Relishi

街角のRelishiのネタバレレビュー・内容・結末

街角(1993年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

最高傑作です。
この衝撃は山田太一以来のもの。
93年のドラマだが、これは60年代や70年代の若者の姿に思える。
90年代にはすでにこんな若者は存在していない。
逼迫し、常に死が身近に存在し、理論武装する。
徹底的に身を滅ぼすことができ、知的好奇心が食欲より勝る。
平和を必要としない、議論と戦いを選び、命を投げ出せるほど知性に渇望する若者。この時代に私は昔から惹かれている。

第1話の菅野美穂が演じる女子高生が尊厳死という言葉を振りかざし、自分を傷めつける姿がとても理解できる。
10代特有のアンバランスさと盲目さが痛々しく、苦しい。
そこに気持ちを寄せ泣きながら走る男子学生もまた、大人では決して真似できない純粋さを持つ。

しかしながら、素晴らしいのは第2話、「覗く青年」。
脚本の持つ力を強く感じる。
覗いているのではない、祝福しているんだ。自分には見る力が備わっている、見ることにより見られる側を変えることができる。
壊れた家族を見続ける青年の、祈りにも似た眼差しが心を捉え離さない。
救うことのできない家族を涙を流しながら見つめる青年役を演じる、高場隆義という人の存在感が逸脱してる。
もはや登場するだけで涙が出る。
それほどまでに、深い誰にも触れない闇と、誰も理解できない崇高さを、表情だけで表現していた。
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