まさみ

MIU404のまさみのレビュー・感想・評価

MIU404(2020年製作のドラマ)
4.5
YouTubeで沖田遊戯さんが推してたので気になって視聴。面白かった!!

まず伊吹が可愛い。年甲斐もなくチャラくてパーカーで黒縁メガネ。見た目陰キャっぽいのに野生のバカで陽キャ可愛い。志摩も無気力クール可愛い。
多分確信犯だろうけどキャラクター設定が漫画っぽい。そもそも主人公二人の名前からして伊吹藍(いぶきあい)志摩一未(しまかずみ)って、これBL漫画や小説のネーミングセンス。野木さんが腐女子かは知らんが腐女子でも納得。やたら距離近いわ最終回でペアルックぶっこんでくるわぶっとんだ。
九重(ここのえ)もそうそうない苗字だよな……。

「アンナチュラル」も大好きでほぼ毎回号泣してたが、加害者視点に立ってるせいかアレほどウェットじゃない。余談だが「アンナチュラル」好きな人は「きらきらひかる」もハマる説を主張したい。

脚本の野木さん言葉のテンポいいしホント笑かすの上手い。志摩の帰着に伊吹がツッコミ入れるの大好き。毎回でてくるうどん啜る談義いい。一話のアグレッシブ湯切りにはびびった。
最初はいけすかないヤツだと思ってた九ちゃんがどんどん愛すべきキャラになってく。陣馬さんと飲むシーン最高。最終回の「やったー!!」可愛すぎる天使かよ、何この尊すぎる生き物。メール途中で切れてるじゃん喜びすぎか。

一話完結のエピソードとしても完成度高い。
アオリ運転だの外国人就労問題だの、毎回深刻になりすぎない程度に社会問題を取り上げてるのもIWGP(原作の方)を思わせるフレキシブルさ。
一番好きな4話のミリオンダラー・ガール。ゲストの女優さんはぶっちゃけガールって年じゃないんだが、ちゃんとダブルミーニングになってて、ラストで伏線回収される構成が憎い。

ただツッコミどころもあって、SNSの読み方に気付いたの5人中1人だけかよ!!!!ってのが衝撃だった。
一日何時間もSNS浸かってるキャラはいなさそうだけど、桔梗は仕事上フェイクニュースチェックするし、伊吹や志摩だって動画は見るだろうに気付かないのか……秒数までご丁寧にプリントされてたのに……。
それともバリバリ仕事して一週間に一度程度しかTwitter見ない使わない人はあんなもんなんだろうか。基準がわからない。

八話の猟奇殺人も模倣犯なのはわかったけど、真犯人は放置なのか。指三本切り落とすとか中国語でケモノの名札とか、めちゃくちゃ意味深なのに……てっきり終盤で絡んでくるとか久住と関係してるのか妄想逞しくしてたら投げっぱなしで、結局どうなったのー!?とモヤモヤ……。
今後の野木さん脚本ドラマで真相わかるとかならいいんだけど、そうじゃないと「真犯人誰よ!?犯行の意味は!!?」ってめっちゃ消化不良。

とはいえ全体的にとても面白かった。伊吹と志摩のバディがいい。自分は腐女子なのでおもいきりBL変換しながら見てたのだが(ごめんなさい)二人とも本当に魅力的だし同僚も魅力的。
あと眼鏡フェチとして伊達メガネに対する言及や考察があったの最高でした。「世界とのズレを埋め合わせる為」まさにそう!!!そうなの!!!
伊吹が眼鏡してるのは本当にただカッコいいと思ってるファッションか野生のバカをちょっとマシなバカに見せるためだと思うけど。
キャラがよすぎてメロンパン号にさえ愛着湧く。

貸し倉庫の話にでてたコスプレイヤー弁護士の十三とか、一話限りのゲストなのが本当惜しい。インパクトありすぎて絶対終盤で再登場すると思ってたのに……共闘しないのか……もし第二シーズンあるなら関わってくれるかな?

