えいがうるふ

RRRのえいがうるふのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
5.0
少なくともバーフバリ並みの熱量であることは覚悟はして行ったものの、その予想を軽く上回る圧倒的全部のせ展開ぶりにずっとのけぞりっぱなし。ああ、映画鑑賞ってこんな観るだけで全身運動並みにカロリーを消費しそうな疲れるエンタメだったっけ・・? 
だがその疲労感すら圧倒的な高揚感と興奮で強引に昇華させるまさにジェットコースターのような作品ゆえ、一度乗ってしまったら最後、3時間ノンストップでゴールまで走り抜けるしかない。
そこそこ複雑な物語なので一瞬たりとも目が離せず、途中でトイレに行くなど言語道断。そしてここは日本。本来なら休憩となるインターミッション表示が画面に現れやっと一息つけるかと思いきや、何事もなかったように即続きが上映されるという無慈悲な進行!念のため直前にもトイレ行っといて良かった・・と心底思った。

力技で押しまくる大迫力の群衆戦闘シーン。いつも思うがインド映画って撮影中にモブの何人かは事故で亡くなっているのでは(汗 ・・ってぐらい、圧倒的な数の暴力。
そしてその中心で展開される主人公二人の熱すぎる闘い。そもそもの出会いシーンからして豪快すぎるその挙動はこっちが内心「そうはならんやろ!」と何度呟こうがお構いなく華麗にそれを凌駕していき、数々のツッコミどころもどこ吹く風の不死身の二人。
この単純かつやりすぎな「まさかの光景」が目の前に次々と繰り広げられていく快感にこっちの感覚もだんだん怪しくなり、しまいにはずっと笑ってるというハイ状態に。終盤のラーマの流鏑馬姿なんて、劇画みたいに絵面がキマリすぎてて爆笑した。

もちろん、歌とダンスの成分もこれ以上はないほど濃厚。話題のナートウダンスはあまりのスピードにさすがに早送りしているのではと思ったが、後で調べたらまさにこの爆速ステップがウリの振り付けとのこと。インドの俳優さんの身体能力の凄まじさを思い知る。
とにかくどの歌もダンスもパワフルかつモリモリのゴリゴリにエモーショナル。何も考えずその世界に没入すれば、たかが映画を観るだけでヤバいくらいの多幸感と高揚感を享受できよう。

だからこそ、ふと我に返ると気になるのがあまりにも一方的に残酷非道で鬼畜な支配者として容赦なく裁かれるイギリス側の描かれ方と、その帰結としてナショナリズムを扇動するかのように歴代の独立運動の英雄たちを称えまくる熱すぎるエンディング。
どう考えてもイギリス人が心穏やかに見られる内容ではないだろうが、意外にもイギリス国内での興行成績や欧米メディアの反応も悪くないようだ。

個人的には、英国による植民地支配の悲劇を徹底的にカリカチュアライズしエンターテイメントとして昇華させるという割り切りがなければここまで振り切ったものを作り上げることは出来ないだろうと思うと、これはこれでありだと思った。
むしろ、ジェニーの存在やイギリス人と共に踊るダンスシーンの異様に力のこもった演出などから、ここまで極端に差別と圧政への抵抗と打倒を叫びながらも作品全体としては「イギリス人=悪」ではなく、あくまでも「罪を憎み人を憎まず」であることを明確に描いていたことに感心すらした。

ちなみに、歴史ものの中国映画では日本兵がとてつもなく残酷な悪魔のように描かれているのがお約束だが、私は日本人としてそれを観ていて心が痛むことはあっても、怒りが湧くことはない。
現地での娯楽作品としての誇張も含め、今もそれだけの感情を残してしまうほどのことを過去にしてきたのだろうという負の歴史を、その子孫である自分たちがこういう形で思い知らされているのだと、粛々と受け入れるだけだ。
映画がきっかけで改めて史実を確認し学ぶこともある。知らないよりよほどいい。

ともあれ今作はIMAXで観ることが出来て本当に良かった。この視聴環境を楽しむエンターテイメントとしては、5点満点どころか10点差し上げたいぐらい、映像のスケール感は申し分なかった。これから観る方にも、可能ならば是非IMAXシアターで鑑賞することを心からお薦めしたい。