イベリー子豚

渇水のイベリー子豚のレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
4.2
「『お金がない!』『天気の子』
『万引き家族』経由」
「前橋ノワール版『となりのトトロ』」
「もしくは」
「殺人ミステリーなしの」
「『護られなかった者たちへ』」
「主人公のキャラクターが【ポン・ジュノ】」
「向井秀徳サウンドと乾燥が伝わるザラザラフィルム」
「2023年の【尾野真千子】はじめ」
「【宮世琉弥】くんがゲス」
「【まーごめ】を探せ」
「《本日の停水予定、13件です》」
「《太陽も空気も水も……全部、タダで良くないすか??》」
「《この仕事してて、段々、自分が変わってっちゃう気がして……。岩切さんも、そうじゃないんすか?》」
「《……でアイス買って……ついでに料金もお前が払ってやんのか?》」
「《電気なんてなくても平気だね》」
「《アンタも水の匂いがする……》」
「《めっちゃ地味なテロだったけどな笑》」
「オマケはないけど季節も合ってるし
後味も夏だし……あれ?評価低すぎない??」





確かに
「めっちゃ韓国映画に寄せすぎ」てて
ややキャラクターがステレオタイプではあります。


別に
「主人公の薄暗いバックボーン」もいらなかったし
「姉妹の母親の秘密のお仕事」も
【門脇麦】ちゃんには荷が重い。
(恋愛体質クソ男ホイホイ顔じゃないし
なぜシンプル水商売にしなかったのか?)


他にもクセの強い滞納者たちや 
リエ・シバターの濃ゆいアクも現実味がありません。


でも……ね
どんな仕事でも起こりうる
「習慣化による麻痺」
「規則最優先の思考停止」を
水道の停栓(水の流れ)になぞらえる辺り……
テクニシャンじゃないですか。


そして大前提として「渇き」。

「親からの愛情」「社会からの優しさ」
「煮え切らない恋人の意志」
「すれ違う夫婦」

フィルムの画質や丁寧なカット割りで
スクリーン越しの伝わり方がダイレクトじゃないですか。


喉が乾いて、心がひび割れる。


そして姉妹がとても良い。

特にお姉ちゃん。
【のん】氏と【南沙良】ちゃんのハイブリッド。

目線で語る。空気で演じる。

ナチュラルで無理してなくて
イベ子は真実を感じます。


お菓子を投げ捨てるシーン……
あたしゃ胸が痛くなるよ……。


ただ
クライマックスの「ブチギレ主人公」は
やっぱり賛否が分かれそう。


脈絡ないし
中途半端な【ソン・ガンホ】じゃ
何の解決にもなりはしない。


せめて
あそこに至るまでの
主人公の内面や感情の蓄積を
もっと劇的にしてもらえたら……。

そもそも
もう少し共感や親しみのもてるエピソードを
用意しておいてもらえたら……。


むしろ
爽快で突き抜けた名場面になったかもしれませんね。


さてさて
アレンジ素麺やリュウジの節約レシピ等、
初夏のごちそうには
ご縁がない作品でしたが
帰り道に缶ビールを買いたくなるような
嫌いじゃない一本です。