ヒロシー

メディア王~華麗なる一族~ シーズン4のヒロシーのレビュー・感想・評価

5.0
圧倒的面白さを最初から最後まで持ち続けたまま、さらに「家族」と「資本」がもたらす痛みを徹底的に揺れ動くカメラで収め続ける。そしてキャストのアンサンブルは類を見ないほどに光り輝く。こんな奇跡的な作品を世界同時配信してくれてありがとうU-NEXT。後半は本作のあまりのすごさに、映画館に行く気が起こらなかったレベル。

父VS子供の構図から始まった最終シーズンは、バチバチのバトルを最初の2エピソードで描いて見せて、次のEP3でどん底に落とす。そこからは原題の『Succession』の名の通り、愛し合っているはずの兄弟姉妹の見えぬ火花が飛び交う。それぞれの思惑は社会を思っているようでエゴに満ち、彼らが何か一つ決断をするたびに多くのものが葬られる。「どの殺人のことだ?」というセリフが最終シーズンで出てきて鳥肌が立った。

そしてラストエピソード。これまでこのある種どうしようもない金持ち一家をずっと見てきた身としては、彼らに屈折した愛情を持たないわけにはいかないのだが、それが強ければ強いほどうちのめされる。シヴが気づき、ローマンが察し、ケンダルは足掻いてでも無視しようとした残酷な事実。悪いのは誰かではない、自分たちだと察する。その結果出来上がったものがどれだけevilでも、その場に居続けることを選択しなかった(させなかった)彼らの人生は、最後の最後に正しい選択をした……のか?

言わずもがな役者陣は全員最高。ジェレミー・ストロングはドラマ史に残る難しい主人公・ケンダルの複雑な心の中を見事に演じ切った。そしてより複雑なローマンを完璧に見せてくれたキーラン・カルキンには脱帽。サラ・スヌークも最後まで聡明で、それでいて愚かなシヴそのもの。アレクサンダー・スカルスガルドは少ない見せ場で最大限の引っ掻き回しの立ち回り。そして今回もMVPだったトム役のマシュー・マクファディンも、エミー助演は確実じゃないでしょうか。しかし真のMVPは、彼らのアンサンブルに常に寄り添ったニコラス・ブリテルの劇伴でしょう。最高オブ最高。

泥沼展開になりそうな脚本家ストライキのことを考えたら、本作はピークTV時代最後の輝きになるのだろう。自分もドラマを追い続けるのはしんどくなったので引き際を探していた中で、こんな作品に出会えたのは幸運としか言えない。撮影、演出、脚本、演技、全てにおいて超一流。
ヒロシー

ヒロシー