ねまる

アンナチュラルのねまるのレビュー・感想・評価

アンナチュラル(2018年製作のドラマ)
4.9
あー、クソッ!!
完璧だ。

1話完結のストーリー、
設定、
キャラクター、
キャスティング、
扱うテーマ、
脚本、
演出…

どこをとっても非の打ち所がないんだよ。

久しぶりに日本のドラマにハマってしまった…
あー、クソッ!!!

こんな感じのテンションでうまくかけないから思ったこと羅列で許して。
観てない人は是非観て。



不条理な死をなくす、未来のための学問。
それが法医学。

自分自身が不条理な死に巻き込まれそうになった三澄ミコト。
愛する人を不条理な死で失った中堂系。

この二人がメイン。

そして、東海林、六郎、神倉所長がUDIラボに和やかさをもたらす。

社会問題に深く切り込んだストーリーは
不条理な死を近くで味わった、ミコトと中堂だからこそのメッセージが詰まっている。

女性差別、いじめ、長時間労働など
1つ1つの問題が現実社会とリンクしているからこそ、
存在しない法医学グループが事件を解決するという非現実的なストーリーに、
私たちは目を見張るんだと思う。

そこから目を背けちゃいけないと思う気持ちや、
ミコトや中堂がどう答えを出すんだろうという気持ちから、
好奇心をかられるんだ。

キャストに関していうと、
石原さとみは、役によっては苦手な時もあるんだけど、この役は良い。
もうバカっぽい役やめたほうがいいよ笑笑
そして、とにかく可愛い。

窪田くんが2番手ではないところに最初は驚いた!
使い方勿体無いんじゃない?と思うところも正直ある。
一つ一つの演技力の高さは流石だけど。
彼はもっとできる子なので、もしシーズン2があるならば、彼の中の死への想いをもっと深く描いて欲しいとこです。
(追記:8話ラストの笑い泣きの演技だけで素晴らしい。あれだけで泣ける。おかえり、ただいま)

んで、ARATA。井浦新。
昔から大好きな俳優さんだけど、多くの人に支持される作品で目立つことはあまりなくって、
主演とかも務めるわりに知る人ぞ知る存在のように思ってた。一般的には。

だから、
フレンドパークとか番宣番組でも、窪田くんより前でやっていることにも驚いたし、
正直今頃ブームが起きていることにびっくりした。

それだけ、中堂系という役がハマり役。
キャスティングしたひと褒め称えるね。

序盤はただの口の悪い解剖医だったのが、
回を追うごとに役の深みを増していって、
作品の中で果たす役割も増えていって、
最後はストーリーの中心になっていた。

それに伴い、役柄の幅を広げていった井浦新もすごいし、
必ずこのキャラクターはみんなの注目の的になると予測して、こういうストーリー展開にしていった脚本もすごい。

悪態をついたり、
何考えてるのか分からなかったり、
それだけのキャラクターならいる。
でも、そこに潜む儚さの表現が、井浦新だなーって思ったの。

罪を犯しそうな危うさという意味ではなく
残された温かい心が今にも消え去ってしまいそうな儚さ。

放っておけ、と口では言うし、思ってもいるけど、
周りがそれを放っておけない。

善と悪の狭間で揺れる、とはまた違う。
なんだろう。
儚いんだよ、井浦新は。

復讐に燃える中堂さんではなく、
狂気と優しさを併せ持ったキャラになったのはこの人だからだろうなって。

見始めた時と、見終わった時で、こんなに印象が変わっている役もそうないのでは?

9話、唯一"Lemon"が最後以外に使われたシーン。
呼吸困難になるほど泣いた。

何気なく聞いていた"Lemon"がぴったりとハマっていて、この歌が描いていたのはこの二人のことだったのかもしれないね。

口の悪さは変わっていない。
でも表情には優しさや可愛さがある。

儚く消え入りそうなものの正体は、
中堂さんのこういう部分だったんじゃないか。

「死んでも綺麗な花になれたら幸せだと思わない?」
「行きているうちに幸せになれないものか?」
「幸せにしてくれる?逆プロポーズ」
笑う二人の映像と交互に挿入される、解剖シーン。

早いうちから恋人の解剖をしたという事実は明らかにされていたが、
回想シーンが加わることで、
中堂さんが抱えていた想いがなだれ込み、
「あとはオレがやる」
と言ったあと、死体の頬に触れ、泣き崩れる姿に、
感情移入しないものはいないだろう。

口悪い嫌な奴から、
殺人犯かもしれない疑いに変わり、
復讐鬼になる可能性を示唆した上での
恋人を愛した男となる。

東海林が疑われる話とか、
久部くんのお父さんとの話とか、
1話で終わらせる話にせず、
全編を通して、中堂系という人物とこの事件を描いたことに感動だよね。

でもまだ彼について分かったことは、
恋人を失ったことや
元々大学の解剖室にいたこと
生活っ気のない部屋に暮らしていることくらい。

彼がなぜ解剖医になったのか?
家族はいるのか?
なにが彼をあの正確にさせたのか?
さらに深く描く余地がある。

永遠に答えの出ない問い、の一つの答えを見つけた彼はこの先なにを目的に解剖をするのか?
「生きなさい」と言われた彼はどんな生を過ごすのか?

解決したことで、彼の優しい表現は戻るのか?
あの過去は変わらず、今のままなのか。

完結した話を無理に続きを求めるのはいいとは思えないけど、
私は彼らの続きを描いて欲しいと思う。

社会で問題はあり続けるし、
不条理な死は簡単に消えるものじゃない。

負けないで、死と戦い続ける彼らの姿を
私はまだ見ていたいのだ。


あー、いつか脚本家になりたいな。
ねまる

ねまる