英国の長寿SFシリーズ『ドクター・フー』のスピンオフ。

シーズン2までは基本的に1話完結モノだったのに対して、シーズン3は連続5話の一続きのストーリー。
ある日全世界の子どもたちが一斉に動きを止めたり同じ言葉を発するようになったりした中で、エイリアン絡みの事象ということで、トーチウッドの遺されたメンバー3人、ジャック、グウェン、イアントが地球を救うために奮闘する。

シーズン2までは笑いの要素もあったのに比べると、シーズン3はなかなかハードなSFスリラー＆ミステリー。
そして社会派SFとして観るとド傑作。
有事に国のトップが自分の保身しか考えない無能だと、多くの人間が傷つくということがよく分かる…
後に12代目ドクター役を務めるピーター・カパルディが、今作では英国政府の真面目で勤勉な秘書官役。
政府に尽くしているのに報われないラストはめちゃくちゃ泣いたよ… そして流石の演技。
ジャックとイアントの愛の結末や、ジャックが血の繋がった家族に対して下す決断もしんどかった…

トーチウッドシリーズの中では最高傑作では？ と思うのに、なぜかシーズン3だけ日本国内ではDVD化されていないみたいなのが解せない… 今からでもリリースしてください！

S1.2を見ていなくても、ドクターフーを知らなくても、これだけ観ても傑作。チルドレン・オブ・アース。地球の子どもたち。

「あなたの言うドクターが何故助けに来ない時があるのか分かった。人間があまりに愚かだとドクターは目を背けるの。」
ドクターに見捨てられた物語。
こう言う時、RTDの脚本にはよく政府が出てくる。DWの中身宇宙人とか、閣僚ガス攻撃首相に比べて、実にリアルで、このドラマが大人向けであるからこそだと感じる。


-----ネタバレ-----


敵わない宇宙人に、子どもを10%寄越せと言われたらどうするか。接種という理由をでっち上げて、弱い立場の子どもたちから選んで、引き渡そうとするのとか、そうだろうなと思えてしまうもの。
求めるものが子どもって、、、しかも薬物として生きたまま繋がれるなんて、、、残酷すぎる。

政府の中でも中間管理職のジョン・フロビシャー(顔は12代目ドクター)が、1番現実的に考え、自ら行動し、責任も負わされるという構図が残酷。フロビシャーの秘書である女性が、ルイス・ハピバに、彼がどんな人間であったか何度も何度も語るシーンが印象的。

その他全員の命と引き換えに子どもの10%を引き渡そうとする残酷な物語の終わりが、子どもの10%と引き換えに自らの孫を犠牲にするジャックで終わるのがまた地獄。酷すぎる。辛い。
でもだからこそ傑作。
この痛みが傑作。

たぶんドクターがドナと別れ独りで旅をしていた頃のトーチウッド。
突如世界中の子供たちが同時に静止、その後声を合わせ「我らは、我らは、我らは」と話し出す。
シーズン3は全5話と短く、基本一話完結だった今までとは違いシーズンを通して一つの大きな謎を追うことになる。
こんな状況でドクターが関与しない訳も、ドクターを認識してるハズの政府がエイリアンとの仲介にドクターを選ばない訳もないんだけど(まぁある意味ドクターだけど)、それはまぁしょうがない。トーチウッドのドラマだし。
シーズンが短いこともあってか、今までのような人間関係の面倒な部分は無くストーリーだけに注力されていて洗練されている。
内容はとても暗く残酷で、いよいよ大人版ドクター・フーとして胸を張っていいレベルに。
冒頭の掴みから上質な謎の提示、政府に対するトーチウッドの立ち回り、そしてエイリアンの要求とその理由のおぞましさ。
途中から「ドクターならどうする？」と自問しながら観た。
それにしてもジャックは不死身だからって簡単に殺されすぎ。