SAKUMATHENERD

ザ・ボーイズ シーズン3のSAKUMATHENERDのレビュー・感想・評価

ザ・ボーイズ シーズン3(2022年製作のドラマ)
4.0
MCU,DCの成功によりスーパーヒーローというジャンルが確立された昨今、そのカウンターとして打ち出された今シリーズも今シーズンで3シーズン目を迎えた。

「もしスーパーヒーローが実在したなら彼等はほぼ芸能人として扱われマネタイズのため企業に管理され、軍事活動、政治活動にも利用される。また、かならずしも彼等が善人とは限らず寧ろ難があり我々一般人と変わらず私利私欲に目が眩んでいる。」といった世界観で社会風刺、エロ・グロ、オマージュ全開でそういったヒーローに因縁を持つ逸れ者集団通称”ザ・ボーイズ”が”スーパーヒーロー”の闇を暴くビジランテ活動の様
が描かれる。

今作のテーマは、「選択としてのスーパーパワー」「スーパーパワーによって拡大されるその人が持つ本来の姿」にあると思った。Temp Vにより今までただの人間であった”ザ・ボーイズ”サイドもスーパーパワーを使えるという選択肢が与えられる。スーパーパワーを手に入れたブッチャー、ヒューイとその対比として描かれるスーパーパワーを失うキミコの描写からクソ野郎はよりクソ野郎に、戦闘衝動のある者はより好戦的にスーパーパワーはその人の持つ本来の性格、人となりを増長させるものであることがわかる。「スーパーパワーを手に入れる」という選択に対して否定的なMM、スターライト側と手段を選ばないブッチャー側の間で終始揺れるヒューイの最終的に出す答えが最終決戦において一つの決め手になる点も上手いし、だからといってキミコのように自ら再びスーパーパワーを手にする者が否定的に描かれることも無くテーマ対して開けたスタンスが感じられたのも好印象。

事実上主人公/ホームランダーとブラックノワールを筆頭に各キャラクターもそれなりに深堀されていた。ホームランダーに関しては完全に自暴自棄、満身創痍な状態で、失うものが無い闇堕ちしたスーパーマンと言ったところか。戦闘能力に関して頭3つくらいぬきんでいた彼も今作ではソルジャーボーイの復活やザ・ボーイズのドーピングにより同等あるいはそれ以上の力を持つものと対峙することとなり恐怖を抱く描写も描かれており、より彼の本質的なちっぽけさや憐れみが強調されている。彼が自身の血統に関しての秘密を知ってから取る行動からもわかるように彼は一貫して他者からの愛に飢えていることが明らかで、酷な生い立ちも相まってこれだけクソ野郎でありながら多少悲哀感じざるを得ない絶妙なバランスになっている。ブラックノワールは今まで謎が多い存在であったが、ソルジャーボーイとの過去の因縁から陰惨なバックグラウンドが明らかになる。なぜ彼が一言も発することのない常にマスクの下に素性を隠す今の状態に至ったのかその経緯は非常に酷で目を塞ぎたくなるもので、当時の黒人差別の醜さまで感じさせる射程の広さも伺える。

世論に関しても2,3周してコンプライアンス遵守疲れからか悪い意味でリベラルに振り切ってしまうホームランダー過激派もおっかなかった。米国での政治のすったもんだを見ていると現実でも起こり得ることだと思うし、先日亡くなられた元安倍首相の射殺事件の様なことが日本でも起こっている物騒な今日、全く他人事では済まされないと感じた。
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