期待していたよりずっと面白かった。歌舞伎、宝塚、アイドル、お笑い、舞台系と俳優のバックグラウンドが多様で、そこから生まれる癖を誰も和らげようとしていないパッチワークのようなこなれていない雰囲気がよかった。昔の(今も?)マンガ雑誌は、お正月特大号の表紙に全連載作品の主人公が一堂に会したものだったが、あんな感じ。全員画風が違うまま動くからまったく飽きなかった。中村芝翫は他の大河のときよりずいぶん歌舞伎に寄せた演技をしており、彼が動くときだけ舞台が見えるようだった。好きな俳優というわけではないのだが、それらしく見せるための演技のパターンの蓄積はさすがであり、歌舞伎の人はすごいなあと思ったのだった。元就は老いてからが良かった。
毎回冒頭で最近の毛利家イベントの復習があり、ほどよく場面転換がある。切りのよいところで一時停止して、また歯磨きタイムなどに気楽に再開できる。今どきのドラマの「伏線回収」が霞む素直な話運びが好ましかった。楽しく見られるようにするための定石に則って作られていて、製作側の妙な気負いを視聴者に見せない態度が良い。ここ数年の大河はいろいろ狙いすぎで、ときどき肩が凝ってしまっていたかもしれないと気づいたのだった。