Sachika

内なる檻のSachikaのレビュー・感想・評価

内なる檻(2021年製作の映画)
4.0
閉鎖寸前の刑務所で、各所の刑務所へ移送されることが決まっていた受刑者たち。
刑務官たちも安堵していたのも束の間、移送延期により残る事を余儀なくされる。
長期化していく劣悪な環境に苛立つ受刑者に、監視する刑務官との間に緊張が走る。
停電が起こった僅かな時間が まるでマジックアワーの様で、その幻の様な瞬間と産まれた変化に、シンパシーとも違う‟共鳴”を感じた。

サークル状に連なった牢獄と 稀有な状況の中で、ベテラン刑務官は何を思うのか。
暴力的な悲劇が起こるのかと思いきや、何も起こらない。
しかし相反する立場にも関わらず、芽生えていく言いようのない感情や、心理戦のような台詞。
それを援護する音楽・効果音・照明が素晴らしくて、とても引き込まれた。
静かな作品なのに、ずっとぞくぞくするような緊張感が漂っていて、かと思えば優しさも感じられる。
春になる直前の冬みたいな、刹那の作品だと思った。
Sachika

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