あくとる

ウォッチメンのあくとるのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
4.5
「覆面は人を残酷にする」

ウォッチメン原作の34年後を舞台に、"病めるアメリカ"の社会問題を炙り出す。
今なお人種問題で分断するアメリカで、こんな劇薬とも言える作品を発表する製作陣の度胸に敬意を払いたい。

エピソード1冒頭、「これが本当にウォッチメンなのか?」と疑ってしまうようなシーンから始まるが、セリフに「ロールシャッハ」が出てくることでやっと確信できる。
覆面を被った警官たちと騎兵隊。
物語は何とも言えない物々しさに包まれる。
そして、エピソード1のラストで、このドラマがただ者ではないことに気付く。

あとはカオスの波に身を任せるのみ。
どのエピソードも最高に狂ってる。
観ている最中は、それぞれのエピソードがあまりに奇妙で一体どこに収束するのか分からないが、最終的には全てが美しく組合わさるのが見事。
特に印象的だったのはエピソード6。
この世の不条理と差別に憤り、自警団となる男の物語。
悪夢的とも言える映像がとにかく美しい。

本作の音楽を手掛けているのは、近年のフィンチャー作品に欠かせないトレント・レズナーとアッティカス・ロスの黄金コンビ。
あらゆる面で抜かりが無い作品である。