このドラマで好きなのは、伊吹たちが傍観者ではなく、当事者として関わっていこうとする姿勢。
家出少女二人組に対して志摩が言った「君たちに何かあれば俺が悲しい」。「君たちに何かあれば悲しむ人がいる」なんて他力本願責任転嫁せず、他は知ったこっちゃないけど、君たちに何かあれば目の前の自分が悲しいとハッキリ断言する。すごい大人だな、と思った。子供への責任の取り方が。

実際誰も悲しんでくれる人がいないから家出するしかない子供がいるわけで、「~~な人がいる」は、その子たちを絶望に追い込む言葉でしかない。

あと4話や6話の見終わった後の気持ちが大好きです。小説なら読後感か……。

理不尽に死んだ人をただ可哀想なだけで終わらせず、救済とか希望とかいえそうな着地点を付与する。
最終回で久住が言ってた「俺はお前たちの物語にならない」にも集約されるけど、客観的にどんな可哀想な結末迎えた人だろうと、決して私たちに同情される為だけに生きてた訳じゃないし、その人なりの譲れないものを貫いて行動した結果であって、それに名前を与えるなら偽善じゃなくて希望がいい。

誰かの絶望は誰かの希望になる。
施しは余裕がある人間の特権かもしれないけど、たとえどん底だって誰かを救うことで救われる人間がいる。彼女は少しでも自分を好きになって逝きたかったんだろうし、自分にも救えるものがあるって現実が支えだったんだろうな。

「アンナチュラル」のシリアルキラーの話にも通じるけど、本作でもラスボスの不幸な生い立ちを(視聴者が同情できるようには)掘り下げていない。
久住が何を経てああなってしまったのかは全く語られないから、視聴者が好き勝手に想像して補完するしかない。

わかろうともしない傲慢とわかりたがる傲慢どちらがマシか。

「俺はお前たちの物語にならない」と拒んだ久住の気持ちには少し共感する。
酷い事件や惨い事が起きると私たちは「何故?」「どうして?」と理由を知りたがる。シリアルキラーには不幸な生い立ちや歪んだ幼少期がなければならない、虐待やいじめで根性がひん曲がってなければいけない、そうでなければ劇的なカタルシスが得られないから。

けれど久住はそれを拒否する。

最終回でいきなり語られた桔梗と陣馬が2011年の震災で組んだ話や、「なにもかも押し流された」発言から推察すると、久住は震災の生存者ではと思わせる。関西弁がフェイクじゃないとして、年齢から逆算するなら阪神大震災経験者か、海外で体験したのかもしれない。

多分それは語られないし、語ることでもないんだろうな。

惜しいところもちょくちょくあって、最終話で伊吹と志摩を庇ってSNSでそれまでの関係者たちが声を上げるんだけど、あそこはもっと尺とって描いてほしかった。たった数秒……。

最終話の夢オチは騙された!でもよくよく考えたら辻褄合ってる。薬でバッドトリップしてたから最悪の夢を見たのか。

恋愛色強すぎる話苦手だからいいんだけど、志摩と桔梗、伊吹とはむちゃんの結末が投げっぱなしだったのが気になる。はむちゃんに至っては最終回前半でフェードアウトしちゃったし……あれじゃあ桔梗×はむちゃん、志摩×伊吹エンドだぞ……いいのか。いいか。

第二シーズンもしあればそっちもちゃんと描いてほしい。個人的には伊吹がはむちゃんと結ばれてパパになるとこも見てみたい。はむちゃんは守ってあげたいきゅるん系ヒロインと見せかけて意外に芯が強い。
エトリの車から逃げ出したのも幼稚園の子供たち巻き込まない為だろうし、「力を持たない存在の為に尽くす」スタンスがブレてないんだよな。

個人的には陣馬と九ちゃんのエピソードをもっと見たかった。伊吹と志摩はメインでずっぱりでガッツリ掘り下げられてたけど、そのぶん二人が割を食ってたかな……陣馬の妻子の対応は賛否両論だけど、自分なら気持ちわかる。毎回毎回家族より犯人逮捕優先されてたらそりゃ荒むよ。というか陣馬さん入院中、娘と息子は付き添ってたけど奥さんいなかったのが気になる……。

九ちゃんの「フインキじゃないです、雰囲気です」とわざわざ電子辞書引くとことか感情高ぶると博多弁でるとこ大好きです。単純に顔面が綺麗すぎる。
八話ラストの伊吹の泣き顔が美しすぎる。

RECのキャラも面白くて好きだけど、つぶったーとかナウチューブとか伏せる意味あったのかな。普通にTwitterとYouTubeじゃだめなのか……権利関係厳しいのか……?

10話ラストの♯MIU404のツイートの中に「メロンパン車の男二人発見!イケメン!」があって、存在しない記憶の投稿に「自分かよ??」って吹き出した。
気付かれるか気付かれないかギリギリの小ネタの入れ方本当に上手い。
まさみ

まさみ