まさみ

カルテットのまさみのレビュー・感想・評価

カルテット(2017年製作のドラマ)
4.3
大和田とわ子と三人の元夫を見た時にも思ったけど今の時代に即したドラマ。
「適した」というより「即した」。
脚本家には不勉強なためここ数年来にデビューした人だと思ったら、「東京ラブストーリー」を手掛けた人だと知ってびっくり。他にも錚々たる作品を執筆してた。それでこれだけ今の時代に適応した脚本や会話劇が書けるセンスはすごい。

内容は飯テロ6:音楽4。テーマは広義における人間関係で恋愛色はなくはないが薄め。脚本家の人、恋愛の決着が書けないかわざと書かないのどちらなんだろ。
実績を見たらラブストーリーも書いてるし、あえて書かずに宙ぶらりんにしたのが正解だろうな。

カルテットを組んだ奏者四人の話。夢を追うことの意味や価値を突き付けられ、クリエイター職は耳が痛い。
印象的なセリフはたくさんあるが、某スポンサーの「志のある三流は四流だからね」が一番刺さった。ちゃまこの「六千万もらった人生に私たちはいた?」も。

アリスちゃんがナチュラルサイコパスすぎて怖い。何あの子。好きだけどわけわからん。
泣きそうになったのは三話と九話。すずめが五百円で買える花もってロッカーに納めた骨壺に会いに行くシーン、その後の食堂のやりとりにみぞみぞした。
「どんな酷い親(子)でも親子は親子、看取るのが義務」って考え方は、毒親やDVの概念が浸透し、虐待が取り沙汰される現代にそぐわないよね。
「カルテット」そのものが血の繋がった家族に追い詰められた結果、自分で選んだ家族(仲間)に救われる話だったわけで、欠点と欠点で繋がったドーナツホールの在り方に疑似家族の理想を見た。家守は自業自得だが。

コミカルな会話劇には何回も吹き出したし、毎回出てくるご飯シーンがめちゃくちゃおいしそうでお腹がすく。私も軽井沢の豪華な別荘に住んで毎日自動的にごちそうがでてくる生活がしたい。すずめが飲んでる三角パックのコーヒー牛乳飲みたくなる。

ちょっとひっかかったのは、作中三流扱いされてるカルテットの演奏が十分上手いこと。
素人の私の耳じゃぶっちゃけ音楽の良しあしがわからないが、ドラマに起用される以上音源を提供した奏者は一流の勝ち組なわけで、その乖離が凄く皮肉に感じた。
もっと現実的に描くならカルテットの演奏の質も落とした方が説得力でたんだが、本当にへたくそだと白けちゃうから難しい。

恋愛ドラマとして見たら各キャラの恋愛に何も決着付かず消化不良。それぞれの片想いはどうなったの?別府はまきは振られたって事で納得できなくもないが、家守→すずめに関しては動きがなさすぎて、もっと描写やエピソード追加してほしかった。
男女の恋愛よりはむしろすずめとまき、生い立ちが似た女性ふたりのシスターフッドにフォーカスされてた。
名前を付けることで違うものになる感情を、あえて名付けないまま描きたかったのだろうか。
脚本家の意図はわかるものの、受け手が想像力で補完してくれるのに甘えて着地点を描かないのは狡い。
ただそれを補って余りる満足感は得られたので、四人がわちゃわちゃやってるシーンが好きなら文句ない。

最終回の劇場のシーン、感動したけどドラマチックに描きすぎ。もとより野次や中傷目的で安くないチケット購入する人種なら、一曲目で退出はまずない。チケット代の元とるために聴いてく。
あそこをフィクションぽく演出するなら、余命9か月にピアニストやちゃまこ・こうた、まきの元旦那と姑、すずめの親戚の親子、「謝りたい」とかブログでほざいてた元同僚も劇場に来てほしかったなあ……。

すずめは「出ていけ」メモが100枚たまったらやめようって最初から決めてたんだろうけど、「せっかくの手紙だから」って読んでたのを踏まえれば、もったいなくてしまってた可能性も浮上する。
他愛ない会話が後の重要な伏線になるあたり、セリフで説明しないキャラの掘り下げが上手いなと感心した。
まさみ

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