Relishi

彼女たちの時代のRelishiのネタバレレビュー・内容・結末

彼女たちの時代(1999年製作のドラマ)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

岡田惠和作品の中で、個人的にトップ5に入る好きな作品。
幾度も繰り返し観ている。

ありふれた日常を生きる、その中で生まれるささやかでありながらも切実な悩み、生きる意味、自己の存在の価値、誰もが抱える心の行きどころのなさをあたたかく優しく描いた傑作。

第一話の完成度が特に高く、「私はここにいるぞー」と屋上から叫ぶ場面は大変心を打つ。
また、椎名桔平の役も非常に印象深く、セミナーのエピソード、「私は最低な人間です」という作文を虚ろな姿で土手で連ねる場面、人間開発室という部署で過ごす時間、そこに残された前者の残した文章、切なく苦しく、でもそこから、それぞれの登場人物全てそうなのだが、小さくとも光を拾い集めていく姿に心があたたかくなり安堵する。

誰もが変わり映えのしない日々を過ごしている、けれどその中には小さくとも楽しさや幸福や笑顔が散りばめられている。
生きていくことは不幸ではない、つまらなくもない。
彩りなんてなくとも、生きていくことは、そんなに悪いものではないのだ。

この作品は特にそうなのだが、山田太一の影響を強く感じる。
岡田惠和はこういうささやかな営みを描くのが非常にうまい。
心に響く作品を世に送り出し続けている。
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