このレビューはネタバレを含みます
引き込まれた。
役者が素晴らしかった。
昨年12月に赤木さんの奥さんである雅子さんが起こした訴訟が急に終わった。
被告である国が急に請求を認めたから。
雅子さんの知りたかったことがわからないままだ。
そうした状況まできていて、このドラマ配信が始まった。
このドラマは、森友学園問題をモチーフにしたドラマ。
一度映画化もされているが、そちらは観てないし、望月衣塑子さんの『新聞記者』も未読の状態でこのドラマを観る。
取材はかなりしてたらしいけど、ノンフィクション寄りのフィクションとして観るのかな?
改ざん事件に関わるシーンは、ほとんど青白く暗いシーン。
吉岡秀隆さん演ずる鈴木さんの追い詰められていく過程が本当に辛い。自分が失われていき、表情がなくなる。
綾野剛さん演ずる村上さんも。背を丸め、前を向かなくなる。
どちらも、夕食シーンが共通で、箸が止まっている。
鈴木さんのことがあるから、村上さんまでも死んでしまわないかと冷や冷やする。
自分の信念や理想を曲げられ、汚されていくと、こんなふうになってしまう。真面目な人ほど。
辛いだろうなと、そういうのがすごく伝わってくる演技だった。
大きなものからの圧力。
改ざんについては、ちょこちょこ変えたり削除してたら辻褄合わないから、1ページぐらいまるごと消したり、もうどうしようもないぐらいになってしまう。
これを見た時、小説の『1984年』(ジョージ・オーウェル)を思い出す。この小説では、監視社会で、改ざんする専用部署があり、不都合な歴史は過去に遡ってどんどん改ざんしなければならない極端なストーリーだったが…何が真実なのかわからなくなる。
鈴木さんが改ざん過程を記録していたが、きちんもしてる人、真面目な人ほどすると思う。いけないことをしているとわかっているので、元に戻せるようにもしておくのである。また、何らかの問題が出た時に振り返られるようにしたいし、自分が巻き込まれたという証拠になる。
しかしながら、耐えられなくなるのもあると思う。
この証拠を出すにはかなりの勇気もいるだろう。
それに耐えられない場合もある。
家族や自分の安全が脅かされたりしたら、たまったもんじゃない。
とにかく、こんな汚れ仕事を発生させないでほしいという話。自分の責任持ってやってねって話。
しかし、大きな組織ではそれだけでは動けないものがあるのだろう。守るところが違うのだ。
一度汚れると、それがまた脅しの元になり、汚れ仕事は繰り返されてもう前の自分に戻れない…
亮君(横浜流星さん)が、新聞配達時に泣きながら走っているシーンや村上さんがキッチンで奥さんからお弁当屋さんやろうよというシーンは切なかったな、泣いてしまう。
悪物側では、ユースケ・サンタマリアさんの悪者っぷりがいい。冷ややかで憎たらしい表情。
今回はかなりサイコな嫌な役だったけど、どんな役でもできる人で間違いないなぁ。
赤木雅子さんのもう一つ佐川氏への訴訟はどうなっていくのか。