとんど自国で解決という沈静化でおさまった歴史で、言うならば村社会によって形成されたところが多くあるので、大陸の価値観と島国の価値観はあまりにも違うので、多くの西洋人には理解できない点があったと思います。

それでも知ったことではないとその時代、日本人に精通する価値観で妥協なく押し通して西洋でもヒットした事は驚きに値すると思います。
ただ理解できないながらも世界はSNSやメディアを通じてリアルかどうかは別として可視化されて村社会になりつつある、という事実はあって、今の状況にこのドラマが配信されるのはとても意味深くも感じました。

ガザ地区の問題でガザの人々に想いを寄せた発言をした俳優が映画から降板したり、事務所をクビになった、というニュースは村社会ならではとも思うし、沈黙は秩序を保つけど平和とは程遠いという事実は実は日本人が1番知っているのではないかと思う。

西洋の食文化といえばトマト、ポテト、小麦、カボチャなど連想させるけど、トマト、ポテト、カボチャやピーマンなどは南米が原種で西洋のものではありません。
西洋が東洋を植民地化したのは貧しく弱かったからではなく、豊かであったから。その事も描かれているし、日本の歴史だけでなくキリスト教の歴史の一端も描いてもいる。

それは決して良くは受け取れないけど、このドラマではしっかりとキリスト教文化にも敬意を示していたと思います。多くの犠牲者を弔い、希望として飛ばした十字架の姿の鷹。

このドラマの真の評価は、まだ先なのかも知れません。
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