チーズマン

鎌倉殿の13人のチーズマンのレビュー・感想・評価

鎌倉殿の13人(2022年製作のドラマ)
4.8
ここまで静かに、だけど複雑でそして豊かな余韻を残して終わる作品にまで育つとは、素晴らしい作品でした。

大河ドラマはとりあえず毎年観はじめるも気がつけばもう観ていないということが多いですが、今回は久しぶりに最初から最後まで完走しました。
それぐらい面白く、一年かけて描く大河ドラマならではの“思えば遠くまできたもんだ”感がとても重層的に感じれるものになっていましたね。


三谷幸喜という作家は群像劇的な非喜劇人間ドラマが売りですが、全てを自由にできるオリジナル映画作品だどどうしても2時間でそれぞれが上手く物語が収まるように登場人物が単なるコマとして動かしていてキャラの扱いに愛情の無さを感じることもあるんですよね。
それが歴史モノの場合は史実の人物やエピソードという確固たる壊せない柱があり、同時に史実に残された情報は限られているので想像で埋める余白もあります。
その歴史という縛りが三谷幸喜の弱点をちょうど良い具合に補ってるように思います。

ちゃんと作品内に人間ドラマが立ち上がってくるんですよね。
だから『清洲会議』もバタバタしてはいますが三谷幸喜映画作品の中では面白かったです。

あとやはりドラマという長尺で見せていくジャンルが合っていると思います。


ということで合ってる要素同士がくっついた大河ドラマなんて面白いに決まっていて、『新撰組』『真田丸』と重ねるごとに磨きがかかって今回が1番題材として難しそうなのに、実は三谷幸喜の1番作家性を活かせる題材だったということでまあ面白かったですね。

現在ならではの読み替えと、逆に現在の倫理観には収まりきらないダイナミックな普遍性。
傑作、ほんとゾクゾクするような人間ドラマでした。
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